画架の前の自画像_(レンブラント)

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画架の前の自画像 (レンブラント)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/05/01 13:23 UTC 版)

『画架の前の自画像』

フランス語: Autoportrait au chevalet et à l'appuie-main de peintre 英語: Self-Portrait at the Easel
作者	レンブラント・ファン・レイン
製作年	1660年
素材	キャンバス上に油彩
寸法	111 cm × 85 cm (44 in × 33 in)
所蔵	ルーヴル美術館、パリ

『画架の前の自画像』（がかのまえのじがぞう、仏: Autoportrait au chevalet et à l'appuie-main de peintre、英: Self-Portrait at the Easel）は、17世紀オランダ黄金時代の巨匠レンブラント・ファン・レインが晩年の1660年にキャンバス上に油彩で制作した自画像である。画面下部右側に「Rem. / f.1660」という画家の署名と制作年が記されている^[1][2]。作品は1671年ごろ、フランス国王ルイ14世によって^[1][2][3]特定されていない個人所有者から購入され、1793年以来^[1][2]、パリのルーヴル美術館に所蔵されている^{[1][2][3][4][5]}。

作品

レンブラントは生涯を通じて自画像を描き続け、ほとんど途切れのない絵画による「自伝」を作り上げた^[3]。あらゆる大画家のうちでも、レンブラントほど数多い自画像を残した画家はいない^[6]。等身大の半身自画像である^[3]本作は、美術史美術館 (ウィーン) の『自画像』 (1652年)、フリック・コレクション (ニューヨーク) の『自画像』 (1658年)、ケンウッド・ハウス (ロンドン) の『二つの円のある自画像』 (1665-1669年) とともにレンブラント晩年の大きな自画像の1つである^[1][4]。また、右手にモールスティック（英語版） (腕鎮) 、左手に絵筆とパレットを持って^[4]絵画を制作中の自身を表し^[1][3]、画家としての身分を強調した^[4]レンブラントの稀な自画像の1つとなっている^[1][3]。同時に、本作はおそらく、そうした自画像中の最初のものである^[1][4]。

レンブランはスモックかエプロンのようなものを着用しており、その表面の染みは左手に持つパレットを連想させる。素朴な白い帽子を被って頭髪を抑え、髪が生乾きの絵具の上に落ちないようにしている。頭の周りに暗い影があるところを見ると、当初はもっと幅広で仰々しいベレー帽にするつもりであったようである^[1][3]。それを素朴な帽子にした^[1][3]ことにより、私的な雰囲気が醸し出されている^[3]。この白い帽子は大きな筆さばきで描かれ、神秘的な光を周囲に放っている^[4]。画面右端に垣間見えるのは画架で、右手に握られたモールスティックから、レンブラントが束の間、仕事の手を休めていることがうかがえる^[3]。

以前のきわめて自我の強い、楽観的な自画像とは異なり、この絵画のレンブラントにはいくらか諦念が漂っている。同時に、彼は自身への確信に満ちた落ち着いた表情をしている。当時のレンブラントは、破産、財産の競売処分、自宅の売却という苦難の時期を乗り越えたところであった^[3]。

ギャラリー

• 
  『自画像』 (1652年)、美術史美術館、ウィーン)
• 
  『自画像』 (1658年)、フリック・コレクション、ニューヨーク
• 
  『二つの円のある自画像』(1665-1669年)、ケンウッド・ハウス、ロンドン

脚注

1. ^ ^{a b c d e f g h i j} “Autoportrait au chevalet et à l'appuie-main de peintre”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2025年5月1日閲覧。
2. ^ ^{a b c d} “Self portrait at the easel, dated 1660”. オランダ美術史研究所公式サイト (英語). 2025年5月1日閲覧。
3. ^ ^{a b c d e f g h i j k} 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、326頁。
4. ^ ^{a b c d e f} 『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、1986年、152頁。
5. ^ “Portrait of the Artist at His Easel”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年5月1日閲覧。
6. ^ 『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、1986年、134頁。

参考文献

• ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
• 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、日本放送出版協会、1986年刊行　ISBN 4-14-008425-1

外部リンク

• ルーヴル美術館公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『画家の前の自画像』 (フランス語)
• オランダ美術史研究所公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『画家の前の自画像』 (英語)
• Web Gallery of Artサイト、レンブラント・ファン・レイン『画家の前の自画像』 (英語)

