「本格派探偵小説家」として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 13:44 UTC 版)
「濱尾四郎」の記事における「「本格派探偵小説家」として」の解説
日本の探偵小説界でも珍しい、上流階級の司法専門家であり、その法律知識を活かした質の高い本格探偵小説作品をものしたことで知られる。 浜尾は短編ではその多くでテーマとして「人が人を裁くことの限界」を真摯に考察しており、優れた作品を残した。特に、天一坊事件を裁くことになった大岡越前守の立場から、裁く者の限界を厳しく突いた短編『殺された天一坊』(1929年)は、戦前日本の探偵小説の中でも屈指の秀作に挙げられている。 浜尾は「本格探偵小説の独自性」として、 犯罪の発見 被疑者の拘引(この被疑者は必ずしも1人とは限らない) 名探偵の登場 非常に論理的な推理に基づく捜査開始 最後にその結果として真犯人暴露(逮捕とは記さず。必ずしも真犯人は捕まらず、自殺する場合があるから) と定義づけ、「多少のヴァリエションはあっても、真の探偵小説はこの公式を出ない、否出られない」とした。 浜尾の持論はS.S.ヴァン・ダインの『ベンスン殺人事件』に出会うことで確固たるものとなった。浜尾は「寔にドイル、ヴァン・ダインの二人は群れをなす探偵小説作家をはるかに抜くアルペンである」とし、ヴァン・ダインの「無類な理智的小説」を称揚、「私の如きは一生の中、ヴァン・ダインの諸作の一つに比すべきものを一つ書いてもそれでもういいと思っている」と述べるほどの心酔ぶりだった。 ヴァン・ダインに触発された浜尾の長編本格探偵小説執筆の念願は、1931年に発表した『殺人鬼』でついにかなった。「元・東京地方裁判所の鬼検事」の私立探偵・藤枝真太郎がもう一人の名探偵・林田英三と鎬を削って推理闘争を繰り広げるこの作品は評判となり、以後、大衆の求めに応じて活劇調の通俗探偵小説が氾濫する傾向にあった昭和初期の時代に、論理的な本格探偵小説を追求した先駆者として、後世から評価される存在となった。
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