フレネルの引きずり係数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 02:16 UTC 版)
「フィゾーの実験」の記事における「フレネルの引きずり係数」の解説
管の中を流れる水の速度をvとする。非相対論的な(光の媒体としての)エーテル仮説によれば光速度は水の流れに沿って「引きずられる」場合は増加し、水の流れに「逆らう」場合は減少する。光の伝わる速度は全体として媒体中の光速度に水の速度を加えたものになるはずである。 すなわち、nを水の屈折率とすると静水中の光速度はc/nになる。上の議論によれば実験装置の経路を通る光速度wは、片方の経路については w + = c n + v {\displaystyle w_{+}={\frac {c}{n}}+v} となりもう片方については w − = c n − v {\displaystyle w_{-}={\frac {c}{n}}-v} となる。水の流れに逆らう方向に進む光は沿う方向に進む光に比べ遅くなっている。 2つの光線を再び合流させ生ずる干渉縞の様相は2つの光線が経路をたどるのにかかる時間差に依存する。それにより、光速度が水の速度にどのように依存するかが測れるのである。 この観測によりフィゾーは w + = c n + v ( 1 − 1 n 2 ) {\displaystyle w_{+}={\frac {c}{n}}+v\left(1-{\frac {1}{n^{2}}}\right)} という関係式を見出した。光は実際水によって引きずられている。しかし引きずりの大きさは予測されたものよりも大分小さいのである(水の屈折率n=1.33から ( 1 − 1 n 2 ) = 0.44 {\displaystyle \left(1-{\frac {1}{n^{2}}}\right)=0.44} となる)。 フィゾーの実験結果を受け、物理学者たちはフレネルの仮説が実験的には正しいことを認めざるを得なかった。フレネルの仮説はフランソワ・アラゴによる1810年に行なわれた実験(英語版)の結果を説明するため1818年に提案されたもので、静的なエーテル中を媒質が動く場合、媒質中の光は媒質の速度の「一部だけ」引きずられるとされる。この割合を表す引きずり係数fは f = ( 1 − 1 n 2 ) {\displaystyle f=\left(1-{\frac {1}{n^{2}}}\right)} である。しかしこの仮説は理論的に満足のいくものではなく、様々な問題点が指摘されていた。 1895年、ヘンドリック・ローレンツは光の分散の効果を取り入れると:15–20頁フレネルの引きずり係数には補正項 w + = c n + v ( 1 − 1 n 2 − λ n ⋅ d n d λ ) {\displaystyle w_{+}={\frac {c}{n}}+v\left(1-{\frac {1}{n^{2}}}-{\frac {\lambda }{n}}\cdot {\frac {\mathrm {d} n}{\mathrm {d} \lambda }}\right)} がつくはずだとした:15–20頁。 後にフレネルの引きずり係数は相対論的な速度の加法則から従うことが示される。 詳細は「#特殊相対論での実験結果の理解」を参照
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