表 話 編 歴 レンブラント・ファン・レイン
歴史画	『五感（ドイツ語版）』（1624‐1625年） 『聖ステファノの石打ち』（1625年） 『トビトと子ヤギを持ったアンナ』（1626年） 『バラムとロバ』（1626年） 『愚かな金持ちの譬え』（1627年） 『エジプトへの逃避』（1627年） 『寺院の中のシメオン』（1627-1628年） 『論争する二人の老人』（1628年） 『エマオの晩餐 (ジャックマール＝アンドレ美術館)』 (1628年ごろ) 『銀貨30枚を返すユダ』（1629年） 『サムソンとデリラ』（1629年-1630年） 『エルサレムの滅亡を嘆くエレミヤ』（1630年） 『アンドロメダ』（1630年） 『シメオンの賛歌』（1631年） 『プロセルピナの略奪』（1631年） 『ラザロの復活』（1630年-1632年頃） 『エウロペの誘拐』（1632年） 『東方三博士の礼拝』（1632-1633年） 『ガリラヤの海の嵐』（1633年） 『キリスト昇架』（1633年） 『キリスト降架』（1633年） 『使徒パウロ』（1633年頃） 『アクタイオンとカリストのいるディアナとニンフの水浴』（1634年） 『フローラ』（1634年） 『ホロフェルネスの饗宴におけるユディト』（1634年） 『ガニュメデスの略奪』（1635年） 『イサクの犠牲』（1635年） 『書斎のミネルヴァ』（1635年） 『舅を脅かすサムソン』（1635年） 『ダナエ』（1636年） 『ペリシテ人に目を潰されるサムソン』（1636年） 『スザンナ』（1636年） 『トビアスの家族から去る大天使ラファエル』（1637年） 『売春宿の放蕩息子』（1637年） 『ベルシャザルの饗宴』（1635年-1638年） 『サムソンの婚宴』（1638年） 『ダビデとヨナタン』（1642年） 『姦淫の女』（1644年） 『天使のいる聖家族』（1645年） 『ヨセフの夢』（1645年） 『スザンナと長老たち』（1647年） 『エマオの晩餐 (ルーヴル美術館)』（1648年） 『キリストの頭部』（1645年-1650年） 『ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス』（1653年） 『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』（1654年） 『フローラ』（1654頃） 『パラス・アテナ』（1655年頃） 『ヨセフの息子たちを祝福するヤコブ』（1656年） 『十戒の石板を破壊するモーセ』（1659年） 『聖ペテロの否認』（1660年） 『エステルの饗宴におけるアハシュエロス王とハマン』（1660年） 『聖マタイと天使』（1661年頃） 『クラウディウス・キウィリスの謀議』（1661年–1662年） 『詩を口述するホメロス』（1663年） 『ルクレティア』（1664年） 『運命を悟るハマン』（1665年頃） 『放蕩息子の帰還』（1668年）
肖像画	『笑う男』 (1629-1630年頃) 『テュルプ博士の解剖学講義』（1631年） 『読書をする老婦人』（1631年） 『ヤーコブ・デ・ヘイン3世の肖像』（1632年） 『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』（1632年） 『男性の肖像 (ウィーン)』 (1632年頃) 『ヨハネス・ウーテンボハールトの肖像』（1633年） 『若きサスキアの肖像』（1633年） 『船大工とその妻』（1633年） 『アルカディアの衣装を着たサスキア』（1635年） 『ポーランドの貴族』（1637年） 『マリア・トリップの肖像』（1639年頃） 『羽根飾りのある帽子をかぶる男のトローニー』 (1635-1640年頃) 『額縁の中の少女』（1641年） 『メノー派説教師アンスロとその妻』 (1641年) 『夜警』（1642年） 『水浴する女』（1654年） 『デイマン博士の解剖学講義』（1656年） 『開かれた上扉による若い女性』 (1654-1657年) 『僧としてのレンブラントの息子ティトゥス』（1660年） 『二人のアフリカ人男性』 (1661年) 『布地商組合の見本調査官たち』（1662年） 『ヘラルト・デ・ライレッセの肖像』（1665年-1667年） 『老人の肖像』（1667年） 『ユダヤの花嫁』（1665年-1669年）
自画像	『アトリエの画家』（1628年） 『首当てをつけた自画像』（1629年頃） 『縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像』（1633年） 『34歳の自画像』（1640年） 『大きな自画像』 (1652年) 『金の鎖のネックレスとイヤリングをつけた毛皮の上着の自画像』（1655年） 『自画像 (フリック・コレクション)』 (1658年) 『ベレー帽と立襟の自画像』（1659年） 『画架の前の自画像』（1660年） 『使徒パウロに扮した自画像』（1661年） 『ゼウクシスとしての自画像』（1668年頃） 『二つの円のある自画像』（1655年–1669年頃） 『63歳の自画像』（1669年）
風景画・動物画	『石橋のある風景』（1637年） 『アーチ型の橋のある風景』（1637年頃） 『善きサマリア人のいる風景』（1638年） 『城のある風景』（1640-1642年頃） 『風車』（1645年-1648年） 『屠殺された牛』（1655年）
主題	オランダ黄金時代の絵画 写実主義 キアロスクーロ
レンブラント 研究	鑑定 レンブラント・カタログ・レゾネ 主要な専門 家と学者 ケネス・クラーク サミュエル・ファン・ホーホストラーテン アルノルト・ホウブラーケン
関連人物	サスキア・ファン・オイレンブルフ (妻・モデル) ピーテル・ラストマン (師) ヤン・リーフェンス (同僚・友人)
主要な美術館 と展覧会	レンブラントの家 アムステルダム国立美術館 マウリッツハイス美術館 大英博物館 メトロポリタン美術館 フリック・コレクション
因んだ名前	レンブラント広場 レンブラントライティング
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