メバチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 00:59 UTC 版)
形態
成魚は全長250 cm、体重210 kgに達し、マグロ属8種の中ではミナミマグロ、キハダと並ぶ中型種である。ただし、日本近海産は熱帯産より小型で、2 m以上の個体は少ない。体は太い紡錘形で、マグロの中では最も体高が高く、ずんぐりした体型をしている。
また目が大きいのも特徴で、和名「メバチ」や英名"Bigeye tuna"もここに由来する。胸鰭(むなびれ)はクロマグロより長いが、ビンナガほどではない。体色は背中が藍色、体側から腹面が銀白色をしている。若魚は成魚よりも体が前後に細長く、体側に白い数本の横縞模様があり、キハダの若魚に似る。
生態
全世界の熱帯・温帯海域に広く分布し、赤道から南北に緯度35度の範囲に多く生息する。ただし地中海には分布しないことが知られ、日本沿岸でも日本海には入らない。
暖かい海域の中層に生息し、群れで回遊する。日中は他のマグロより深い層を泳ぎ、水深300 mの深海にも達するが、夜は表層に現れる。小魚類やイカを常食とする。
寿命は15年以上と推定されている。
利用
身は赤くて軟らかい。脂肪の多い「トロ」の量はクロマグロより少ないものの、刺身や寿司種に使われる。春から夏にかけてはクロマグロの味が落ちるとされており、この時期にはメバチの需要が高まる。
延縄(はえなわ)などの遠洋漁業で漁獲される。21世紀初頭の時点では年間30万t前後が漁獲されており、マグロ類の種類別漁獲量ではキハダに次ぐ。
農林水産省の統計によると、日本でのマグロ流通量のうちキハダに次ぎ、3割台を占める。鮮やかな赤身でありながら、脂が多いクロマグロに比べてさっぱりとした上品な味わいと評される。クロマグロのように養殖の研究が進んでおらず、世界的な和食普及で海外需要が増えていることもあり、価格が上昇傾向にある[3]。
乱獲によって個体数は減少しており、IUCNレッドリストでは1994年版からVU(絶滅危惧II類)として記載された。インド洋まぐろ類委員会は2023年5月8~12日にモーリシャスで開いた年次会合において、インド洋での漁獲量を制限することで合意した[4]。
食料として見た場合、メバチの体内に含まれる微量の水銀に注意する必要がある。厚生労働省は、メバチを妊婦が摂食量を注意すべき魚介類の一つとして挙げている。2005年11月2日の厚生労働省発表では、1回に食べる量を約80 グラムとした場合、メバチの摂食は週に1回まで(1週間当たり80 g程度)を目安としている[5]。
- ^ Uozumi, Y. 1996. Thunnus obesus. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 29 April 2008.
- ^ “魚介類の名称表示等について(別表1)”. 水産庁. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
- ^ 【価格は語る】庶民の「メバチ」も高値 クロマグロに迫る『日経産業新聞』2018年10月5日(サービスプライス面)2018年10月18日閲覧
- ^ 「メバチマグロ漁獲制限へ 来年から/インド洋 初の上限設定」『毎日新聞』朝刊2023年5月17日(経済面)2023年5月27日閲覧
- ^ 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 (2003年6月3日). “妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)(平成17年11月2日)”. 魚介類に含まれる水銀について. 厚生労働省. 2013年3月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月15日閲覧。
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