インドとヤシ酒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 04:58 UTC 版)
インドで、ヤシから採取した液体は、「Neera」とか「Padaneer」と呼ばれる。これは公社によって冷凍保存され備蓄される。その際、醗酵を防止するために、少量の石灰を添加している。インドでは、この液体には、沢山の栄養とカリウムが含まれていると言われている。 この液体は、採取後まもなく、空気中に浮遊している酵母によって醗酵が始まる。これだけ醗酵開始が早いのは、しばしば液体の採取に用いた容器に付着した酵母がいるためだともされる。無論、液体に酵母がそのまま利用できる糖分が含まれているから、つまり、醸造に際して糖化が不要だからでもある。こうしてできたほとんどエタノールを含まない飲料を「Neera」とか「Padaneer」と呼んでそのまま飲用する場合もあるが、これをさらに醗酵させて醸造酒とするのではなく、ここで酢酸醗酵させてしまうこともある。これは、そのような酸味のある飲料を好む者も存在するためである。 なお、インドの一部地域ではヤシから採取した液体を、粗糖を作るために、水分を蒸発させて濃縮するということをする場合もある。 さて、ヤシから採取した液体を十分に醗酵させて作ったのが、ヤシ酒の「kallu」である。この「kallu」は熟成などは行わず、醸造後すぐに飲んでしまう、保存の利かない酒でもある。「kallu」には、2つの主要なタイプが存在し、1つはシュロから作った「Thadi Kallu」、もう1つは4m50cm以下のナツメヤシから作った「Eetha Kallu」である。一般に、「Thadi Kallu」よりも「Eetha Kallu」の方が、アルコール度数が低い。この「Thadi Kallu」は料理酒としても使用され、コメで作った生地に混ぜることで、生地の醗酵と膨張を助けたりする効果がある。また、パンを柔らかくするためにも使用される。 なお、ヤシ酒に関する法律が未整備だった頃には、密造酒を作る酒造会社の中に、メタノールを混入するところもあり、中毒死などの重大な被害が発生したこともある。このようなこともあり、現在ではヤシ酒の販売などには免許が必要となっている。
※この「インドとヤシ酒」の解説は、「ヤシ酒」の解説の一部です。
「インドとヤシ酒」を含む「ヤシ酒」の記事については、「ヤシ酒」の概要を参照ください。
- インドとヤシ酒のページへのリンク