スコープと文脈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/08 17:26 UTC 版)
「自然言語理解」は様々な範囲のコンピュータアプリケーションに適用される。ロボットを操作する単純化されたコマンドから、新聞記事や詩を完全に理解しようという大掛かりなものまで幅広い。多くの実世界の応用はこれら2つの極端な例の中間に位置し、例えば電子メールの内容を分析して分類して企業内の適切な部門に振り分けるシステムは、それほど深い理解を必要としないが、固定のスキーマをもつデータベースへの簡単なクエリの管理よりはずっと複雑である。 長年に渡り、自然言語処理あるいは英語風の文をコンピュータへの入力に利用する試みが様々なレベルで行われてきた。一部の試みはそれほど深い理解を必要としないものだったが、それでもシステム全体の使いやすさを向上させる役に立っている。例えば、ウェイン・ラトリフ(英語版)が開発した Vulcan というプログラムはスタートレックに出てくる会話するコンピュータを真似て英語風の構文でコンピュータに指示できるようになっていた。Vulcanは後にdBaseへと発展し、その使いやすさで人気となり、パーソナルコンピュータのデータベース市場を生み出した。しかし、単に英語風の構文で使いやすくすることは、豊富な語彙目録を持つシステムとは全く異なり、後者は自然言語文の意味論を表すのに独特の内部表現(一階述語論理であることが多い)を持つ。 例えば文章を論理式に変換することによって、意味を扱う方法がある。 「太郎が車を買った」 という文を論理式に表すと 買った(太郎、車) のような形になる。このような形の論理式に文を変換することによって、意味が扱えると考えられている。 それゆえ、システムが目指す「理解」の幅と深さは、そのシステム(およびそれによって暗示される挑戦)の複雑さと対応できる応用の種類の両方を決定する。システムの「幅」は、それが持つ語彙と文法の大きさで示される。「深さ」は、その理解が流暢な母語話者のそれにどれだけ近いかで示される。最も浅く狭い英語風のコマンドインタプリタは要求される複雑さも小さいが、応用できる範囲も小さい。狭いが深いシステムは、理解の機構を探ってモデル化することを意図しているが、やはり応用範囲は限られている。単純なキーワードマッチングではない理解を行おうとするシステムは、例えばニュース記事の内容を理解してそれがユーザーに適しているかを判断するシステムなどで、かなりの複雑さを要求するが、まだ範囲は若干狭い。非常に広く非常に深いシステムが実現するのは、まだ先のことである。
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