アメリカ合衆国での判決の要旨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/27 05:12 UTC 版)
「ショスタコーヴィチ対20世紀フォックス事件」の記事における「アメリカ合衆国での判決の要旨」の解説
このような事実関係の下、原告らは、名誉毀損、作曲家の著作者人格権の侵害などを理由とし、彼らの名前及び曲の使用の差止め等を求めて、映画を制作した20世紀フォックスを相手にアメリカ合衆国の州裁判所に提訴した。 二審のニューヨーク高位裁判所は、原告らの名前と曲の使用を禁じる旨の請求を認めなかった。まず、裁判所は、本件における曲の使用に伴う作曲家の名前の使用はニューヨーク州公民権法第51条による制限を受けないとした。ある作品について著作権が存在しない状況であれば、誰であっても、当該作品の作者の名前をその作品の複製、出版、又は編集にあたって使用することができるとされているためである。 さらに、名誉毀損の主張については、「名誉毀損的な事項の公表は差し止められるべきであるとしても、本件において作曲家らが何らかの形で誹謗中傷を受けたと認めるに足る事実・証拠はない。さらに、作曲者らが当該映画に参加したこと、又は当該映画に賛同もしくはこれを支持したことをうかがわせる事情は存在しておらず、また彼らの映画への賛同を「必然的に示唆し」ているとも認められない。そういった示唆自体がいかなる意味においても存在しないのであるから、パブリックドメインである本件作曲家の作品は、自由に出版、複製、編集され得るものである」としてこれを斥けた。 そして、作曲家の著作者人格権に基づきパブリックドメインとなった作品の使用をコントロールできるかという点については、次のように判示している。「パブリックドメインとなった作品に関しては、その著者の著作者人格権と、当該作品を使用することについての他者の確立された権利との間に抵触が生じる。そして、パブリックドメインである作品の使用が、その作者の著作者人格権侵害を構成するか否かの判断基準をいかに解すべきかという問題もまた生じてくる。……現状の我が国の法の下では、パブリックドメインである作品の著作者人格権というものの存在自体が明確ではなく、他者の権利との関連におけるその相対的な位置づけはなされておらず、また、それに対する適切な救済の性質は定められていない。」その上で、パブリックドメインの著作者人格権といった理論に基づくドラスティックな救済は与えるべきではないとしてその主張を排斥し、原告らの請求を棄却した。 なお、本件から50年以上後の2003年、ダスター社対20世紀フォックス社事件(英語版)において、本件同様パブリックドメインの作品に係る知的財産権に関する問題が論点として争われている。
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