『フォンティーヌブローでの王子の誕生』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『フォンティーヌブローでの王子の誕生』」の解説
『フォンティーヌブローでの王子の誕生』には、マリーが生んだ最初の王子であるルイ(後のフランス王ルイ13世)の誕生が描かれている。ルーベンスはこの情景を政治的安定を主題として描き上げた。最初に正嫡の男児が生まれたことは、将来にわたってフランス王として君臨する世継ぎの誕生を意味していた。当時の王侯君主は世継ぎをもうけることが最重要視されており、とくに庶子しかいなかったアンリ4世の場合には、正嫡の世継ぎをもうけることができなければ、男性としての機能を疑問視される可能性もあった。 フランスで王位相続者の称号であるドーファン (Dauphin) はイルカを意味する。当時、多くの愛人と庶子の存在が、アンリ4世の正統な王位相続者を定める妨げとなっていたため、宮廷芸術家には宮廷内外に王室の正当性を広める戦略家としての役割も期待されていた。ユノとして描かれたマリーと、結婚に満足しているユピテルとして描かれたアンリ4世の肖像も、このような戦略の一環だった。知恵と戦の神ミネルヴァとして描かれたマリーは、夫アンリ4世と自身の軍事的才能を意味している。フランドル人画家の作品によく見られるように、フランドル出身のルーベンスも結婚を表現した作品に、貞節を象徴する犬を描き入れている。さらに政治的安定を象徴する神として、正義を司るユースティティア(ギリシア神話のアストライア)を描いた。悪行がはびこる地上に絶望して天界に帰ったとされるユースティティアの地上への帰還は、未来のフランス王のもとで正義が履行されていくことの象徴となっている。幼いルイ13世は秩序の神テミスにあやされており、ルイ13世が将来のフランス王として即位することを示している。ルイ13世のすぐそばに描かれている蛇は不死(健康)の象徴である。ルーベンスは伝統的に豊穣を意味するヤギの角に加えて、今後次々に誕生するマリーの子供たちを果物の中に描き入れている。マリーは愛情のこもった眼差しで我が子を見つめ、繁殖の神がマリーの腕にヤギの角を押し当てている。これらは完全で恩寵に満ちた家族ができることを表している。
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