ビアーズ基準の開発と改定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/06 17:13 UTC 版)
「ビアーズ基準」の記事における「ビアーズ基準の開発と改定」の解説
1980年代、ハーバード大学の特別研究員であった医師のマーク・ビアーズは、ボストン周辺の高齢者施設入所者における、抗精神病薬やジフェンヒドラミン、鎮静催眠剤といった向精神薬の使用を調査し、そうした薬は制限なく用いられ、一部では医療職員による綿密な監督がなく、これらの薬による利益が得られておらず、しばしば混乱や身体の震戦といった副作用の原因になっていた。 介護施設における薬剤使用の適切性を判断する基準がない時代において、ビアーズは専門家のコンセンサスによって薬を選考するという、独創的な手法によって、不適切な薬剤処方を明確に定義する基準を開発していった。当初は、論文掲載にあたって論文を査読する人に、文献を網羅し、専門家による可否を数値化し平均を算出し、意見を取り込むという薬剤選定の方法論を理解してもらうのに苦労したという(方法論は後に記す)。ボストンでの研究を下地にして、1991年に公開されたビアーズ基準は、介護施設入所者を対象としたものであり、鎮静剤、筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬や抗うつ薬を含み、有害となる可能性を説明している。 後に更新された1997年版は、65歳以上の高齢者すべてに対象を拡大した。2003年版では、学術論文の知見を採用し、薬剤の相対的な重篤度を割り当てた。このようにして、ビアーズ基準の高齢者において潜在的に不適切な薬は拡充されてきた。しかし、2009年にビアーズは不意に死去することとなる。 2012年に、アメリカ老年医学会(英語版)(AGS)がビアーズ基準を更新し、新しい薬や新たな証拠のため定期的に更新する必要があり、3年ごとに更新すると報道されている。アメリカ老年医学会は、診療ガイドラインの開発に用いられる手法によって、システマティック・レビューと、証拠の格付けを用い、また11人の老年医療と薬物療法の専門家を介してビアーズ基準を更新した。これにより示される薬の一覧は、あくまで目安であり、個別的には最良の治療として用いられることがある。
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