メンター4 (USA-202)の特異的な行動について
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「メンター (人工衛星)」の記事における「メンター4 (USA-202)の特異的な行動について」の解説
メンター4は、2009年1月18日の打上げ直後は、静止軌道上、東経100°付近に位置していたが、1日に約0.8°の速度でゆっくりと西進し、アフリカ東岸上空の東経44°まで大移動するという、他のメンター衛星には見られない特異的な行動を行っていたことが、アマチュア観測者達の観測で明らかにされている。 このメンター4の特異的な行動の理由についても、2016年9月6日にザ・インターセプトに掲載された、やはりエドワード・スノーデンがリークした一連の秘密資料によって真相が明らかにされている。 これらの資料によれば、メンター4は当初、オーストラリアに設置された、米豪共同運用のスパイ衛星コントロール用の地球局施設であるパインギャップ局(Pine Gap)がコントロールを受け持っていたが、西の方向へゆっくりと斬進し、約60日後に今度はイギリスに設置された米英共同運用の同様の施設である英空軍メンウィズヒル局 (RAF Menwith Hill Station) がコントロールを引き継ぎ、情報収集業務を開始した。 メンター4はゆっくりと西進しながら、約30から45日間にわたって、中華人民共和国内のマイクロ波通信の見通し線の延長線の位置を探っていた。さらに西進して東経44°に到し、今度はアラブ首長国連邦(UAE)の通信衛星であるThuraya 2に忍び寄って、VSATシステムであるスラーヤ (Thuraya) 衛星電話システムの盗聴を行っている。この時は、イラク、シリア、レバノン、イラン、パキスタン、アフガニスタンなど、中東地域にある約5000局のVSAT子局を傍受の対象にし、その位置を特定することに成功している。メンター4は東経44°に到着後はそこを定位置にしている。メンター4の到着後、今度は本来その位置に配備されていたメンター2が、1日に0.1°程度のゆっくりした速度で西進を開始し、最終的には西経14.5°に到達してそこを定位置にし、中東、北アフリカ、ラテンアメリカの通信傍受を行っている。 このようなアクティブな移動と、他国の通信衛星に忍び寄っての盗聴行為は、別のシギント衛星シリーズであるネメシスが行っていることであり、メンター4の行動は他のメンター衛星と比べれば特異である。 メンター4による Thuraya 2 衛星の盗聴は、対テロ戦争における中東(特にイエメン)でのドローンを用いたターゲッティッド・キリングにおいて、ターゲットにされたテロ組織の幹部等の動向を通信記録などから追跡し、ターゲットが現在どの位置に居るかを特定し(GHOSTHUNTER作戦)、その情報をドローン操縦者に提供する役割を持っていた。 また、GHOSTHUNTER作戦においては、前述の英空軍メンウィズヒル局が、メンター4衛星とネメシス1(PAN)衛星を含むスパイ衛星の運用を担当し、収集された情報の分析においても、中心的な役割を果たしていた。
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