シンフォニエッタ (ダール)とは? わかりやすく解説

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シンフォニエッタ (ダール)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/29 15:41 UTC 版)

シンフォニエッタ』(Sinfonietta, for Concert Band)は、インゴルフ・ダールが作曲した吹奏楽曲

楽曲

全米大学バンド指導者協会(CBDNA)西部・北西支部(Western and Northwestern Regions)の委嘱を受けて1961年に作曲。初演は1962年1月12日、ダールが勤務していた南カリフォルニア大学のトロージャン・シンフォニックバンド(Trojan Symphonic Band)、ウィリアム・シェーファー(William Schaefer)の指揮で行われた。初演後改訂が行われ、1969年に出版されている[1]

ストラヴィンスキーに影響を受けたダールによる、新古典的な手法で書かれている[2]。ダールの作品を代表するものの一つであり[3]1949年に作曲、1953年に改訂された「サクソフォーン協奏曲」とともに、吹奏楽作品のなかでも特に優れたものとして評価されている[4]。ソリスティックで透明、色彩的な書法は吹奏楽のレパートリーにおける新たな視点からの貢献であり、のちの作品に影響を及ぼしている[5]

ダールはこの作品を「生涯書きたかった作品」と言及している[6]。もとになったのは委嘱前に作曲に着手していた「吹奏楽のためのセレナード」で[7]、作曲を始めるにあたってダールは、ハイドンモーツァルトベートーヴェンセレナードを参照していた[6]。また「サクソフォーン協奏曲」が1953年に改訂されるにあたって削除された素材も転用されている。

楽器編成

一般的なコンサート・バンド編成のために書かれている。

編成表
木管 金管
Fl. 2, Picc. 1(Fl.持替) Crnt. 3 (or Tp.) Cb.
Ob. 2 (C.A.1持替) Hr. 4 Timp.
Fg. 2 Tbn. 3 大太鼓シンバル付), シンバル(クラッシュ2, サスペンデッド3), 小太鼓2, テナードラム, トムトム, トライアングル, カスタネット, タンバリン, サンドペーパーブロック, ウッドブロック, むち, タムタム, グロッケンシュピール, シロフォン
Cl. 3, E♭, Alto, Bass Eup. 1
Sax. Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1 Tub.

構成

3楽章からなり、演奏時間は20分程度。楽章単独での演奏も可能とされているが、各楽章の動機や構成は密接なつながりがある。全曲にわたって和声や旋律の基礎となっているのはA♭-E♭-C-G-D-Aの六音で、ダールによれば「調性的で、変イ長調を軸にしている」[2]

  1. 序奏とロンド(Introduction and Rondo)
    Moderato e dolce - Allegro con brio、2/4拍子。静かな序奏と華やかな主部からなり、主部は題名通りのロンド形式で、ソナタ形式が重ね合わせられている[8]
    この楽章には、既存の吹奏楽のレパートリーへの意識がうかがえる。チューニングに使われる変ロ音から始まり、序盤にはバンダトランペットが現れ、打楽器の定型的なリズムが楽章を締めくくる[9]。また後半に現れるクラリネットセクションのユニゾンは、南カリフォルニア大学のバンドがウェーバーコンチェルティーノをユニゾンで演奏していた記憶が反映している[6]
  2. 牧歌的夜想曲(Pastoral Nocturne)
    Andantino con moto、12/8拍子。変ニ調が中心となる。静かな緩徐楽章で、トゥッティは一度も現れない[2]。ダールはフーガワルツガヴォットが含まれていると述べている[9]。「ガヴォット風に」("quasi gavotta")と記された中間部を軸にシンメトリックに構成されており[8]、楽章の最後にはアルトクラリネットの珍しいソロが置かれる[2]
  3. 舞踏変奏曲(Dance Variations)
    Vivacissimo、3/4拍子。基本の六音に基づく音型が奏されて始まる。この動機がオスティナートとなり、パッサカリア風に展開していく[10]三部形式に近い構成の主部に続いて、コーダは第1楽章の序奏と同じ素材に基づいており、全体のシンメトリックな構造を形づくる[11]。最後は静かに締めくくられるが、強音によるコーダも用意されている。

注釈

  1. ^ Weinstein, Michael H. "Sinfonietta for Concert Band - Ingolf Dahl" Teaching Music through Performance in Band, Volume 1. (2nd ed.) GIA Publications, 2010. p.933.
  2. ^ a b c d Weinstein, p.934.
  3. ^ Rettie, Christopher Scott "A performer's and conductor's analysis of Ingolf Dahl's for Alto Saxophone and Wind Orchestra" (Louisiana State University, 2006) p.8.
  4. ^ ジェイ・ギルバート(Jay W. Gilbert)による調査では、吹奏楽レパートリーにおける芸術的な成果と見なされている作品の上位5作に入っている。(Weinstein, p.933.)
  5. ^ Teaching Music through Performance in Band. GIA Publications, 1996. pp. 461-462
  6. ^ a b c notes (PDF) for United States Marine Band, Michael J. Colburn "Originals" Michael J. Colburn, 2006. pp.14-16.
  7. ^ Anthony Linick, The Lives of Ingolf Dahl (AuthorHouse, 2008) p. 348.
  8. ^ a b Teaching Music through Performance in Band. p. 462.
  9. ^ a b Weinstein, p. 935.
  10. ^ Weinstein, p. 937.
  11. ^ Teaching Music through Performance in Band. p. 463.

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