スプライシングの過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/20 00:37 UTC 版)
「Pre-mRNA スプライシング」の記事における「スプライシングの過程」の解説
スプライシングでは2回のエステル転移反応 transesterification が起こる。第一に5'側で、第二に3'側でエクソンとイントロンの境界部分が切断され、イントロンはmRNA前駆体から完全に切り離される。さらに、2番目の反応は分断されていたエクソンを結合させる。このため、反応が終わると一次転写産物にはエクソンだけが残る。 第一の反応は、分岐部位の保存されたA塩基の2'炭素にあるOH(2'-OH)が5'-スプライス部位に保存されたGのリン酸基に対して行う求核攻撃である。これは5価の亜リン酸中間体を経て進むSN2反応である。求核攻撃の結果、5'側でエクソンとイントロンをつなげていたホスホジエステル結合が切れる。さらに、自由になったイントロンの5'末端が分岐部位のAと結合し、分岐部位の名前の通り、Aでは元来の2つの結合に加えて新しい結合を加えた三叉路になる。この環状構造を投げ縄構造 lariat structure という。 第二の反応は、遊離した5'側エクソンの3'-OHが3'-スプライス部位のリン酸基に対する求核攻撃である。この反応で2つのことが起こる。最初の最も重要な結果は、分断されていた5'側と3'側のエクソンがつながることである。つまり、翻訳配列が実際に切り貼り(スプライシング)されるのはこの段階である。二番目に、一番目と同じ反応でイントロンはエクソンから完全に切り離される。 図7.エステル転移反応の簡略図。図では炭素が攻撃されているが、スプライシングではリン酸基のリンが水酸基から求核攻撃を受ける。 ここまでの説明では、あるエクソンの5'側末端はイントロンを挟んで隣接するエクソンの3'側と結合するとしてきた。しかし、いつもそうとは限らない。2つの例外があるが、1つ目は、エクソンが間のエクソンを飛ばしてはるか下流で結合する選択的スプライシングである。これについては#選択的スプライシングを参照せよ。2つ目はトランススプライシング trans-splicing で、別々のRNA上のエクソン同士が結合する。通常ほとんど起こらないが、トリパノソーマではほとんどのmRNAがトランススプライシングを受ける。線虫でもすべてのmRNAが5'リーダー配列を付加されるためにトランススプライシングされ、さらに同一分子内でのスプライシングを受ける場合も多い。トランススプライシングによって排出されるイントロンは、通常のラリアット構造ではなくY字型をしている。
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