寺院の中のシメオン

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寺院の中のシメオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/04/29 21:47 UTC 版)

『寺院の中のシメオン』

オランダ語: Simeon in de tempel 英語: Simeon in the Temple
作者	レンブラント・ファン・レイン
製作年	1627-1628年
種類	オーク板上に油彩
寸法	55.5 cm × 44 cm (21.9 in × 17 in)
所蔵	ハンブルク美術館

『寺院の中のシメオン』（じいんのなかのシメオン、蘭: Simeon in de tempel、英: Simeon in the Temple）^[1][2]、または『寺院の中のシメオンとアンナ』（じいんのなかのシメオンとアンナ、独: Simeon und Hanna im Tempel、英: Simeon and Anna in the Temple）^[3]、または『イエスに神を認めるシメオンとアンナ』（イエスにかみをみとめるシメオンとアンナ、英: Simeon and Anna Recognize the Lord in Jesus）^[4]は、オランダ絵画黄金時代の巨匠レンブラント・ファン・レインが1627-1628年に^[1]オーク板上に油彩で制作した絵画である。画面下部右側に「Rembrandt.f」と署名が記されている^[1]。作品は1912以来^[1]、ハンブルク美術館に所蔵されている^[1][2][3][4]。

作品

レンブラント『シメオンの賛歌』 (1631年)、マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ

作品の主題は、『新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (2章22-39) から採られている^[1]。レンブラントはこの主題で数多くの油彩画、素描、版画を制作した^[5]が、それはレンブラントが福音書に語られる敬虔な話の内容に心を動かされたからにほかならない^[5]。福音書の記述によれば、新生児イエス・キリストの割礼の後、聖母マリアと聖ヨセフはイエスを神に捧げ、2羽のハトを生贄として差し出すために寺院に赴いた^[5]。

画面中央には、その日、聖霊に導かれて寺院に詣でた^[4]シメオンがいる。死ぬ前に一目、救世主を見ようと願って寺院にやってきた^[2]彼は新生児イエスを救世主として認め^[4]、膝の上に抱きかかえている^[2][4]。感謝に満ちたシメオンは聖母マリアに言葉を告げているところであり、深く心を動かされた彼女は手を握りしめて跪いている。前景左側にシルエットの姿で跪いているのは聖ヨセである^[2]。彼らの上方には、神殿を住まいとしていた^[4]預言者アンナ (預言者) が力強い姿で立っている^[2]。神に信心深く仕えた老未亡人の彼女にも、救世主に会う特権が与えられたのである。アンナは神への感謝を示して、両手を上に広げている^[2]。

人物像が大きく、強い光に照らしだされている本作は、レンブラントがイタリア・バロック期の巨匠カラヴァッジョの様式で描いた時期の最後の作品の1つであろう^[2]。この作品はまた、その構図と色彩によってレンブラントの技量の進歩を表すものである。アンナは三角形構図の頂点に位置しているが、同時に鑑賞者の視線は色彩の配列にしたがって、輝く光輪 (宗教美術) を持ったイエス、すなわち未来の救世主の方に引きつけられる^[2]。

脚注

1. ^ ^{a b c d e f} “Simeon in the Temple”. オランダ美術史研究所公式サイト (英語). 2025年4月28日閲覧。
2. ^ ^{a b c d e f g h i} L.ミュンツ 1967年、64頁。
3. ^ ^{a b} “Simeon and Hannah in the Temple”. ハンブルク美術館公式サイト. 2025年4月28日閲覧。
4. ^ ^{a b c d e f} “Simeon and Anna Recognize the Lord in Jesus”. Web Gallery of Artサイト. 2025年4月28日閲覧。
5. ^ ^{a b c} 『マウリッツハイス美術館展』、2012年、74頁。

参考文献

• L.ミュンツ　矢代修次訳『世界の巨匠シリーズ レンブラント』、美術出版社、1967年刊行　ISBN 4568190193
• 『マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝』東京都美術館、神戸市立博物館、朝日新聞社、2012年刊行

外部リンク

• ハンブルク美術館公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『寺院の中のシメオン』 (ドイツ語の英訳)
• Web Gallery of Artサイト、レンブラント・ファン・レイン『キリストに神を認めるシメオンとアンナ』 (英語)

