オドノヴァン採集話
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 07:15 UTC 版)
「グラス・ガヴナン」の記事における「オドノヴァン採集話」の解説
こちらは別に採集された、粗筋がよく似た類話である。ガヴィダ、マク・サヴィン(マク・サウィン)、 マク・キニーリーという三兄弟が、ドニゴール県の沿岸に住んでおり、その海を隔てた向こうのトーリー島(英語版)には、相手を石化する目を前頭部と後頭部に持った恐ろしい盗人バロール(Balor)が住んでいた。三兄弟のうちガヴィダは鍛冶師で、「火の尾根」〔ドゥリム・ナ・テーネ〕に鍛冶場をかまえていた。 マク・キニーリー(キアンに相当)は地主で、グラス・ガヴレン(Glas Gaivlen)という、たいそう乳の出のいい牝牛を持っていた。バロールはドルイド僧から、孫に殺されるという運命の宣告を受ける。それが起こらぬよう、娘のエスネ (?)を塔に閉じ込める。先祖によって建てられたその塔は「大塔(Tor More)」という名の大岩の上にあり、到達困難であった。バロールは、ある日ついに宝の牛を奪いに上陸した。マク・キニーリーは鍛冶師の兄弟に用事があり、牛の手綱をもうひとりの兄弟に預けていた。バロールは牛を引いているその男に向かって「後の二人はお前の鋼を全部使って剣を自分たちのつくり、お前の剣は鉄で作ろうともくろんでるぞ」と嘘を吹き込み、その場を去らせた。兄弟らが気が付くと、バロールはすでに牛を奪って、島の海峡の半ばまで漕ぎ出していた。 マク・キニーリーには、山のビローグという女性の守護霊(リャナンシー)が憑いており、妖精女(バンシー)でもある彼女によれば、牛を取り戻すにはバロールをまず斃さねばならない。その手筈として、この妖精女は、嵐に乗せて島へと連れて行った。幽閉中の娘の世話役は十二人の侍女たちに限られており、塔は男人禁制だったため、妖精女は男を女装させて紛れ込ませた。男女は恋仲になり、三人の赤子が生まれてしまった。こちらの民話では牛が奪還されたか不明である。マク・キニーリーは、父親になったことが発覚しバロールに殺され、その血色が染みついた岩がいつまでも残った。三人の嬰児のうち、一人だけが救われて、鍛冶師ガヴィダの丁稚として育てられた。ある日、バロールがこの鍛冶場に槍を注文しに現れ、うっかり自分がマク・キニーリーを殺したことを自慢した。マク・キニーリーの遺児〇〇〇(名前は明かされないが、長腕のルーに相当する子)は、鍛冶作業にいそしむふりをしながら機をうかがい、赤熱した鉄棒をバロールの目に突き刺して敵討ちを果たした。
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