壁 壁の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 07:18 UTC 版)

白い壁と、その前に立つ人
部屋の内壁

概説

室内と外界との境にある壁を外壁(がいへき)と言う[2]。建物の中の各室あるいは部屋廊下などの間を仕切る壁は内壁(ないへき)や間仕切り壁(まじきりかべ)と呼ばれている[2]

日本語の「壁」は狭義には建造物を構成する外壁や内部を間仕切る内壁のみを指すが、広義には屋外で領域を区切るための「」と同義で使われることも多い。塀とほぼ同じ意味の「」は近年では「石垣」や「生け垣」など、もっぱら限定された意味で用いられる。区画を仕切る物としては、他に「」があるが、これは木製(近年は金属製なども)の柱を複数本立て、(ぬき)を通して往来を遮断する物をいう。ただし、最近は有刺鉄線を使った物などものなども柵というが、基本的にはお互いがすき間から確認できるような物に対して使われ、表面が塗り固められている物には「壁」や「塀」を用いるのが一般的である。古語では家屋の内外壁を「かへ(処重)」、屋外を仕切る物は一般に「き(柵、垣、城)」と呼ばれたようであり、塀(ヘイ)や柵(サク)の語は大陸伝来の漢語である。

侵食で硬い地盤のみが残存するなどの理由で、天然のほぼ垂直な壁が出来ることもある。天然の壁はしばしばを伴う。

機能

壁には建物を支える構造体となっているものと、そうでないものがある。前者は「耐力壁(bearing wall. ベアリングウォール)」、後者は「帳壁」「非耐力壁」(curtain wall. カーテンウォール)と呼ばれる。

パリのノートルダム大聖堂。壁が屋根を支えている。この大聖堂では、壁をさらに外側から支える飛び梁がある。

欧米の建築では、伝統的に、外壁が石壁・レンガ壁などでできていて、壁が建築物の基本の構造体となっており、壁が屋根を支えている。つまり、西欧の伝統的な建築物の壁は「耐力壁(bearing wall ベアリングウォール)」である。しかし、鉄骨造建築の出現以降は、欧米においても非耐力壁構造が増えており、特に高層建築物に多く用いられている。

日本の木造住宅(民家)では、が建物の基本構造体になっており、壁というのは柱の間にはめこまれているだけで、屋根を支えているわけではない[2]日本建築では、非耐力壁が多く使われてきたわけである。

洋風の住宅などで、柱を内装・外装で包み、柱を見せない様式を「大壁造」(おおかべづくり)と言う[2]。 木造の家で、柱と柱の間に壁をはめこんで柱が外部から見える様式を「真壁造」(しんかべづくり)と言う[2]

外壁の機能・役目には、室内を外界から守る、ということがあり、断熱性・遮音性・水密性・気密性・防火性・耐衝撃性・耐候性などが求められる[2]。内壁のほうの機能・役割としては、遮音性・防水性・防汚性に加えて、視覚的に美しいこと、触れた感触も良いことなど、感覚的な性質も大切である[2]

さまざまな機能を持った壁があり、遮音性を特に高めた「防音壁」、音の反響を防ぐ「吸音壁」、火事の際に延焼を防ぐ「防火壁」、放射線が漏れるのを防ぐ「放射線遮蔽壁」、「収納する」機能と「部屋を仕切る」機能が融合した「収納壁」、開閉可能な「可動式間仕切り壁」などがある。その他にも様々な役割を持つ壁がある。たとえば岸壁は船舶が接岸する場所を確保するために、垂直の壁で陸地の土砂を支えるのが目的である。また擁壁切通し盛土法面崩落を防ぐために設けられるものである。

また、の周囲に防御機能を持つ城壁が建設されてきた。二つの地域を隔てて、国境線の管理や、特定の人々・文化の隔離を目的に建設された分離壁もある。(イスラエル西岸地区の分離壁ベルリンの壁等)  

材料

石壁(マチュ・ピチュ切石積み

日本と壁

漆喰壁(今西家住宅
漆喰壁の断面

壁材として、伝統的には、日本では内壁には土壁漆喰などが用いられてきた。 外壁としては板壁、、土壁、漆喰など。

明治、大正時代は、土壁・漆喰・板・石に加えて煉瓦が用いられるようになった。

第二次世界大戦後は、土壁・漆喰・板・石・煉瓦に加えてコンクリート石膏ボードなどが用いられている。

洋風建築の普及に伴い、断熱材等の開発が行われている。防音目的でグラスウール(近年では断熱も兼ねて被覆されたもの)が用いられる場合もある。

屋外ではコンクリートやトタンの上に塗装を行ったりして装飾される。また、石膏ボードの場合にはそれ自体にプラスチック又はアルミニウムなどの板により装飾がされているものもあり、その場合外壁材として直に張られる。

室内は塗料壁紙などで装飾される。床から1メートルほどの高さまでは汚れたり傷んだりしやすいため、この部分だけ補強を兼ねて板やタイルで装飾されることもある。この部分、あるいはこのような装飾を腰壁という。

崖などに於ける壁材はコンクリートの他に硬化プラスチック製の物がある。主に風化や波による浸食で崩落した場合の景観復元のために用いられている。

また、次世代の壁として愛知万博のパビリオンの様に水のカーテンを壁としている場合もある。


  1. ^ 広辞苑【壁】
  2. ^ a b c d e f g h ブリタニカ百科事典【壁】






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