神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 04:38 UTC 版)
語源
「神」という字は古代中国で生まれ、元来は道教、儒教、古代中国思想に由来しているが、日本においては長らく神道における神を指す言葉であった。近世以降にキリスト教や西洋思想が伝来すると、古代ギリシア語: Θεός テオスまたは古代ギリシア語: Ζεύς ゼウス、ラテン語: deus, Deus デウス、ドイツ語: Gott, 英語: god, Godなどにあたる外来語の訳語としても用いられるようになった。これらの意味と日本語における「神」は厳密には意味が異なるとされる。詳細は下記を参照。また、英語において、多神教の神々は"God"ではなく、頭文字を小文字にして"god"、複数形:gods、もしくは"deity"、複数形:deitiesと区別する。
概説
百科事典類の記述を紹介すると、『ブリタニカ国際大百科事典』では「宗教信仰の対象。」と説明されている[3]。そして、一般に絶対的、超越的な存在とされる、と指摘[3]。また、原始信仰では人間を超えた力と考えられていて、高度な宗教では超越的な力を有する人格的存在とされることが一般的、としている[3]。
『広辞苑』の第7版では6項目に分けて説明しており、一つ目は「人間を超越した威力を持つ、かくれた存在。人知ではかることのできない能力を持ち、人類に禍福を降すと考えられる威霊。」を挙げている。つづいていくつか日本の伝統での神を中心に説明しており、天皇の呼称のひとつとしての「神」にも触れ、6項目目に「キリスト教やイスラム教などの一神教で、宇宙と人類を創造して世界の運行を司る、全知全能の絶対者。」を挙げている。
『大辞泉』では、様々な概念に用いられる語彙、とし、「人知を超えた絶対的存在」(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教など)、「アニミズム的発想で自然界の万物を擬人化(神格化)した存在」、「神社に祭られている生前優れた業績で名を馳せた人物や祖先」、「天皇への尊称」、「優れた能力を発揮する人物、非常にありがたい人やもの」とした[4]。
どのような神を崇拝・信仰するかということによって、多神教、単一神教、一神教、等々の形が生まれる[3]。
神に対する人間の態度は、一般に「信仰」や「信心」と呼ばれている[3]。『ブリタニカ百科事典』によると、神学は信仰を理性的に理解しようとする試みである[3]。そして、近年では合理性をこえた原初の信仰を復興させる動きもあるという[3]。
漢字としての「神」には、「不可知な自然の力」「不思議な力」「目に見えぬ心の働き」「ずば抜けて優れたさま」「かみ」といった意味が含まれる[5]。
「神」は古代ギリシア語の"Θεός" テオスや英語の"God"の訳語としても使われている。このように「神」の字で、「神」と訳されることになった、もともと日本語以外の言語で呼ばれていたものごとまで含みうるわけなので、その指し示す内容は多岐にわたっている。(なお、キリスト教における"Θεός"や"God"を、中国語や日本語に翻訳する際に、「神」という字をあてることの是非について19世紀から議論がある(後述)。ただしキリスト教化される以前の古代ギリシャ時代の"Θεός"にも、訳語として「神」は用いられている。)
漢字の「神」
字源
漢語の「神」という単語は、甲骨文字では仮借によって「申」という文字で表記されていた。後にこの文字に、区別のため意符「示」が加えられたことで、「神」の字の旧字体である「神」という文字が作られた[6]。
初出
「神」の文字が初めて確認できるのは、西周早期に作られた青銅器「寧簋」の銘文(金文)である[7]。
- ^ "神". ブリタニカ国際大百科事典. コトバンクより2020年12月8日閲覧。
- ^ "神". デジタル大辞泉. コトバンクより2020年12月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g ブリタニカ国際大百科事典【神】
- ^ 小学館『大辞泉』編集部/ 編『大辞泉』(増補・新装版)小学館、1998年11月20日、548-549頁。ISBN 978-4-09-501212-4。
- ^ 引用元・出典:『漢字源』961頁、学研、1996年4月1日改訂新版第3刷
- ^ 張世超; 孫凌安; 金国泰; 馬如森 (1996), 金文形義通解, 京都: 中文出版社, pp. 21–22, ISBN 7-300-01759-2
- ^ 張桂光 (2014), 商周金文辭類纂, 北京: 中華書局, pp. 33–34, ISBN 978-7-101-10010-5
- ^ 春秋左氏伝‐荘公三十二年 中国哲学書電子化計画
- ^ 島田鈞一「一九 有神降于莘 莊公三十二年」『春秋左氏伝新講』有精堂出版部、1937年、60-61頁。NDLJP:1120963/38。
- ^ 博文館 著、博文館編輯局 編『春秋左氏伝』 第1巻、博文館、東京〈博文館文庫 第2部〉、1941年、114頁。NDLJP:1111785/65。
- ^ Preston Hunter, Major Religions of the World Ranked by Number of Adherents
- ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 1
- ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 2
- ^ a b ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 3
- ^ a b ヘブライ語対訳英語聖書 Deuteronomy 10:9
- ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 3:20
- ^ カトリック教会からの出典:教皇ベネディクト十六世の2006年6月11日の「お告げの祈り」のことば
- ^ 聖公会からの出典:英国聖公会の39箇条(聖公会大綱)一1563年制定一
- ^ ルーテル教会からの出典:私たちルーテル教会の信仰
- ^ 改革派教会からの出典:ウェストミンスター信仰基準
- ^ バプテストからの出典:Of God and of the Holy Trinity.
- ^ メソジストからの参照:フスト・ゴンサレス 著、鈴木浩 訳『キリスト教神学基本用語集』p103 - p105, 教文館 (2010/11)、ISBN 9784764240353
- ^ 正教会からの出典:信仰-信経:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
- ^ 東方諸教会からの出典:信仰と教義(シリア正教会)
- ^ 正教会からの参照:Jesus Christ, Son of God, Incarnation(アメリカ正教会)
- ^ カトリック教会からの参照:Christology(カトリック百科事典)
- ^ 聖公会からの参照:英国聖公会の39箇条(聖公会大綱) 1563年制定(ただしこの「39カ条」は現代の聖公会では絶対視はされていない)。
- ^ ルーテル教会からの参照:Christ Jesus.(Edited by: Erwin L. Lueker, Luther Poellot, Paul Jackson)
- ^ 改革派教会からの参照:ウェストミンスター信仰基準
- ^ バプテストからの参照:Of God and of the Holy Trinity., Of Christ the Mediator. (いずれもThe 1677/89 London Baptist Confession of Faith)
- ^ メソジストからの参照:フスト・ゴンサレス 著、鈴木浩 訳『キリスト教神学基本用語集』pp.73-75, 教文館、2010年11月、ISBN 9784764240353
- ^ 高島俊男『お言葉ですが…』 11巻、連合出版、2006年11月。ISBN 978-4-89772-214-6。 [要ページ番号]
- ^ 鈴木範久『聖書の日本語 - 翻訳の歴史』岩波書店、2006年2月。ISBN 978-4-00-023664-5。[要ページ番号]
- ^ a b 『ゴッドと上帝』、pp. 120-131。
- ^ 『ゴッドと上帝』、pp. 160-162。
- ^ 『ゴッドと上帝』、p. 122。
- ^ “道教神仙分类 - 武当山道教协会”. www.wdsdjxh.com. 2024年1月29日閲覧。
- ^ a b P.R.ハーツ『道教』<世界の宗教> 鈴木博訳 青土社 1994年、ISBN 4791753003 pp.12-23.
- ^ 村上陽一郎『奇跡を考える』岩波書店、pp.133-138
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