バルブクリアランス
バルブおよびシリンダーヘッドの熱膨張差によって、バルブが突き上げられるのを防ぐために設ける間隙。バルブ直動型エンジンにおいては、カムのベースサークルとタペットとの間隙、ロッカーアーム式においてはロッカー先端とバルブステム端との間、もしくはカムのベースサークルとロッカーアームのカム摺動部との間隙。一般に、熱膨張が大きい排気バルブのほうが、吸気バルブに比べて間隔を大きく設定する。カムが回転し、カムロープ部がバルブを押し上げる瞬間に音が発生するため、最近では油圧によりこの間隔をゼロとするオイルタペットが多く用いられる。
参照 タペットクリアランスバルブクリアランス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/18 03:38 UTC 版)
吸排気バルブが燃焼室の熱を受けて熱膨張して全長がわずかに伸び、開弁時間とバルブリフト量も増大する。エンジンの通常運転温度において開弁時間とリフト量が最適となるように、冷間時にはカムとタペット、あるいはロッカーアームとタペットの間には間隙が設けられていて、バルブクリアランスあるいはタペット隙間、弁隙間と呼ばれる。タペットは潤滑状態が適性に維持されればエンジンの寿命とほぼ同程度の耐久性を持つように設計されているが、カムやロッカーアームとの接触面がある程度は摩耗することは避けられないため、接触面の間隙を定期的に調整する必要がある。この調整作業はタペット調整と呼ばれ、バルブクリアランスが最大の条件、すなわちエンジンが十分に冷めていて、クランク角度が圧縮上死点にある状態で行われる。 バルブクリアランスはエンジンの通常運転温度では極めて0に近くなるように設計されているが、クリアランスが大きくなるとバルブ開放時間が短く、リフト量が小さくなって、吸排気の効率が低下する。同時に、カムやロッカーアームに叩かれる際に発生する音(タペットノイズ)が大きくなる。逆に、クリアランスが小さ過ぎると通常運転温度でカムやロッカーアームに常に押された状態となり、バルブが完全に閉じず、燃焼室の圧縮漏れを起こす場合がある。 一般的な自動車やオートバイのエンジンでのバルブクリアランスは1ミリメートル以下で、サービスデータには「吸気0.25±0.05・排気0.35±0.10」(単位はミリメートル)などと表記される。タイミングやリフト量の変化は、バルブクリアランスの差異がごくわずかでもエンジンの特性に影響を与え、高性能なエンジンほど影響が顕著であることから、許容誤差はより厳密に設定される。すべてのバルブが燃焼時の高温に晒されるが、吸気バルブは吸気行程で混合気または空気である程度冷却されるのに対し、排気バルブは排気行程で高温の排気に晒されるため熱膨張が大きく、ほとんどの場合で吸気バルブよりも大きめのクリアランスが設定されている。ラッシュアジャスター付きの場合には常にクリアランスが0に自動的に調整されるため、サービスデータ上はこの数値は存在しない。
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