軍隊の階級 軍隊の階級の概要

軍隊の階級

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 09:18 UTC 版)

軍事組織は、世界的に階級が制度化されている。後述のように、社会主義国の軍隊に於いて、階級制度が廃止されることもあったが、後に復活している。

ヨーロッパ諸国の陸海軍においては、職名が階級化していったという歴史的経緯から、軍種によって階級名が大きく異なる。

日本陸軍および旧日本海軍では、階級を上がることを「進級」(しんきゅう)といい、階級が下がることを「降等」(こうとう)という。一方、現在の自衛隊[注 1]陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊)では「昇任」(しょうにん)及び「降任」(こうにん)といい[2]予備自衛官(他国の軍隊における予備役)等の階級が上がる場合は「昇進」(しょうしん)という[3]


元帥

  1. ^ 旧日本軍の「元帥」は、階級ではなく、陸海軍大将のうち特に功績のあった者で、元帥府に列せられた大将に親授された称号。
  2. ^ 韓国軍の원수(元帥)は、名誉昇任の階級。
  3. ^ a b 朝鮮人民軍の조선민주주의인민공화국대원수(朝鮮民主主義人民共和国大元帥)は金日成・金正日のみが、조선민주주의인민공화국원수(朝鮮民主主義人民共和国元帥)は金正恩のみが保持。
  4. ^ 中華民国軍の特級上將は2000年に廃止された。
  5. ^ a b c 中国人民解放軍の一级上将(一級上将)は1994年に廃止された。また、かつて中华人民共和国大元帅(中華人民共和国大元帥)と中华人民共和国元帅(中華人民共和国元帥)があったが、文化大革命前の1965年に廃止。
  6. ^ a b c 帝政ドイツ軍には平時の名誉階級として元帥位を帯びた上級大将 (Generaloberst mit dem Rang eines Generalfeldmarschalls / Generaloberst mit dem Rang als Generalfeldmarschall) があった。また、ヒトラーは1940年にゲーリングに元帥位 (Generalfeldmarschall) より上位の国家元帥位 (Reichsfeldmarschall) を与えた。
  7. ^ a b フランス軍の Maréchal de France 及び Amiral de France は、階級ではなく称号。
  8. ^ a b c イギリス軍の Admiral of the FleetField Marshal 及び Marshal of the Royal Air Force は、戦時または名誉昇任の階級。
  9. ^ a b c イタリア軍の GeneraleAmmiraglioは、国防参謀総長就任者の名誉昇任階級。
  10. ^ a b c d e アメリカ軍の General of the ArmyFleet Admiral 及び General of the Air Force は、戦時のみの階級。海兵隊には元帥位は存在しない。また General of the Armies of the United States 及び Admiral of the Navy は名誉階級。
  11. ^ 満洲国軍の「將軍」は、階級ではなく、陸海軍上將のうち特に功績のあった者で、將軍府に列せられた上將に勅授された称号。

将官

  1. ^ 大尉の読みは「タイイ」だが、海軍の電信では「ダイイ」と標記する場合がある。
  2. ^ a b c d e f g h i 自衛官の階級の英語表記は、日本政府が対外的に紹介する際に便宜的に用いているものの一例。
  3. ^ 中国人民解放軍にはかつて大尉の階級が上尉の上にあったが、1965年に廃止。
  4. ^ a b c 帝政ドイツ陸軍、ドイツ国防軍陸軍及びオーストリア・ハンガリー帝国陸軍の Hauptmann は騎兵や砲兵のような騎乗兵科では Rittmeister
  5. ^ a b ドイツ連邦軍の Stabshauptmann、及び Stabskapitänleutnant は1993年に新設された技術部の階級で、兵科将校の階級ではない。
  6. ^ a b c d e ロシア軍の少尉はかつてソ連軍時代は「中尉」、同じく中尉は「上級中尉」と日本語訳される事が多くあった。

注釈

  1. ^ 日本自衛隊は、国内法的には軍隊ではないとされる。
  2. ^ 職員令では兵部省の官職とは異なり海陸軍の大将・中将・少将については職掌を規定していない[4]
  3. ^ 法令全書では布達ではなく「沙汰」としている。また、官位相当だけを定めており職掌の規定はない[6] [7]。なお、第604号はいわゆる法令番号ではなく法令全書の編纂者が整理番号として付与した番号である[8]
  4. ^ 1870年6月1日(明治3年5月3日)には、横須賀・長崎・横浜製鉄場総管細大事務委任を命ぜられた民部権大丞の山尾庸三に対して、思し召しにより海軍はイギリス式によって興すように指示している[9]
  5. ^ 1870年10月26日(明治3年10月2日)に海軍はイギリス[注 4]、陸軍はフランス式を斟酌して常備兵を編制する方針が示されている[10]
  6. ^ 陸軍武官の制度については兵部省設置以来数回の変更があって明治5年に陸軍省が置かれた後に明治6年5月に至ってようやく完備したものである[12]
  7. ^ 明治5年1月に海軍省が定めた外国と国内の海軍武官の呼称によると、アドミラル・ゼ・フリートを元帥に、アドミラルを大将に、ワイス・アドミラルを中将に、リール・アドミラルを少将に、シニヲル・ケプテインを大佐に、ジューニヲル・ケプテインを中佐に、コマンドルを少佐に、シニヲル・リューテナントを大尉に、ジューニヲル・リューテナントを中尉に、ソブリューテナントを少尉に、ウオルラント・ヲフヰサルを曹長に、ミットシップメンを少尉試補に、チーフ・ペッチー・ヲフヰサルを権曹長に、ペッチー・ヲフヰサル・フィルスト・クラスを一等軍曹に、ペッチー・ヲフヰサル・セコンド・クラスを二等軍曹に、ペッチー・ヲフヰサル・ソルド・クラスを三等軍曹に、リーヂング・シーメンを一等伍長に、ヱーブル・シーメンを二等伍長に、ヲルジナリー・シーメンを一等水夫に、ヲルジナリー・シーメン・セコンド・クラスを二等水夫に対応させている[13]
  8. ^ 荒木肇は、律令制の官職名が有名無実となっていたことを踏まえて、名と実を一致させる。軍人は中央政府に直属させる。などの意味合いから近衛府から将官、衛門府・兵衛府から佐官・尉官、鎮守府から軍曹の官名を採用したのではないかと推測している[14]
  9. ^ 大宝律令養老律令には衛門府・衛士府・兵衛府に関する定めがあるが[15] [16] [17]、近衛府と鎮守府については官員令や職員令に定めがない令外官である[18] [19]
  10. ^ 元帥、中将、大尉、中尉、少尉は古代中国でも見られる官職名であるが、新式軍隊の階級として使用したのは中国の用例と比べて日本がそれより早いことから、日本が先に新義語として転用した可能性が高いと推測される。 大将は古代中国でも見られる官職名であるが、近代軍隊の階級名としては日本によって転用され、後に中国へも流入したものと思われる。 少将、大佐、中佐、少佐は中国の古典語には存在せず清末以前の文献からも見つけられないため、日本語による造語である可能性が高いと推測される。 曹長は中国古代の官職名として用例が存在するが、日本語の場合では漢籍からの借用語であるかは不明である。近代軍隊の階級名としては下士官の最上位の階級で軍曹の上であるため、軍曹の長の意味から取った可能性もあると考えられる。 軍曹、伍長、兵曹は古代中国でも見られる官職名から起用したものであるが、日中両言語における同義部分がある他に日本語の場合はさらに独自の意味を持ち新式軍隊の階級として使用している。しかしこの語義は現代中国語には還流できず、あるいは還流できたとしても最終的に定着しなかったと考えられる[20]
  11. ^ 提督はもとはアメリカ海軍Commodoreの訳。現在は代将と訳される。
  12. ^ a b c d e f g キリル文字のラテン翻字には多数の方式、表記があり、ここにあげたものは一例である。

出典

  1. ^ Oxford Dictionaries”. Oxford University Press. 2013年1月15日閲覧。
  2. ^ 自衛隊法 | e-Gov法令検索”. elaws.e-gov.go.jp. 2022年5月22日閲覧。
  3. ^ 自衛隊法 | e-Gov法令検索”. elaws.e-gov.go.jp. 2022年5月22日閲覧。
  4. ^ 「官制改定職員令ヲ頒ツ」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15070094400、太政類典・第一編・慶応三年~明治四年・第十五巻・官制・文官職制一(国立公文書館)(第10画像目)
  5. ^  太政官『海陸軍大中少佐及尉官及陸軍曹長權曹長ヲ置ク』。ウィキソースより閲覧。 
  6. ^ 内閣官報局 編「第604号海陸軍大中少佐及尉官及陸軍曹長權曹長ヲ置ク(9月18日)(沙)(太政官)」『法令全書』 明治3年、内閣官報局、東京、1912年、357頁。NDLJP:787950/211 
  7. ^ 「御沙汰書 9月 官位相当表の件御達」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C09090037000、公文類纂 明治3年 巻1 本省公文 制度部 職官部(防衛省防衛研究所)
  8. ^ 国立国会図書館 (2019年). “7. 法令の種別、法令番号” (html). 日本法令索引〔明治前期編〕. ヘルプ(使い方ガイド). 国立国会図書館. 2023年12月2日閲覧。
  9. ^ 「海軍ハ英式ニ依テ興スヘキヲ山尾民部権大丞ニ令ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15070892000、太政類典・第一編・慶応三年~明治四年・第百十四巻・兵制・雑(国立公文書館)
  10. ^ 「常備兵員海軍ハ英式陸軍ハ仏式ヲ斟酌シ之ヲ編制ス因テ各藩ノ兵モ陸軍ハ仏式ニ基キ漸次改正編制セシム」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15070892100、太政類典・第一編・慶応三年~明治四年・第百十四巻・兵制・雑(国立公文書館)
  11. ^ 内閣官報局 編「第154号陸海軍武官官等表改定(5月8日)(布)」『法令全書』 明治6年、内閣官報局、東京、1912年、200−201頁。NDLJP:787953/175 
  12. ^ 「明治ノ初年各種ノ名義ヲ以テ軍隊官衙等ニ奉職セシ者軍人トシテ恩給年ニ算入方」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15112559500、公文類聚・第十六編・明治二十五年・第四十二巻・賞恤・褒賞・恩給・賑恤(国立公文書館)(第11画像目から第13画像目まで)
  13. ^ 「海軍武官彼我ノ称呼ヲ定ム」国立公文書館、請求番号:太00432100、件名番号:003、太政類典・第二編・明治四年~明治十年・第二百十巻・兵制九・武官職制九
  14. ^ 荒木肇陸軍史の窓から(第1回)「階級呼称のルーツ」」(pdf)『偕行』第853号、偕行社、東京、2022年5月、2023年12月2日閲覧 
  15. ^ MinShig (2000年3月26日). “衛門府条”. 官制大観 律令官制下の官職に関わるリファレンス Ver.0.8. 現代語訳「養老律令」. 2023年11月5日閲覧。
  16. ^ MinShig (2000年3月26日). “左衛士府条”. 官制大観 律令官制下の官職に関わるリファレンス Ver.0.8. 現代語訳「養老律令」. 2023年11月5日閲覧。
  17. ^ MinShig (2000年3月26日). “左兵衛府条”. 官制大観 律令官制下の官職に関わるリファレンス Ver.0.8. 現代語訳「養老律令」. 2023年11月5日閲覧。
  18. ^ MinShig (1997年7月11日). “左右近衛府”. 官制大観 律令官制下の官職に関わるリファレンス Ver.0.8. 官職. 2023年11月12日閲覧。
  19. ^ MinShig (1997年7月16日). “府の四部官(四等官・四分官)とその官位相当”. 官制大観 律令官制下の官職に関わるリファレンス Ver.0.8. 官職. 2023年11月5日閲覧。
  20. ^ 仇子揚『近代日中軍事用語の変容と交流の研究』(pdf)2019年9月20日、83-85,88-89,95-96,98,101,102,107-108,附録6,附録10,附録16,附録17,附録44,附録65,附録76,附録86,附録94頁。doi:10.32286/00019167hdl:10112/00019167https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/record/15107/files/KU-0010-20190920-03.pdf2023年11月12日閲覧 
  21. ^ Almanach Hachette 1917年度版、82頁。日本陸軍階級チャート。
  22. ^ a b 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)別表第2”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2017年4月1日). 2020年1月19日閲覧。
  23. ^ a b 防衛人事審議会議事録(平成16年1月22日)防衛省WARP


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