ショット繋ぎ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 14:34 UTC 版)
小津はショットを繋ぐ技法である「ディゾルブ(英語版)(オーバーラップとも)」と「フェード」をほとんど使わなかった。ディゾルブはある画面が消えかかると同時に次の画面が重なって出てくる技法で、フェードは画面がだんだん暗くなったり(フェード・アウト)、反対に明るくなったり(フェード・イン)する技法である。どちらも場面転換をしたり、時間経過を表現したりするための古典的な映画技法として用いられた。しかし、小津はこうした技法を「ひとつのゴカマシ」とみなし、「カメラの属性に過ぎない」として否定した。 ディゾルブはごく初期に例外的にしか使っておらず、小津自身は『会社員生活』で使用してみて「便利ではあるがつまらんものだ」と思い、それ以降はごく僅かな使用を除くと、まったくといっていいほど使用しなかった。佐藤によると、小津は画面の秩序感を整えることに固執していたが、ディゾルブを使えばそれを処理している僅かな時間により、厳密な構図の秩序感が失われてしまうため、それを避ける目的でディゾルブを使用しなかったという。一方、フェードはディゾルブほど厳密に排除せず、比較的後年まで用いられた。小津は『生れてはみたけれど』から意識的に使わなくなったと述べているが、その後もファースト・ショットとラスト・ショットを前後のタイトル部分と区切るためだけに使用した。しかし、カラー作品以後はそれさえも使わなくなり、すべて普通のカットだけで繋いだ。 小津はディゾルブやフェードの代わりに、場面転換や時間経過を表現する方法として「カーテン・ショット」と呼ばれるものを挿入した。カーテン・ショットは風景や静物などの無人のショットから成り、作品のオープニングやエンディング、またはあるシーンから次のシーンに移行するときに挿入されている。カーテン・ショットの命名者は南部圭之助で、舞台のドロップ・カーテンに似ていることからそう呼んだ。他にも「空ショット(エンプティ・ショット)」と呼ばれたり、枕詞の機能を持つことから「ピロー・ショット」と呼ばれたりもしている。
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