フォルト・ライン戦争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/26 15:39 UTC 版)
文明が相互に対立しあう状況は深刻化しつつあり、微視的にはイスラム文明、ヒンドゥー文明、アフリカ文明、西欧文明、東方正教文明がその当事者に挙げられるが、巨視的には西欧文明と非西欧文明の対立として理解できる。なぜなら政治的独立を勝ち取った非西欧文明は西欧文明の支配を抜け出そうとしており、西欧文明との均衡を求めようとする。このような関係が敵対的なものになるにはいくつかの側面があるが、イスラム文明や中華文明は挑戦する存在として西欧文明と緊張関係にあり、場合によっては敵対関係になりうる主要文明である。ラテンアメリカ文明やアフリカ文明は西欧文明に対して劣勢であり、また西欧文明に依存的な態勢であるために対立することは考えにくい。一方でロシア文明、インド文明、日本文明は中間的な主要文明であり、状況によっては協力的にもなり、対立的にもなると考えられる。つまり最も衝突の危険が高い主要文明はイスラム文明と中華文明である。 文明の衝突とは2つの視点から見ることができる。一つは地域において文明のフォルト・ラインにおいて紛争が勃発する形態である。これは国境地帯や国内の異民族集団によって発生する。このような文明の衝突は民族浄化などの事件を引き起こす事件であり、バルカン半島における民族問題はその典型的な事例である。もう一つは世界において主要文明の中核国と他の文明の列強との間で紛争が勃発する形態であり、これらの争点は古典的な国際政治学の問題として研究されている。それは世界的な政治的影響力、相対的な軍事力、繁栄や経済力、人間、価値観や文化、領土などがそれである。 フォルト・ライン紛争とは文明圏の間で生じる紛争であり、フォルト・ライン戦争はこれが暴力化したものを指す。戦争は必ず終結するものと考えられているが、フォルト・ライン戦争は必ずしも将来終結するとは限らない。なぜならフォルト・ライン戦争とは文明間の異質性に根ざしたフォルト・ラインによるものであり、地理的な近接性、異なる社会制度や宗教、歴史的記憶によって半永久的に引き起こされうるものである。したがってフォルト・ライン戦争が終結するには二つの政治的展開が考えられる。一つは戦争当事者が暴力の有効性を否定して穏健派が意思決定の主導権を握り、相手との和平に合意しなくてはならない。また戦闘停止の利害を共有し、また第三者の調停などの条件として考えられる。
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