カーテンのある聖家族とは? わかりやすく解説

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カーテンのある聖家族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/13 10:20 UTC 版)

『カーテンのある聖家族』
ドイツ語: Die Heilige Familie mit dem Vorhang
英語: The Holy Family with a Curtain
作者 レンブラント・ファン・レイン
製作年 1646年
種類 板上にキャンバス
寸法 46.8 cm × 68.4 cm (18.4 in × 26.9 in)
所蔵 カッセル古典絵画館英語版カッセル

カーテンのある聖家族』(カーテンのあるせいかぞく、: Die Heilige Familie mit dem Vorhang: The Holy Family with a Curtain[1][2][3]、または『聖家族』 (せいかぞく、: De Heilige Familie: The Holy Family) [4][5] は、オランダ絵画黄金時代の巨匠レンブラント・ファン・レインが1646年に板上に油彩で制作した絵画である。画面下部右側に「Rembrandt. ft. / 1646」という画家の署名と制作年が記されている[1][4]が、オランダ美術史研究所はレンブラントの工房が制作した可能性もあるとしている[4]。作品は1752年にヴィルヘルム8世 (ヘッセン=カッセル方伯) のコレクションに入り[1][4]、現在、カッセルにあるカッセル古典絵画館英語版に所蔵されている[1][2][3][4][5]

作品

慎ましく、薄暗い部屋の中で母親が膝の上に幼児を抱いている。幼児のゆりかごが側の床の上に置かれている。彼女は部屋の真ん中のかすかな焚火を見つめており、その横にはうずくまっている猫と土器が見える。画面右側の薄暗い奥の空間では、父親が薪を割っている[1][2]

レンブラント『天使のいる聖家族』 (1645年)、エルミタージュ美術館サンクトペテルブルク

この風俗画のような質素で、親しみやすい情景は、19世紀になってようやく聖家族を描いたものであると認識された[1]。レンブラントは1640年代に聖家族や幼児イエス・キリストを表した絵画をよく描いたが、それらの絵画は家庭的な幸福と親密さによって特徴づけられる[3]オランダプロテスタント文化の中では、聖人としてではなく、イエスの理想的な母として示された本作の聖母マリアは、特に好意的に受け入れられたことであろう[2]。前年 (1645年) に描かれた『天使のいる聖家族』 (エルミタージュ美術館サンクトペテルブルク) とは異なり、本作には空中の天使やイエスの光輪 (宗教美術) が見られず、いっそう現実の平和な家庭生活に近いものが表現されている[5]

レンブラント『アハタ・バス』 (1641年)、ロイヤル・コレクションバッキンガム宮殿

レンブラントはトロンプルイユの手法で描いた額縁中の『ニコラース・ファン・バンべーク』 (ベルギー王立美術館ブリュッセル) と『アハタ・バス』 (ロイヤル・コレクションバッキンガム宮殿) を制作している[3]が、本作で注目すべき点は情景が金色で描いた額縁中に表されていることに加え、額縁の前にはやはり描いた赤いカーテンが掛けられていることである[1][2][3][5]。カーテンは部屋の右側3分の1を覆っている[1]。本作は、折り重なるカーテンによって鑑賞者に提示される額縁の中の絵画という外見を装っているのである[1]

ハブリエル・メツー手紙を読む女』 (1665-1667年ごろ)、アイルランド国立美術館

絵画の前に掛けられたカーテンというものは、絵画を塵から守るという当時のオランダの一般的な習慣を再現したものとなっている。所有者はカーテンを開けて、絵画を見せることで来客を驚かせることもできた[2]。レンブラントの描いた本物そっくりのカーテンは、まるで見えない手によって引いて開けられたかのように右に揺れており、次の瞬間には垂直の位置に戻りそうに見える[2]。このカーテンは、大プリニウスの著作『博物誌』 (25:65) に記述される古代ギリシアの逸話を想起させる。それによると、画家ゼウクシスは別の画家パラシウス英語版 との腕比べの際に、パラシウスの描いたカーテンを本物と間違えて開けさせようとした[2][5]ため、ゼウクシスは自身を欺いたパラシウスを勝者と認めた[1][2]。レンブラントは、この逸話をよく知っていたに違いない[5]

1640年代、1650年代のオランダの絵画はすでに描いたカーテンというものを取り入れていたが、レンブラントはそれを描いた額縁と組み合わせ、一般的なものとした最初の画家のようである[1][2]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k Die Heilige Familie mit dem Vorhang”. カッセル古典絵画館公式サイト (ドイツ語の英訳). 2025年5月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j マリエット・ヴェステルマン 2005年、184-185頁。
  3. ^ a b c d e The Holy Family with a Curtain”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年5月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e Holy Family”. オランダ美術史研究所サイト (英語). 2025年5月13日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 『カンヴァス世界の大画家 16 レンブラント』、1982年、86頁。

参考文献

外部リンク




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