フレネ・セレの公式
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フレネ・セレの公式 (ふれねせれのこうしき、英: Frenet–Serret formulas) は、3次元ユークリッド空間内 R3 内の連続で微分可能な曲線上を動く粒子の運動学的性質、あるいは、曲線自身の幾何学的性質を記述するベクトル解析の概念の一つである。
公式
この公式は、曲線に対する接線方向 (tangent)・主法線方向 (normal)・従法線方向 (binormal)を指す3つの単位ベクトルの組{T, N, B }からなるフレネ・セレ標構とその微分との間の線形関係について記述したものであり、二人のフランス人数学者ジャン・フレデリック・フルネ (Jean Frédéric Frenet, 1847) とジョゼフ・アルフレッド・セレ (Joseph Alfred Serret, 1851) によって独立に発見された。
フレネ・セレ基底を構成する単位接ベクトル T ・単位主法線ベクトル N ・単位従法線ベクトル B は次のように定義される。
フレネ・セレの公式は
- 螺旋上を動くフレネ・セレ標構。青い矢印は T、赤い矢印は N、黒い矢印は B をそれぞれ表す。
半径 r (>0)、間隔 2π h 、角速度ω(>0)の螺旋上の運動
を考える。弧長は
で与えられる。
フレネ・セレ標構は
であり、曲率・捩率は
となる。
h =0 のとき、軌道は xy 面内の半径 r の円周になり、曲率は κ=1/r 、 捩率は τ =0 となる。|h| が大きくなるにつれ、曲率はκ→0、捩率は τ →1/h となる。
応用例
ロボットマニピュレータの姿勢とその軌道を記述したり[1][2]、蛇型ロボットや多関節ロボットを連続曲線で近似して表現[3][4]する際に用いられる。
脚注
- ^ 精密工学会誌 2012, p. 605-610.
- ^ Jorge Angeles 2003, p. 363-424.
- ^ 山田浩也 & 広瀬茂男 2008.
- ^ 山田浩也 2008.
参考文献
- 小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』裳華房〈基礎数学選書17〉、1977年。
- 小林昭七『曲線と曲面の微分幾何(改訂版)』裳華房、1995年。ISBN 978-4-7853-1091-2。
- 蘭豊礼、玉井博文、三浦憲二郎、牧野洋「リニアな曲率・捩率を持つセグメントによる軌道生成」『精密工学会誌』第78巻第7号、2012年、 605-610頁。
- Jorge Angeles (2003) (PDF). Fundamentals of Robotic Mechanical Systems. Theory, Methods, Algorithms, second Edition. Mechanical Engineering Series. Springer, New York. ISBN 0-387-95368-X 2014年7月9日閲覧。 (TLFeBOOK)
- Jorge Angeles (2014). Fundamentals of Robotic Mechanical Systems. Theory, Methods, Algorithms, Fourth Edition. Mechanical Engineering Series. Springer, New York. ISBN 978-3-319-01850-8(first edition published in 1997)
- 山田浩也、広瀬茂男「索状能動体の研究―多関節体幹による連続曲線近似法―」『日本ロボット学会誌』第26巻第1号、2008年、 110-120頁。
- 山田浩也『索状能動体の3次元運動解析に基づく機構と制御の研究』東京工業大学〈博士論文(甲第7192号)〉、2008年3月26日。
関連項目
フレネ・セレの公式
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「フレネ・セレの公式」の記事における「フレネ・セレの公式」の解説
フレネ・セレ標構に対して、動標構の微分の関係式(0)を適用すると、フレネ・セレ標構の定義(2)からω2=0となる。ω3=κ,ω1=τと置き換えるとフレネ・セレの公式: d d s ( T N B ) = ( 0 κ 0 − κ 0 τ 0 − τ 0 ) ( T N B ) {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} s}}{\begin{pmatrix}{\boldsymbol {T}}\\{\boldsymbol {N}}\\{\boldsymbol {B}}\end{pmatrix}}={\begin{pmatrix}0&\kappa &0\\-\kappa &0&\tau \\0&-\tau &0\\\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}{\boldsymbol {T}}\\{\boldsymbol {N}}\\{\boldsymbol {B}}\end{pmatrix}}} が得られる。 κ,τはそれぞれ曲線の曲率、捩率を表し、公式より、 κ = d T d s ⋅ N = ‖ r ′ ( t ) × r ″ ( t ) ‖ ‖ r ′ ( t ) ‖ 3 τ = − d B d s ⋅ N = r ′ ( t ) ⋅ ( r ″ ( t ) × r ‴ ( t ) ) ‖ r ′ ( t ) × r ″ ( t ) ‖ 2 {\displaystyle {\begin{aligned}\kappa &={\mathrm {d} {\boldsymbol {T}} \over \mathrm {d} s}\cdot {\boldsymbol {N}}\\&={\left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\times {\boldsymbol {r}}''(t)\right\| \over \left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\right\|^{3}}\\\tau &=-{\mathrm {d} {\boldsymbol {B}} \over \mathrm {d} s}\cdot {\boldsymbol {N}}\\&={{\boldsymbol {r}}'(t)\cdot ({\boldsymbol {r}}''(t)\times {\boldsymbol {r}}'''(t)) \over \left\|{\boldsymbol {r}}'(t)\times {\boldsymbol {r}}''(t)\right\|^{2}}\end{aligned}}} と与えられる。定義により κ >0 である。
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