バショウ属とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > バショウ属の意味・解説 

バショウ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/13 07:26 UTC 版)

バショウ属
バナナ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: ショウガ目 Zingiberales
: バショウ科 Musaceae
: バショウ属 Musa L.
和名
バショウ属

バショウ属 Musa L. は、バショウ科に属する植物。大きくなるが草本であり、高く伸びる茎は葉鞘の束に過ぎない。バナナマニラ麻など、実用的に重要な種を含む。

概説

バショウ属は大きいものでは数m以上にもなる直立した幹を持つが、それは葉鞘が互いに巻き合ってできた偽茎で、地下に本当のがある。葉身は大きくて楕円形の単葉だが、よく羽状に裂ける。花茎ちかくきは地下の茎から偽茎の中を通って先端から出て、その先端に単一の花序が着く。花は普通は単性で、花序の基部側に雌花、先端側に雄花が着く。それぞれの花は数個から数十個ずつまとまり、それが螺旋状に並び、それぞれの集団をそれぞれ一枚の大きなが包む。果実は細長くて肉質で、やや曲がる。

熱帯アジアを中心に50種ほどがある。実用的に利用されるものが数多くあり、そのために栽培されているものもまた多い。果実が食用になるものはいわゆるバナナである。若葉などが食用になる種もある。葉や茎から繊維が取れるものも多い。また観賞用とされるものもある。

特徴

中型から大型になる多年生の草本[1]は地下にあり、往々に匍匐枝を出す。幹が高木状に高く伸びるが、これはいわゆる偽茎であり、葉鞘が束になったものである[2]。偽茎を構成する葉鞘は内側のものを外側のものが巻き包むようになっている。その先端から伸びる葉身は大きくて長楕円形をしている。葉には主脈があり、側脈は多数あって互いに平行に走る[3]。なお、葉は単葉であるが、往々にして羽状に裂けるのは、側脈が完全な平行脈となっており、隣合う側脈の間の結合がごく緩いので、風などで力がかかると裂けてしまうためである[4]

は偽茎の先端から出る茎に、穂状花序をなしてつく。花序は先端が垂れ下がるものも直立するものもある。個々の花は単性であることが多く、普通は花序の基部側に雌花がつき、先端の方に雄花がある。があって大きく、鞘状で卵形か円形をしている。

花序の構成としては個々の花は数個から数十個が集まって花群を作る[5]。花群は1列か2列に横に並び、そのような花群が花軸沿いに螺旋状に配置しており、開花は基部側から順次起きる。個々の花群にはその基部に1つ、大きな苞があり、従って未開花の花序は折り重なった苞に包まれて卵球形になっている。

は1つだが側面で基部まで裂け、先端は3-5片に分かれている。花冠は萼と同じ程度かそれより短く、丸く曲がって雄しべと雌しべを取り囲む。雄しべは完全なものが5本あり、6番目のものは異化するか、あるいは完全に消失する。花糸は太くて糸状、は線形で上向きに伸びており、2室からなる。子房は3室で、卵子は多数あって上位、花柱は糸状で下の方に向かって肥大しており、柱頭は多少球形に膨らんで6つに裂けている。果実は多肉質になり、裂け開くことはない。外形は長楕円形から紡錘形で断面は3稜形をしており、多少湾曲することが多い。種子は球形に近いか、あるいは稜がある。

生態等

大型の花序にはやや薄いが多量のを分泌する[6]花粉媒介には昼咲きの種では鳥類が、夜咲きの種ではコウモリ類がこれを行う。果実は鳥類や哺乳類がこれを食べる。種子にはデンプン質を含んだ多量の周乳がある。種皮が硬く、種子は消化されないままにと共に排出されることになり、種子は肥料付きで散布される。

発芽には光を要し、森林伐採やギャップ形成の際に発芽する。時として大きな群落を作り、草丈が5mという特異な熱帯草原を構成することもある。

学名は初代ローマ皇帝アウグストゥスの侍医であったムサ(A. Musa、前64-前14)にちなむとも、またアラビア語での名に由来するとも言う[7]

分布と種

世界に50種以上がある[3]ユーラシアを中心に分布し、大きくは3つのグループに分かれる[8]。バショウの仲間は約15種あり、東南アジアの大陸部から西マレーシアを中心に分布する。イトバショウや食用のバナナの多くもこれに含まれる。マニラアサのグループは10種あまりあり、ボルネオ島北東部やフィリピンからニューギニアオーストラリア北部にかけて分布する。ヒメバショウのグループは10種ほどでインドシナ半島から西マレーシアを中心に分布する。

日本の種

日本産とされるのは以下の2種のみである[9]。いずれも南西諸島の原産とされるが、真の自生であるかどうかには疑問があるという。実際には栽培されているものを見るのがほとんどである。

分類

バショウ科はかつては現在のロウイア科オウムバナ科、ゴクラクチョウ科までを含む大きな群とされてきたが、それらが分割され、バショウ属の他にはエンセーテ属とムセラ属の3属を含んでいる[10]

以下、代表的な種を挙げておく。上述の日本産の種は省く[11]

  • M. acuminata マレーヤマバショウ(食用バナナの原種の一つ)
  • M. chiliocarpa センナリバナナ
  • M. coccinea ヒメバショウ
  • M. texilis マニラアサ
  • M. troglodyarum フェイバナナ
  • M. velutina

利害

本属にはいわゆるバナナを含み、これは食用として極めて重要なものである[6]。またデンプンを含む根茎や若芽の芯も食用にされる種がある。大きな葉はものを包むのに用いられる。鞘の繊維がロープなどを作るのに用いられる種も多く、特にマニラアサやイトバショウは有名である。他に観賞用に栽培される種もある。特にヒメバショウ類は花序が美しく、小柄で栽培もしやすいので人気がある。総じて種数は多くないものの非常に有用な熱帯植物と言える。

出典

  1. ^ 以下、主として初島(1975),p.795
  2. ^ セルジュ・シャール 著、ダコスタ吉村花子 訳『ビジュアルで学ぶ木を知る図鑑』川尻秀樹 監修、グラフィック社、2024年5月25日、21頁。ISBN 978-4-7661-3865-8 
  3. ^ a b 大橋他編(2015),p.272
  4. ^ 堀田(1997),p.194
  5. ^ 花序については園芸植物大事典(1994),p.1785
  6. ^ a b 以下、主として堀田(1997)
  7. ^ 園芸植物大事典(1994),p.1785
  8. ^ 以下、堀田(1997),p.195
  9. ^ 以下、大橋他編(2015),p.272
  10. ^ 堀田(1997),p.194-195
  11. ^ 園芸植物大事典(1994),p.1785-1787

参考文献

  • 大橋広好他編、『改定新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』、(2015)、平凡社
  • 初島住彦 『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会
  • 『園芸植物大事典 2』、(1994)、小学館
  • 堀田満他編、『世界有用植物事典』、(1989)、平凡社
  • 堀田満、「バショウ科」「バショウ」:『朝日百科 植物の世界 10』、(1997)、朝日新聞社、:p.194-196

「バショウ属」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「バショウ属」の関連用語

バショウ属のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



バショウ属のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのバショウ属 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS