「従属的な技術」としての「弁論術/戦争術/裁判術」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 06:07 UTC 版)
「政治家 (対話篇)」の記事における「「従属的な技術」としての「弁論術/戦争術/裁判術」」の解説
しかし客人は、なおも「王者」の傍に密着する「近親的な存在」がいるので、ちょうど「黄金を洗練する作業」と同じように、「王者(金)」と「それら(銀/銅/鉄鋼)」を分離する作業をする必要があると、指摘する。 そして客人は、その「銀/銅/鉄鋼」類に相当する「技術」として、 「弁論術」 「戦争術」 「裁判術」 の3つを挙げる。(なお、ここで言う「弁論術」(レートリケー)とは、(ソフィスト等が私利私欲のために各種の用途で用いるそれではなく)あくまでも「王者の知識/技術」と協力しながら、「正義を実行」するように「国民を説得・指導」するものに限られるとも付言される。) そして客人は、「知識/技術」を、 「楽器演奏術」のような、「直接的/熟練的」な「知識/技術」。 「学習の是非」を吟味し、「判断/決定」を下す類の(メタ的な)「知識/技術」。 の2つに分けることができるが、その両者の「支配-被支配」の関係を問うと、ソクラテスは、後者の「知識/技術」が、前者の「知識/技術」を支配すべきだと答える。 すると客人は、 「説得する能力」を授ける「知識/技術」。(「弁論術」) 「説得の是非」を決定する「知識/技術」。(「王者/政治家の知識/技術」) の「支配-被支配」関係も、同様になるのではないかと指摘する。ソクラテスも同意する。 こうしてまず「弁論術」は、「王者/政治家の知識/技術」の下位にあって、これに奉仕する「技術」であることが確認された。 続いて、 「戦争する能力」を授ける「知識/技術」。(「(将軍が身につけるべき)戦争術」) 「戦争・友好関係の是非」を決定する「知識/技術」。(「王者/政治家の知識/技術」) に関しても同様に、「戦争術」が、「王者/政治家の知識/技術」の下位にあって、これに奉仕する「技術」であることが確認される。 そして最後に、 「法律」を参照し裁定する「知識/技術」。(「(裁判官が身につけるべき)裁判術」) 「法律」を作製(立法)する「知識/技術」。(「王者/政治家(立法者)の知識/技術」) に関しても同様に、「裁判術」が、「王者/政治家の知識/技術」の下位にあって、これに奉仕する「技術」であることが確認される。 こうして客人は、「弁論術」「戦争術」「裁判術」の3つの「知識/技術」は、「国家(ポリス)の全体を配慮し、それを完璧にまとまった一枚の織物のように織り上げていく知識/技術」としての「王者/政治家の知識/技術(ポリティケー)」とは異なると同時に、その下位において支配され、その決定(政策)をそれぞれの分野で実行するだけのものであると指摘する。ソクラテスも同意する。
※この「「従属的な技術」としての「弁論術/戦争術/裁判術」」の解説は、「政治家 (対話篇)」の解説の一部です。
「「従属的な技術」としての「弁論術/戦争術/裁判術」」を含む「政治家 (対話篇)」の記事については、「政治家 (対話篇)」の概要を参照ください。
- 「従属的な技術」としての「弁論術/戦争術/裁判術」のページへのリンク