タイのミャオ族の精霊信仰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/20 19:46 UTC 版)
「ミャオ族」の記事における「タイのミャオ族の精霊信仰」の解説
以下では特にタイのミャオ族の精霊信仰について述べる。タイのミャオ族は中国文化に影響を受けた精霊崇拝を行っている。さらにシャーマンによる儀礼を持つ。タイのミャオ族は大きく白ミャオ族と青ミャオ族に分けられるが信仰は似通っている。 世界観は陰界 (yeeb ceeb) と陽界 (yaj ceeb) によって構成されており、さらに天界 (ntuj) をつけ加える場合もある。陰界は精霊と死んだものが行くあの世のことである。ミャオの信仰において、あの世は山の中もしくは地下にあると考えられている。陽界は精霊と人間の住むこの世と考えられている。 精霊は基本的にダー (Dab) と呼ばれるが、さまざまな種類と呼び名がある。 陰界の精霊 陰界にはツォー・ニュン (Ntxwj Nyug) と呼ばれるあの世を統括する精霊がおり、死者の魂を審判し、転生の先を決めるとされている。さらにニュー・ヴァー・トゥアム・テーム (Nyuj Vaj Tuam Teem) がその仕事を補佐しており、魂の年齢を管理している。シャーマンの守護精霊 (Siv Yis) もここに住むといわれる。 陽界の精霊 基本的には善意のある守護霊 (Dab quas) と森などに住む悪意のある精霊 (Dab qus) に分かれる。守護霊は家の柱、竈などさまざまな場所を守護していると考えられている。また、それぞれの男系の氏族長が祖先霊 (Dab xwm kab) の祭壇を持っている。祖先霊の祭壇の隣には薬の精霊 (Dab tshuaj) を作ることもある。さらに女性の寝室には結婚生活を守護する精霊 (Dab roog) が祀られている。また、外界と家内をつなぐ家の入り口の敷居には敷居の精霊 (Dab txhiaj meej) がおり、悪い精霊が家内に入ってくることを防いでいる。森の中には悪い精霊 (Dab qus) がすんでいるとされる。特に、ポン・ツォーン (Pog Ntxoog) 呼ばれる老女の精霊は恐れられている。また、病気や驚いた際に人体より抜け出てしまうプリン (plig) と呼ばれる魂の概念があり、タイのピー信仰のクワンに近い。治療の際にはシャーマンによるフー・プリン (Hu plig) と呼ばれる招魂が行われる。 天界の精霊 天界には、人間を助けるヨーム・スア (Yawm Saub) という精霊がいるとされている。この精霊はミャオの洪水神話や、初めての結婚などの神話に登場する。また雨をつかさどる龍 (Zaj Laug) や虹 (Zaj sawv) もいるとされるが、在所は海の下もしくは湖の下の宮殿であるとされている。その他にも太陽の精霊 (Nkauj Hnub)、月の精霊 (Nrang Hli)、雷神 (Xob) などが知られている。
※この「タイのミャオ族の精霊信仰」の解説は、「ミャオ族」の解説の一部です。
「タイのミャオ族の精霊信仰」を含む「ミャオ族」の記事については、「ミャオ族」の概要を参照ください。
- タイのミャオ族の精霊信仰のページへのリンク