ハータム・カーリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/18 09:16 UTC 版)
サファヴィー朝になると繊細で綿密な造作のハータムカーリー(寄木張り象嵌細工)の制作がはじまり、宮廷で大変もてはやされて、この技芸が音楽や絵画とならんで王子たちの教養科目になった。その後18-19世紀には象嵌人気は下火となったが、パフラヴィー朝のレザー・シャーがてこ入れして工芸学校をテヘラン、エスファハーン、シーラーズに開設した。 この工芸はパターン装飾(星形が多い)を施すもので、使われる材料は木(黒檀、チーク、ナツメ、オレンジ、ローズウッド)、真鍮(金色の部分)、ラクダの骨(白色の部分)などである。蒐集用の高級工芸品には金・銀・象牙が使われる。木を3角形断面の細棒に加工し、糊付けして加工した他の材料ともども緻密に直径70cmの円柱に組み上げて、6角形に内接した六芒星のモチーフが円柱の横断面に出来上がるという段取りである。このようにしてできた円柱を切断して短くし、2枚の木板の間に挟んで圧力を加えながら乾燥したのち、最後に各1mm厚のシート状になるよう切断する。太い金太郎飴の薄切りを想像してもらえばよいだろう。装飾するものの表面にこれを糊付けし、ラッカー塗装で仕上げる。このシートを加熱すると柔軟になり、装飾するものの外形に合わせて変形することができる。 このようにしていろいろな物を装飾するが、その一例は箱、チェス盤、額縁、喫煙用のパイプ、机、楽器である。寄木張りを細密画に使うこともある。 かつて中国より伝来した技術にペルシア流のノウハウを加味して、この工芸はもう700年以上も連綿と続き、今でもエスファハーンやシーラーズに息づいている。
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