メソメリー効果
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化学におけるメソメリー効果(メソメリーこうか、英: mesomeric effect)あるいは共鳴効果は、化合物中の置換基あるいは官能基の性質である。メソメリー効果は定性的に用いられ、関連の共鳴構造に基づいて置換基の電子求引性あるいは電子供与性を説明する。頭文字からM効果と呼ばれる。置換基が電子求引性基の時にはメソメリー効果は負(−M)となり、電子供与性の時には正(+M)となる。
置換基からあるいは置換基への電子の流れは誘起効果によっても決定される。p-軌道の重なり(共鳴)の結果としてのメソメリー効果はこの誘起効果には全く影響しない。これは誘起効果が純粋に原子の電気陰性度と分子のトポロジー(どの原子がどの原子と結合しているか)に関係しているためである。
メソメリー効果やメソメリズム、メソマーの概念は、1938年にインゴールドによって同義的なライナス・ポーリングの共鳴の概念の代替として導入された[1]。この文脈における「メソメリズム」はドイツ語およびフランス語の文献で多く使われているが、英語の文献では「共鳴」という用語が支配的である。
共役系におけるメソメリズム
メソメリー効果は共役系におけるいくつの炭素原子に沿っても伝達される。これが、電荷の非局在化による分子の共鳴安定化の主な原因である。分子の実際の構造、すなわち共鳴混成体のエネルギーはどの共鳴構造のエネルギーよりも低い。実際の構造と最も安定な共鳴構造との間のエネルギー差は共鳴エネルギーあるいは共鳴安定化エネルギーと呼ばれる。
脚注
- ^ Kerber, Robert C. (2006-02-01). “If It's Resonance, What Is Resonating?”. J. Chem. Educ. 83 (2): 223. doi:10.1021/ed083p223 .
外部リンク
- IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版: (2006-) "mesomeric effect".
メソメリー効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/11 07:32 UTC 版)
詳細は「メソメリー効果」を参照 有機反応論においてカルボニル化合物などに存在すると想定された分極を生じる機構を、クリストファー・ケルク・インゴルドはメソメリー効果(M効果、mesomeric effect)と呼んだ。すなわち、カルボニルの二重結合が立ち上がり、カルボニル炭素が正にカルボニル酸素が負に分極する機構の呼称である。なお、共役カルボニル系化合物などでメソメリー効果というべきところを、有機反応論の後に発展した量子化学分野の原子価結合法の概念である「共鳴効果」と呼称することがあるが、有機反応論には「共鳴」の概念は無く正しい用語の使用方法ではない。一方インゴルドのメソメリー効果に先立って、ロビンソンは互変異性の機構に類似した電子対の移動で分極が転移する機構を示唆しており、その機構をエレクトロメトリーあるいは及ぼす効果に対してエレクトロメトリー効果(E効果)という呼称を与えている。 誘起効果はβ位、すなわち共有結合した原子で2つ以上を介した場合はほとんどその影響がなくなるのに対して、共役した二重結合系のメソメリー効果はより広い間隔があっても効果の作用を現す。メソメリー効果の例としてアニリンとp-トルイジンの塩基性の違いが挙げられる。p-位に置換したメチル基からの電子供与性を示し、それがM効果により、窒素原子上の電子密度を増やし塩基性が増大したと説明することができる。
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