せり上がりの意味づけの誤り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 09:44 UTC 版)
「横綱土俵入り」の記事における「せり上がりの意味づけの誤り」の解説
雲龍型は攻守兼備、不知火型は激しい攻撃を表すという説が巷間信じられているが、この説に明確な根拠はない。これは10代秀ノ山(元関脇・笠置山勝一)が、昭和初期に北京での皇軍慰問の巡業中、双葉山定次と羽黒山政司の型の違いについて説明を求められたとき、戦時中に相応しい返答をしたものが、後に彦山光三によってもっともらしく広められたものである。池田雅雄は、こうして流布された経緯から「不知火=攻撃型」という虚説を鵜飲みにしてメディアに書くのはナンセンスだと指摘している。また池田は、現役時代の吉葉山に「ワシの不知火型は、攻撃ばかりで邪道だと彦山(光三)氏が言うが、本当か?」と心配げに質問されたことがあり、そのいわれはまったくタワイのないことから出たのだと、秀ノ山の話を伝えて「邪道でない」と説明し、安心させたことを明かしている。 実際、こうした流布が戦後そのまま定着しており、マスコミにおいても特に不知火型の横綱が誕生するたび、雲龍型との差異を解説する意味でこうした報道がされる傾向にある。「せり上がりの違いで、雲龍型は左ワキ腹に手を当てて守りを、右手を広げることで攻めを表し、不知火型は両手を広げることで激しい攻撃を表す」といった紋切り型の説明がなされることが多い。たびたび専門誌ではこの誤りを指摘することがあるものの、2017年に雲龍型である稀勢の里が昇進した際にも報道においてこの種の説明がされており、虚説の流布に一役買っているのが実態である。
※この「せり上がりの意味づけの誤り」の解説は、「横綱土俵入り」の解説の一部です。
「せり上がりの意味づけの誤り」を含む「横綱土俵入り」の記事については、「横綱土俵入り」の概要を参照ください。
- せり上がりの意味づけの誤りのページへのリンク