ダイオードのモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 07:13 UTC 版)
ダイオードの順方向を正とする電圧 v とアノードからカソードへ流れる電流 i との間の静特性を表すモデルとしては、ショックレーのダイオード方程式 (diode equation) が有名である。 これは指数関数から定数を引いた簡単な式として、 i = I S ⋅ ( e v / ( n v T ) − 1 ) {\displaystyle i=I_{S}\cdot \left(e^{v/(nv_{T})}-1\right)} と表されている。 ただし、IS と n は個々のダイオードの種類でおよそ決まる正の定数である。 モデル上 IS は逆方向バイアスをかけたとき逆方向電流の極限値に相当し、飽和電流 (saturation current) とよばれる。 シリコン・ダイオードではこれは nA のオーダー、ショットキー・バリア・ダイオードではその数桁上であることが多い。 n はキャリアの再結合電流に対する補正値で通常 1〜2 の範囲の値をもつ。 また、vT は熱電圧 (thermal voltage) とよばれる絶対温度 T に比例する量で、電圧の次元を持ち常温 (300K) では 26 mV 程度である。 これは基礎物理定数を用いて、 v T = k B q e T {\displaystyle v_{T}={\frac {k_{B}}{q_{e}}}T} と簡明に表される。 ただし、kB はボルツマン定数、qe は素電荷、T は絶対温度である。 このモデルではなだれ降伏や内部直列抵抗、接合容量などが考慮されていないことに注意が必要である。 よって逆方向バイアスでのブレークダウンは表されておらず、また大きな順方向バイアスを与える場合や電圧が時間的に素早く変動する場合をうまく表すことはできない。 SPICE のような回路シミュレータではこれらも考慮したより詳細なモデルが使われている。 IS の値は通常非常に小さなものであるため、実用上問題にならない場合は式の − 1 の項を除いて電圧–電流関係を単に指数関数とみなすことも多い。 指数部分をスケールする熱電圧と n との積は数十 mV のオーダーであり、0.1 V の電位差であっても 2〜4 桁程度の大きな電流の違いに相当する。 よって、考えている電流の範囲においてダイオードが電流を流し出す電圧をおよそ定めることができ、これから、ある電圧を境に電流を流し出すとする区分線形的なモデルが用いられる場合もある。
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