ヒューリスティックな説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 06:54 UTC 版)
「1+2+3+4+…」の記事における「ヒューリスティックな説明」の解説
ラマヌジャンは彼のノートブックの8章において "1 + 2 + 3 + 4 + … = −1/12" の導出を二種類の方法で与えている。厳密さをさておいて簡単に述べれば以下のようなことになる。 考察の第一の鍵は、正項級数 1 + 2 + 3 + 4 + … が交項級数 1 − 2 + 3 − 4 + … にきわめてよく似ていることである。後者の級数もまた発散するのであるが、扱いは極めて容易で、これに値を割り当てる古典的な総和法がいくつか存在し、それは18世紀にはすでに発見されていた。 さて級数 1 + 2 + 3 + 4 + … を級数 1 − 2 + 3 − 4 + … に変形するのに、第二項から 4 を引き、第四項から 8 を引き、第六項から 12 を引き……、という具合にやって行けば、引かれる総量は 4 + 8 + 12 + 16 + … でこれはもとの級数の 4 倍である。これを少し代数学的に書いてみよう。この級数の「和」となるべきものがあるとしてそれを c = 1 + 2 + 3 + 4 + … と呼ぶことにすると、これを 4 倍してもとの式から引けば c = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + ⋯ 4 c = 4 + 8 + 12 + ⋯ − 3 c = 1 − 2 + 3 − 4 + 5 − 6 + ⋯ {\displaystyle {\begin{alignedat}{7}c&{}={}&1+2&&{}+3+4&&{}+5+6+\cdots \\4c&{}={}&4&&{}+8&&{}+12+\cdots \\-3c&{}={}&1-2&&{}+3-4&&{}+5-6+\cdots \\\end{alignedat}}} を得る。 考察の第二の鍵は、交項級数 1 − 2 + 3 − 4 + … が 1/(1 + x)2 の形式冪級数展開に x = 1 と代入したものになっていることである。ラマヌジャンのノートに従えば − 3 c = 1 − 2 + 3 − 4 + ⋯ = 1 ( 1 + 1 ) 2 = 1 4 {\displaystyle -3c=1-2+3-4+\cdots ={\frac {1}{(1+1)^{2}}}={\frac {1}{4}}} の両辺を −3 で割って、c = −1/12 を得る。 一般論で言えば、無限級数を(特に発散級数を)有限和と同様のものであるかのように扱うことは危険である。例えば発散級数に対してその任意の位置に無数の 0 を挿入することでさえ、自己矛盾した結果を導き得る(まして他と整合する結果であることをあらかじめ望むべくもない)。特に、4c = 0 + 4 + 0 + 8 + … とした手順は、単に加法単位元の基本性質のみで正当化することができるものではないのである。さらに極端な例として、級数の先頭にたった一つ 0 を付け加えるだけで矛盾した結果を導くことができることさえある。 この状況を改善して 0 の挿入可能な場所を制限する一つの方法は、適当な関数に従って配置することによって各項のつながり方を保つことである。級数 1 + 2 + 3 + 4 + … における各項 n は単なる数であるが、ここで項 n を複素変数 s に関する関数 n−s へ昇華するならば、項が足し合わされるというようなことだけについては保証することができるようになる。そうして得られた級数はより厳密な取扱いができるようになるし、そのあとで変数 s を −1 に特殊化することもできる。こういった手法を形にしたものがゼータ関数正規化である(後述)。
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