トロヤ群小惑星としての軌道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 15:57 UTC 版)
「(614689) 2020 XL5」の記事における「トロヤ群小惑星としての軌道」の解説
トロヤ群の天体は、2天体の間で重力的な影響が釣り合い動的に安定した地点であるラグランジュ点のうち、小さい方の天体の軌道における天体の前方60度地点(L4)と後方60度地点(L5)付近に存在しながら大きい天体の周囲を公転しており、小さい方の天体とは1:1の軌道共鳴の状態にあることになる。実際には、トロヤ群の天体はL4点もしくはL5点の周りを振動するような動きをする。 2021年1月26日、アマチュア天文家の Tony Dunn は、(614689) 2020 XL5 の名目上の軌道(Nominal trajectory)が地球の前方にあるL4点付近で秤動しているように見えることから、地球のトロヤ群小惑星である可能性を報告した。その後の分析により、既存の軌道パラメータの基づいて少なくとも数千年先までモデリングの安定性が確認された。これにより、(614689) 2020 XL5 は2,000年未満のタイムスケールでトロヤ群小惑星としての軌道が不安定になるとされていた、L4点にある当時唯一の既知の地球のトロヤ群小惑星 2010 TK7 よりも安定していることが判明した。更なるフォローアップ観測と調査により、(614689) 2020 XL5 はトロヤ群小惑星の性質を持っていることが確認され、トロヤ群小惑星としての軌道とならなくなるのは少なくとも4,000年以上は先であることが示された。数値シミュレーションでは、(614689) 2020 XL5 が15世紀から地球のL4点に留まるようになった可能性が高いことが示されている。 (614689) 2020 XL5 の高い軌道離心率により、地球とそのラグランジュ点を基準にした回転座標系では Tadpole orbit と呼ばれる幅広いオタマジャクシのような形状をした軌跡を描く。(614689) 2020 XL5 は最小交差距離 (MOID) が 0.0273 au(約410万 km)の金星軌道を横断するが、その名目上の軌道が金星の軌道面に対しては高すぎるか低すぎるかのどちらかであるため、金星からの摂動の影響は現時点では無視できる。しかし、昇交点黄経が数百年に渡って歳差運動を起こして(614689) 2020 XL5 の軌道に対する金星の影響が時間と共に増していくことで、(614689) 2020 XL5 の金星軌道に対する最小交差距離が小さくなり、最終的には数千年のうちに地球のラグランジュ点L3に送られてトロヤ群小惑星としての軌道は不安定になる。
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