寺院の池とは? わかりやすく解説

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寺院の池

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/06 17:07 UTC 版)

カルナータカ州ハンピの寺院の池
カルナータカ州チッカバッラプール県のボーガ・ナンディーシュワラ寺院英語版カンナダ語版の寺院の池

寺院の池(じいんのいけ、: Temple tankテンプル・タンク)は、インドの寺院建築において寺院の敷地内または近隣に設けられる井戸や貯水池である。インド各地の言語や地域により、プシュカリニ(: पुष्करिणी, pushkarini)、カリヤニ(梵: कल्याणी, kalyani)、クンダ(梵: कुण्ड, kunda)、サロヴァラ(梵: सरोवर, sarovara)、ティールタ(梵: तीर्थ, tirtha)、タラブ(: तालाबウルドゥー語: تالابtalab)、プクリ(ベンガル語アッサム語: পুখুৰী, pukhuri)、アンバラクラム(タミル語: அம்பலகுளம், ambalakkuḷam)など様々な名称がある。一部の池は、沐浴することで病気や不調を癒すと信じられている[1]。これらの池は、インダス文明モヘンジョダロドーラヴィーラに見られる「大浴場」のような構造物の文化的残存物である可能性も指摘されている。中には、側面に多数の階段を備えた階段井戸形式のものも存在する[2]

池の設計

古代より、インドでは水の貯蔵設計が寺院建築において重要視されてきた。特に乾季と雨季が交互に訪れる西インドでは、水の管理が建築の一部として芸術的に発展した。寺院の池の設計は、独自の美術様式として確立されている[3]。その代表例として、ヴィジャヤナガラ英語版カンナダ語版ヒンディー語版帝国の首都遺跡(現カルナータカ州ハンピ周辺)にある王宮地区の「階段池」が挙げられる。幾何学的に精緻な構造を持ち、緑色の閃緑岩で縁取られている。排水口はなく、水路によって給水されていた[4]

これらの池は、宗教的な浄化儀式や寺院の奉納儀式に使用される。池の水は、聖なるガンジス川の水と同様に神聖視されている[5]

階段井戸

インドにおける階段井戸は、井戸の水面まで階段で降りることができる深い石造構造物である。西インドでは「ヴァヴ(グジャラート語: વાવ, vav)」、北インドでは「バオリ(: बावली, बावड़ी, baoli)」と呼ばれる[6]。王族によって建設されたものもあり、装飾が施された豪華な例も存在する。貴族によって建てられたものの中には、一般市民も利用可能な世俗的用途のものもあった[7]

ハリドラ・ナディ(ハリドラ川)

ハリドラ・ナディ

ハリドラ・ナディは、タミル・ナードゥ州ティルヴァールール県マナルグディ英語版ヒンディー語版タミル語版にあるラージャゴーパラ・スワーミー寺院英語版タミル語版の寺院の池であり、インド最大級の規模を誇る。面積は約23エーカー(約93,000平方メートル)に及ぶ。この聖なる池は「カーヴェリ川の娘」とも称され、聖河との精神的・文化的なつながりを象徴している[8]

ハリドラ・ナディに関連する重要な祭事として「テッポツァヴァム英語版タミル語版(浮舟祭)」があり、10日間にわたって盛大に祝われる。中でも「アーニ・ポウルナミ(満月の日)」は特に重要で、祭りの中で最大かつ最も華麗な浮舟行列が行われる。この日には、ラージャゴーパラ・スワーミーの神像が美しく装飾された浮舟に乗せられ、池の周囲を巡る。ヴェーダの詠唱、伝統音楽、数千人の信者によって、神秘的な宗教的雰囲気が醸し出される。

カリヤニ

カリヤニ(またはプシュカラニ)は、古代ヒンドゥー教における階段式の沐浴用井戸である。

これらの井戸は、祈りの前に沐浴や浄化を行うために寺院の近くに建設された。ガネーシャ・チャトゥルティ祭では、ガネーシャ像の水中への奉納にも使用される。

サロヴァル

シク教において、寺院の池は「サロヴァル(パンジャーブ語: ਸਰੋਵਰ, sarōvara)」と呼ばれる[9]

ギャラリー

出典

  1. ^ Sun Temples in India”. 2007年2月24日閲覧。
  2. ^ Shuichi Takezawa (August 2002). “Stepwells – Cosmology of Subterranean Architecture as seen in Adalaj”. Journal of Architecture and Building Science 117 (1492): 24. http://news-sv.aij.or.jp/jabs/s1/jabs0208-019.pdf 2009年11月18日閲覧。. 
  3. ^ Architecture - Stepwells”. 1999年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月9日閲覧。
  4. ^ Great Tank”. art-and-archaeology. 2007年1月13日閲覧。
  5. ^ Thapar, Binda (2004). Introduction to Indian Architecture. Singapore: Periplus Editions. pp. 43. ISBN 0-7946-0011-5 
  6. ^ Thapar, Binda (2004). Introduction to Indian Architecture. Singapore: Periplus Editions. pp. 43. ISBN 0-7946-0011-5 
  7. ^ Vav / vavdi / Baoli / Bavadi - Traditional stepwells”. 2006年12月19日閲覧。
  8. ^ “Haridra Nadhi” (英語), Simple English Wikipedia, the free encyclopedia, (2025-07-07), https://simple.wikipedia.org/w/index.php?title=Haridra_Nadhi&oldid=10377858 2025年7月7日閲覧。 
  9. ^ Harban Singh (1998). Encyclopedia of Sikhism. Punjabi University. pp. 71. ISBN 978-81-7380-530-1. http://www.advancedcentrepunjabi.org/eos/SAROVAR.html 

関連項目




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