リスク支配
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/08 00:25 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動リスク支配 及び 利得支配 らは ゲーム理論におけるナッシュ均衡の2つの関連した精緻化であり、ジョン・ハーサニとラインハルト・ゼルテンにより定義された。利得支配的なナッシュ均衡とは同じゲームのナッシュ均衡に対してパレート効率性を満たすものである1。プレイヤーが均衡選択の場面に直面した際に全てのプレイヤーは、各プレイヤーに他のナッシュ均衡と同等かそれ以上の利得を与える利得支配的なナッシュ均衡を選択することに同意すると予想される。他方で、リスク支配的なナッシュ均衡とは他プレイヤーの戦略変更に関して最大の安全性を保証するものである。この均衡はプレイヤーが他のプレイヤーの行動に関して伴う不確実性が増すほど、高い確率で選択されうる。
下の利得行列 は二つの 純粋戦略ナッシュ均衡を持つ単純な2×2ゲームを表している。戦略のペア (Hunt, Hunt)が利得支配的な均衡である。なぜなら両プレイヤーにとって、他の純粋戦略ナッシュ均衡となる戦略のペア(Gather, Gather)より高い利得を得られるからである。一方, (Gather, Gather)は(Hunt, Hunt)をリスク支配する。なぜなら、他プレイヤーの行動に関して不確実性が存在する場合、Gather戦略がより高い利得をもたらすからである。このゲームはスタグハントゲームと呼ばれ、ゲーム理論におけるジレンマの一つとして有名である。このゲームの肝は全プレイヤーが協調的な戦略(Hunt戦略)をとった場合は全員に高い利得をもたらすが、他のプレイヤーが協調するか疑念がある場合、Gather戦略が利得確保の点からみて有効である(そしてこの戦略は他者の戦略に左右されない)ことにある。加えて、単独でGather戦略を実行することは、複数人によるGather戦略より選好される。囚人のジレンマと同様に、これは信頼できるコミットメントを欠いた共同行動が失敗に終わる理由の一つを示唆している。
P1\P2 | Hunt | Gather |
Hunt | 5,5 | 0,4 |
Gather | 4,0 | 2,2 |
厳密な定義
下の利得行列で表されたゲームが協調ゲームであるとき、(行プレイヤーの利得に関して)
- Samuel Bowles: Microeconomics: Behavior, Institutions, and Evolution, Princeton University Press, pp. 45–46 (2004) ISBN 0-691-09163-3
- Drew Fudenberg and David K. Levine: The Theory of Learning in Games, MIT Press, p. 27 (1999) ISBN 0-262-06194-5
- Harsanyi, John C. (1995). “A new theory of equilibrium selection for games with complete information”. Games and Economic Behavior 8 (1): 91–122. doi:10.1016/S0899-8256(05)80018-1. ISSN 0899-8256 .
- Harsanyi, John C.; Selten, Reinhard (1988). A General Theory of Equilibrium Selection in Games. MIT Press. ISBN 0-262-08173-3.
- Kandori, Michihiro; Mailath, George; Rob, Rafael (1993). “Learning, Mutation, and Long Run Equilibria in Games”. Econometrica 61 (1): 29–56 .
- Roger B. Myerson: Game Theory, Analysis of Conflict, Harvard University Press, pp. 118–119 (1991) ISBN 0-674-34115-5
- Larry Samuelson: Evolutionary Games and Equilibrium Selection, MIT Press (1997) ISBN 0-262-19382-5
- Young, H. (1993). “The Evolution of Conventions”. Econometrica 61 (1): 57–84 .
- H. Peyton Young: Individual Strategy and Social Structure, Princeton University Press (1998) ISBN 0-691-08687-7
- グレーヴァ香子:「非協力ゲーム理論」、知泉書館(2011) ISBN 978-4-86285-107-9
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