部分ゲーム完全均衡
(サブゲーム完全均衡 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 14:56 UTC 版)
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部分ゲーム完全均衡(ぶぶんゲームかんぜんきんこう、英: subgame perfect equilibrium) または部分ゲーム完全ナッシュ均衡 (英: subgame perfect Nash equilibrium) とは、 ナッシュ均衡の考え方を元にした、多期間にわたるゲームの均衡概念である。
ある戦略ベクトルが部分ゲーム完全均衡であるとは、戦略が元のゲームのすべての部分ゲームでもナッシュ均衡点である場合である。 くだけた言い方では、
- プレーヤーたちが元のゲームの一部だけからなる小ゲームのすべてをプレイし、
- その小ゲームにおけるプレーヤーたちの振る舞いがその小ゲームのナッシュ均衡点で代表される場合、
プレーヤーたちの振る舞いは元のゲームの「部分ゲーム完全均衡点」である。
部分ゲーム完全均衡を決定するよくある方法は後退帰納法である。 ゲームの最後の行動を考え、行動をとったプレーヤーの効用を最大化する行動は何であるべきかを決定する。 次に最後のプレーヤーが(彼女にとって最適な)行動をとったと仮定した場合、 最後から二番目の行動を考え、最後から二番目のプレーヤーの効用を最大化する行動を選択する。 この過程をゲームの最初の手番まで継続する。こうして残った戦略はすべて部分ゲーム完全均衡点である。
しかしながら、ゲームが完全情報ゲームでない場合、または完備情報ゲームでない場合は後ろ向き帰納法は使えない。 後ろ向き帰納法の過程が要素数2以上の情報集合にかかってしまうためである。 また、後ろ向き帰納法は、有限の手数でゲームが終了する場合にしか使えない。
最後通牒ゲームはナッシュ均衡点より少数の部分ゲーム完全均衡点を与えるゲームの一例である。
部分ゲーム完全均衡点の発見
ラインハルト・ゼルテン は元のゲームで選択できる手のすべてを選択できる部分ゲームに分割できるどんなゲームも、部分ゲーム完全ナッシュ均衡点をもつ(混合戦略を含めた場合。非決定的部分ゲーム決定を与える)ことを証明した。
部分ゲーム完全ナッシュ均衡点は通常、ゲームの最終帰結からの後ろ向き帰納法で決定される。 ゲームの木上で「信じられる」手でない手を含む枝をノードから消去することによってである。 この型のゲームの例は三目並べである。後ろ向き帰納法の最も広範な応用は金融における初期のオプション取引の数値的な近似である。
「信じられる」という用語の興味深い面は、(部分ゲームに到達する過程の非可逆性を無視すると、) 部分ゲーム完全戦略よりも優れた戦略は存在するが、その戦略を実施するという脅迫はその脅迫者自身に有害であり、 そのためにその戦略は実施されないであろう、ということである。 たとえばチキンゲームの場合、一方が先に自車のハンドルを捨てる選択ができるばあい、彼は捨てるべきである。 なぜなら、彼が取り外したために、合理的な敵方は同じこと(ハンドルを捨てて刺し違えること)ができなくなるからである。 取り外したほうが必ず勝つ。敵方は曲がるからである。敵方の「直進するわよ」、という脅しは「信じられる」ものではない。 実は、一方のプレーヤーがハンドルを捨てたとき、敵方の合理的な選択肢は『「ハンドルを捨てる」、「ハンドルをつけたままにする」』 から『「ハンドルをつけたままにする」』という部分ゲーム完全ナッシュ均衡に絞られたのである。
翻訳元
本記事は Wikipedia 英語版
- Subgame perfect equilibrium. Subgame perfect equilibrium as of 3 October 2007
からの抄訳である。
参考文献
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- David M. Kreps (1990). A Course in Microeconomic Theory, Princeton University Press. ISBN 9780691042640.
外部リンク
- Example of Extensive Form Games with imperfect information
- Java applet to find a subgame perfect Nash Equilibrium solution for an extensive form game from gametheory.net.
- Simple example
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サブゲーム完全均衡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 17:01 UTC 版)
詳細は「サブゲーム完全均衡」を参照 上で定義されたナッシュ均衡は静学的な均衡概念であった。これに対して、動学的なゲームを考える際には上述のナッシュ均衡条件に加えて「信頼できない脅しやはったり」を排除するための条件が必要となる。「信頼性のない脅し(英: incredible threat)」を排除するためには実際にプレイされることのないサブゲームにおいても各プレイヤーの戦略が正当化されている必要がある。このような発想からラインハルト・ゼルテンは、動学的なゲームの戦略の組 s* が全てのサブゲームにおいてナッシュ均衡となっているとき、それをサブゲーム完全均衡(英: subgame perfect equilibrium)と定義した。 展開形ゲーム後方の最小のサブゲームのナッシュ均衡を先に求め、そのサブゲームをそのナッシュ均衡から得られる利得の組に置き換えることによって得られるゲームを縮約ゲーム(英: truncated game)と呼ぶ。縮約ゲーム自体がそれ自身以外にサブゲームを持たないゲームになるまでこの操作を繰り返して得られるナッシュ均衡はサブゲーム完全均衡と一致することが知られている。このようなサブゲーム完全均衡の求め方は、後ろ向き帰納法(英: backward induction)と呼ばれる。 サブゲーム完全均衡は通常のナッシュ均衡が抱えるチェーンストア・パラドックス(英語版)のような問題点を解消しており、さらに計算が容易であるため、展開形ゲームの基本的な解概念として受け入れられている。もっともサブゲーム完全均衡は他のナッシュ均衡と同じくらいにしか合理的でない。かつては均衡選択問題を解くために他のナッシュ均衡を却下することが流行したこともあったが、現在の殆どのゲーム理論家の理解では他のナッシュ均衡を却下する理由は全くない。たとえば最後通牒ゲームでサブゲーム完全均衡が必ず観察されることをゲーム理論が予測するわけではない。実際、最後通牒ゲームの実験でサブゲーム完全均衡は観察されない。ただしゼルテンが示したように、プレイヤーが間違いを犯す可能性のあるゲームを想定すると、間違いのあるゲームのナッシュ均衡は、間違いのないゲームのサブゲーム完全均衡を近似する。間違いのある人間社会のゲームの均衡はサブゲーム完全均衡で一次近似できると考えられる。
※この「サブゲーム完全均衡」の解説は、「ゲーム理論」の解説の一部です。
「サブゲーム完全均衡」を含む「ゲーム理論」の記事については、「ゲーム理論」の概要を参照ください。
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