ユーザーの多様性とアクセシビリティ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 15:22 UTC 版)
「ユーザーエクスペリエンス」の記事における「ユーザーの多様性とアクセシビリティ」の解説
よいユーザーエクスペリエンスを達成するための設計プロセスにおいては、ペルソナ手法のように具体的な想定ユーザー像を設定することが多い。なぜなら、ユーザーエクスペリエンスに影響する要素に「ユーザー特性」があるため、ユーザー像を具体的に十分理解することによって主観的利用品質をよりよく測定・評価でき、ひいては、よりよいユーザーエクスペリエンスを達成しうると考えられるからである。 しかし、そのような「具体的なユーザーを想定した設計」が、一方では「誰でも利用できる設計」の実現から設計者の意識を遠ざけてしまっているのではないかと指摘する専門家もいる。つまり、よいユーザーエクスペリエンスを達成しようと「具体的な想定ユーザー像」を重視する設計アプローチが行き過ぎた結果、「あらゆるユーザーが利用できること」という意味のアクセシビリティは軽視されているのではないかという指摘である。 しばしば「想定外のユーザー」として無視・軽視されやすいのが、いわゆる障害者である。産業界では(しばしば無自覚に・暗黙的に)市場の多数派である健常者を想定して製品の設計を「最適化」しがちだが、その結果として、ある種の障害者にとっては「そもそも利用できない」ような設計になってしまう場合があると指摘される。「想定ユーザー」の経験を重視するあまり、「想定外ユーザー」の経験が無視されているということである。 アメリカ合衆国では、2001年6月25日に施行されたリハビリテーション法第508条によって、連邦政府機関の電子技術や情報技術を身体障害を持つ人でも利用できるようアクセシビリティを確保することが義務付けられている。日本でも、2016年4月1日より障害者差別解消法が施行され、障害者が不利益を被らないようにする合理的配慮が行政機関等に義務付けられている。また、日本を含む先進各国で高齢化が進むなか、視力、聴力、その他の身体能力や認知能力などにおいて、いわゆる「成人健常者」の範疇から逸脱するユーザーの比率は高まっていくことになる。このような社会の要請に応えるため、ユーザーエクスペリエンスだけでなくアクセシビリティにも配慮した設計が必要だと指摘されている
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