表 話 編 歴 レンブラント・ファン・レイン
歴史画	『五感（ドイツ語版）』（1624‐1625年） 『聖ステファノの石打ち』（1625年） 『トビトと子ヤギを持ったアンナ』（1626年） 『バラムとロバ』（1626年） 『愚かな金持ちの譬え』（1627年） 『エジプトへの逃避』（1627年） 『寺院の中のシメオン』（1627-1628年） 『論争する二人の老人』（1628年） 『エマオの晩餐 (ジャックマール＝アンドレ美術館)』 (1628年ごろ) 『銀貨30枚を返すユダ』（1629年） 『サムソンとデリラ』（1629年-1630年） 『エルサレムの滅亡を嘆くエレミヤ』（1630年） 『アンドロメダ』（1630年） 『シメオンの賛歌』（1631年） 『プロセルピナの略奪』（1631年） 『ラザロの復活』（1630年-1632年頃） 『エウロペの誘拐』（1632年） 『東方三博士の礼拝』（1632-1633年） 『ガリラヤの海の嵐』（1633年） 『キリスト昇架』（1633年） 『キリスト降架』（1633年） 『使徒パウロ』（1633年頃） 『アクタイオンとカリストのいるディアナとニンフの水浴』（1634年） 『フローラ』（1634年） 『ホロフェルネスの饗宴におけるユディト』（1634年） 『ガニュメデスの略奪』（1635年） 『イサクの犠牲』（1635年） 『書斎のミネルヴァ』（1635年） 『舅を脅かすサムソン』（1635年） 『ダナエ』（1636年） 『ペリシテ人に目を潰されるサムソン』（1636年） 『スザンナ』（1636年） 『トビアスの家族から去る大天使ラファエル』（1637年） 『売春宿の放蕩息子』（1637年） 『ベルシャザルの饗宴』（1635年-1638年） 『サムソンの婚宴』（1638年） 『ダビデとヨナタン』（1642年） 『姦淫の女』（1644年） 『天使のいる聖家族』（1645年） 『ヨセフの夢』（1645年） 『スザンナと長老たち』（1647年） 『エマオの晩餐 (ルーヴル美術館)』（1648年） 『キリストの頭部』（1645年-1650年） 『ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス』（1653年） 『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』（1654年） 『フローラ』（1654頃） 『パラス・アテナ』（1655年頃） 『ヨセフの息子たちを祝福するヤコブ』（1656年） 『十戒の石板を破壊するモーセ』（1659年） 『聖ペテロの否認』（1660年） 『エステルの饗宴におけるアハシュエロス王とハマン』（1660年） 『聖マタイと天使』（1661年頃） 『クラウディウス・キウィリスの謀議』（1661年–1662年） 『詩を口述するホメロス』（1663年） 『ルクレティア』（1664年） 『運命を悟るハマン』（1665年頃） 『放蕩息子の帰還』（1668年）
肖像画	『笑う男』 (1629-1630年頃) 『テュルプ博士の解剖学講義』（1631年） 『読書をする老婦人』（1631年） 『ヤーコブ・デ・ヘイン3世の肖像』（1632年） 『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』（1632年） 『ヨハネス・ウーテンボハールトの肖像』（1633年） 『若きサスキアの肖像』（1633年） 『船大工とその妻』（1633年） 『アルカディアの衣装を着たサスキア』（1635年） 『ポーランドの貴族』（1637年） 『マリア・トリップの肖像』（1639年頃） 『額縁の中の少女』（1641年） 『メノー派説教師アンスロとその妻』 (1641年) 『夜警』（1642年） 『水浴する女』（1654年） 『デイマン博士の解剖学講義』（1656年） 『開かれた上扉による若い女性』 (1654-1657年) 『僧としてのレンブラントの息子ティトゥス』（1660年） 『二人のアフリカ人男性』 (1661年) 『布地商組合の見本調査官たち』（1662年） 『ヘラルト・デ・ライレッセの肖像』（1665年-1667年） 『ユダヤの花嫁』（1665年-1669年）
自画像	『アトリエの画家』（1628年） 『首当てをつけた自画像』（1629年頃） 『縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像』（1633年） 『34歳の自画像』（1640年） 『大きな自画像』 (1652年) 『金の鎖のネックレスとイヤリングをつけた毛皮の上着の自画像』（1655年） 『ベレー帽と立襟の自画像』（1659年） 『使徒パウロに扮した自画像』（1661年） 『ゼウクシスとしての自画像』（1668年頃） 『二つの円のある自画像』（1655年–1669年頃） 『63歳の自画像』（1669年）
風景画・動物画	『石橋のある風景』（1637年） 『アーチ型の橋のある風景』（1637年頃） 『善きサマリア人のいる風景』（1638年） 『城のある風景』（1640-1642年頃） 『風車』（1645年-1648年） 『屠殺された牛』（1655年）
主題	オランダ黄金時代の絵画 写実主義 キアロスクーロ
レンブラント 研究	鑑定 レンブラント・カタログ・レゾネ 主要な専門 家と学者 ケネス・クラーク サミュエル・ファン・ホーホストラーテン アルノルト・ホウブラーケン
関連人物	サスキア・ファン・オイレンブルフ (妻・モデル) ピーテル・ラストマン (師) ヤン・リーフェンス (同僚・友人)
主要な美術館 と展覧会	レンブラントの家 アムステルダム国立美術館 マウリッツハイス美術館 大英博物館 メトロポリタン美術館 フリック・コレクション
因んだ名前	レンブラント広場 レンブラントライティング
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