リッコの法則とは? わかりやすく解説

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リッコの法則

(リコーの法則 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/25 20:58 UTC 版)

リッコの法則[1]: Ricco's lawリコーの法則[2]リッコーの法則[3]とも)とは、視覚系においての刺激がどのように知覚されるかに関する、精神物理学における法則の一つである[3][4]。刺激光の強さと、刺激光を受容する網膜上の面積が、一定であると定義される[3][4]。この法則が有効となる面積は、中心窩では小さく、網膜の周辺領域では大きくなる[5]

基本事項

視覚に関して、光の刺激が知覚される最低光量子数、すなわち光覚閾値においては、ある大きさの刺激光についてその大きさだけ光を足し合わせる空間加重(空間的寄せ集め/空間的足し合わせ)現象が発生する[6][5]。この空間荷重現象において、刺激光の大きさと刺激光の強さの間に成立する関係のうち、イタリア天文学者アンニーバレ・リッコが初めて定式化した部分を、その名前に因んでリッコの法則と呼ぶ[7][4][8]

リッコが示した関係は、刺激光の大きさがある程度より小さい場合、光覚閾値に達するための刺激光の大きさと刺激光の強さの積が一定である、というもので、リッコの法則が成り立つ範囲では、例えば知覚できる光の刺激は光の強さが2倍になれば、光源の大きさは半分で済む、という関係である[6][9]。これを定式化すると、刺激光の輝度L、刺激光の面積を Ak定数とした場合に、

空間加重曲線の概念図。曲線の左部、傾き-1の線型部分が、リッコの法則を示す。

臨界面積を超えると、リッコの法則は成り立たなくなる[10][11]。リッコの法則は、刺激光の面積内の光が全て足し合わされる、つまり光覚の空間加重が完全である状態を表し、臨界面積を超えた場合は、光覚に寄与せず失われる光が出てくる、光覚の空間加重が不完全な状態となる[6][14][2]。この場合の刺激光の輝度と面積の関係を定式化したものとしては、パイパーの法則、ピエロンの法則がある[11]。それらも含めて、より包括的に光覚の空間加重を定式化したものが、

で、nは0以上1以下の定数をとり、n=1の場合がリッコの法則に相当する[9][10]

一般化された空間加重の下では、臨界面積についても異なる定義が提案され、リッコの法則が成り立つn=1の部分と、もう一方の直線部分(例えばn=0の空間加重が起こらない場合)、2つの漸近線交点英語版での面積をもって臨界面積とすることになっている[12]

影響

リッコの法則及び臨界面積は、眼視による天文学において影響がある[12]。臨界面積よりも小さい天体は、点光源とそうでない光源の区別が付かないので、暗い恒星星雲状の天体と見間違えることがしばしば起こった[12]。このことは例えば、ニュージェネラルカタログにおいて多くの収録天体が実は星雲・星団ではなく恒星だった、という事実にも現れている[12]

出典

  1. ^ 相場, 覚「視覚」 『心理学事典』平凡社東京都目黒区、1981年11月20日、280-283頁。ISBN 4-582-10602-1 
  2. ^ a b c 池田光男「生理光学 (5)」『光学』第1巻第5号、287-294頁、1972年10月。doi:10.11438/kogaku1972.1.287 
  3. ^ a b c 白鳥, 敬 『大人の「科学」と「学習」 定理と法則101』学習研究社、東京都品川区、2009年3月3日、214-215頁。 ISBN 978-4-05-404050-2 
  4. ^ a b c Colman, Andrew M. (2008), “Ricco's law”, A Dictionary of Psychology, Oxford University Press, ISBN 9780199534067, https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/oi/authority.20110803100419612 
  5. ^ a b c d e 近江, 政雄 著「空間的足し合わせ(空間加重)」、日本視覚学会 編 『視覚情報処理ハンドブック』朝倉書店、2017年4月25日、192-193頁。 ISBN 978-4-254-10289-5 
  6. ^ a b c 中野, 靖久 著「絶対閾値」、日本視覚学会 編 『視覚情報処理ハンドブック』朝倉書店、2017年4月25日、97-103頁。 ISBN 978-4-254-10289-5 
  7. ^ Riccò, A. (1877), “Relazione fra il minimo angolo visuale e l'intensità luminosa”, Memorie della Societa Degli Spettroscopisti Italiani 6: B29-B58, Bibcode1877MmSSI...6B..29R 
  8. ^ Khuu, Sieu K.; Kalloniatis, Michael (2015-01), “Spatial summation across the central visual field: Implications for visual field testing”, Journal of Vision 15 (1): 6, doi:10.1167/15.1.6 
  9. ^ a b c d e f Kalloniatis, Michael; Luu, Charles (1995), “Visual Acuity”, in Kolb, Helga; Fernandez, Eduardo; Nelson, Ralph, Webvision: The Organization of the Retina and Visual System [Internet], Salt Lake City, UT: University of Utah Health Science Center, PMID 21413375, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK11509/ 
  10. ^ a b c Choi, Agnes Yiu Jeung; et al. (2016-07-06), “Determining Spatial Summation and Its Effect on Contrast Sensitivity across the Central 20 Degrees of Visual Field”, PLoS ONE 11 (7): e0158263, doi:10.1371/journal.pone.0158263 
  11. ^ a b c Je, Shindy; et al. (2018-03-01), “Spatial summation across the visual field in strabismic and anisometropic amblyopia”, Scientific Reports 8: 3858, doi:10.1038/s41598-018-21620-6 
  12. ^ a b c d e f Crumey, Andrew (2014-08), “Human contrast threshold and astronomical visibility”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 442 (3): 2600-2619, Bibcode2014MNRAS.442.2600C, doi:10.1093/mnras/stu992 
  13. ^ a b 大竹, 史郎 著「光覚の視野依存性」、日本視覚学会 編 『視覚情報処理ハンドブック』朝倉書店、2017年4月25日、241頁。 ISBN 978-4-254-10289-5 
  14. ^ a b c Redmond, Tony; Anderson, Roger S. (2011-03-02), “Visual Fields: Back to the Future”, Optometry in Practice 12 (1): 11-20, ISSN 1467-9051, https://www.college-optometrists.org/professional-development/college-journals/optometry-in-practice/all-oip-articles/volume-12,-issue-1/2011-03-visualfields_backtothefuture 

関連文献

  • 臼井正「続・天の川が見える怪」『天文教育』第19巻第2号、35-45頁、2007年3月。 

関連項目

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