特殊相対論での実験結果の理解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 02:16 UTC 版)
「フィゾーの実験」の記事における「特殊相対論での実験結果の理解」の解説
詳細は「特殊相対性理論」を参照 アインシュタインは論文『運動物体の電気力学について』で、ローレンツ変換がたった二つの簡単な原理(相対性原理と光速度不変性)の論理的な帰結として理解できることを示した。さらにアインシュタインは特殊相対論の立場では静的なエーテルという概念は全く必要のないものであり、ローレンツ変換は時間と空間そのものの性質であることを見抜いていた。 アインシュタインが相対論に至った考察において、運動する磁石と導体(英語版)・エーテルの風を否定する実験(英語版)・光行差とならんでフィゾーの実験は鍵となる実験結果であった。ロバート・シャンクランド(英語版)はアインシュタインが会話のなかでフィゾーの実験の重要性を強調したことを記録にのこしている。 He continued to say the experimental results which had influenced him most were the observations of stellar aberration and Fizeau's measurements on the speed of light in moving water. "They were enough," he said.(訳:アインシュタインは続いて彼が最も影響を受けた実験結果は光行差とフィゾーによる運動する水の中の光速度の測定だったとした。「それで十分だった」とアインシュタインは言った。) マックス・フォン・ラウエは1907年にフレネルの引きずり係数は相対論的な速度の加法則(英語版)の自然な帰結として簡明に理解できることを見出した。すなわち、 静止した水の中を伝わる光の速度はc/nである。 相対論的な速度の加法則(英語版)によれば実験室中を水が速度vで流れる場合、実験室で観測される光の速度は(光と水が同じ方向だとして) V l a b = c n + v 1 + c n v c 2 = c n + v 1 + v c n {\displaystyle V_{\mathrm {lab} }={\frac {{\frac {c}{n}}+v}{1+{\frac {{\frac {c}{n}}v}{c^{2}}}}}={\frac {{\frac {c}{n}}+v}{1+{\frac {v}{cn}}}}} で与えられる。従って速度差は、(vがcに比べ小さいとしてv/cの高次項を無視して)、 V l a b − c n = c n + v 1 + v c n − c n = c n + v − c n ( 1 + v c n ) 1 + v c n = v ( 1 − 1 n 2 ) 1 + v c n ≈ v ( 1 − 1 n 2 ) {\displaystyle V_{\mathrm {lab} }-{\frac {c}{n}}={\frac {{\frac {c}{n}}+v}{1+{\frac {v}{cn}}}}-{\frac {c}{n}}={\frac {{\frac {c}{n}}+v-{\frac {c}{n}}(1+{\frac {v}{cn}})}{1+{\frac {v}{cn}}}}={\frac {v\left(1-{\frac {1}{n^{2}}}\right)}{1+{\frac {v}{cn}}}}\approx v\left(1-{\frac {1}{n^{2}}}\right)} となる。この式が正しいのは、v/c ≪ 1が満たされる場合だが、フィゾーの実験条件は実際にこの条件を満足している。そして式は正しくフィゾーの実験結果を再現しているのである。 このようにフィゾーの実験はアインシュタインの速度の加法則(の速度の方向が同じ場合)を裏付ける結果になっている。
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