誘起効果
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化学および物理学において、誘起効果(ゆうきこうか、英: Inductive effect)は、分子内の原子鎖を通じた電荷伝達の実験的に観測される効果であり[1]、結合に永久双極子を生じさせる。σ結合における誘起効果はπ 結合におけるエレクトロメリー効果に相当する。全てのハロゲンは電子求引性基、全てのアルキル基は電子供与性基である。
- ^ Richard Daley. Organic Chemistry, Part 1 of 3. Lulu.com. pp. 58–. ISBN 978-1-304-67486-9
誘起効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/26 23:44 UTC 版)
誘起効果もまた、ベント則により説明可能である。誘起効果は共有結合を介した電荷の伝達であり、ベント則は混成の違いにより誘起効果の違いを生む。下の表で示した化合物は下のものほど中心炭素に結合した原子の電気陰性度が大きくなり、またそれに従って中心原子の電子吸引性が増加する。電子求引性は置換基定数によって測られるが、置換基定数はハメット則のσの値とほぼ同じものであり、値が増加するにつれ電子求引性は増加する。 ベント則は置換基の電気陰性度が増加するにつれ、p性はより置換基側に向かい、s性はより結合の間へと向かう。s軌道はp軌道よりも原子核に近いほど電子密度が高くなるため、s性が高まるとC−R結合の電子密度は炭素側に偏る。これにより、中心炭素のR基への電子求引性がより大きくなる。したがって、置換基の電子求引性は隣接する炭素へと移動するため、誘起効果と結果が一致する。 置換基置換基定数 −0.30 0.00 1.05 1.94 2.65
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誘起効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/11 07:32 UTC 版)
詳細は「誘起効果」を参照 ルイスは分子の双極子モーメント測定結果から、ある原子の静電効果が結合を介して隣接する他の原子の静電効果に影響を及ぼすことを指摘している。例えば塩素原子が結合したα位、β位の炭素は、連結数を経るにつれて作用は減弱するものの、塩素原子に電子が引き付けられ、塩素原子が存在しない場合よりも価電子の作用が減弱した性質を示す。この様に電子親和性(言い換えるならば電気陰性度)が化学結合を介して他の原子の静電的環境に影響を及ぼす作用をロバート・ロビンソンは誘起効果(I効果、Inductive effect)と呼称した。 誘起効果が物理現象として明確に現れる例として、置換基と酸または塩基性の強度との相関が挙げられる。例えば、カルボン酸誘導体に対して電子求引性基である塩素基が置換したケースについて説明する。酢酸に対して、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸そしてトリクロロ酢酸のpKaを次に示す。 CH3COOH - pKa = 4.74 ClCH2COOH - pKa = 2.87 Cl2CHCOOH - pKa = 1.25 Cl3CCOOH - pKa = 0.77 このように、塩素の置換数が増大するにつれて強酸性となる。言い換えるとカルボン酸のOH基の酸素上の電子密度が低いほど解離が進行しやすく、この例では塩素のI効果(I−効果)により、酸素上の電子が塩素側に引き付けられ、置換した塩素基の数が多いほどI−効果が強く現れ、pKaが減少傾向を示したと説明することができる。 逆の例として酢酸にメチル基を置換した例が挙げられる。メチル基は電子供与性を示し、それがI効果(I+効果)により、カルボン酸の電子密度を増やしpKaが増大したと説明することができる。 CH3CH2COOH - pKa = 4.88 (CH3)2CHCOOH - pKa = 4.86 (CH3)3CCOOH - pKa = 5.05 CH3(CH2)2COOH - pKa = 4.82 CH3(CH2)3COOH - pKa = 4.86 このように、電子求引性の誘起効果をI−効果、電子供与性の誘起効果をI+効果と呼称することがある。また、配位結合を正負のイオン対が接合した状態とみなすことができ、配位結合を→で示すことの比喩で、I効果が存在する共有結合をの記号で表示する場合がある。
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