アルデヒド アルデヒドの概要

アルデヒド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 00:46 UTC 版)

アルデヒドの一般構造式
最も単純なアルデヒド:ホルムアルデヒド

アルデヒドとケトンとでは、前者は炭素骨格の終端となるが、ケトンは炭素骨格の中間点となる点で異なる。多くのアルデヒドは特有の臭気を持つ。

構造

アルデヒドは、その中心炭素がsp2混成軌道であり、これに酸素原子が二重結合、水素原子が単結合で結合した平面構造をとる。この炭素-水素結合(C-H)は酸性ではない。しかし、アルデヒドのα水素では、共役塩基共鳴安定化のためpKaは約17になり[3]、一般的なアルカンpKa=30よりも酸性度はずっと大きい。これは、ホルミル中心の電子求引性が大きいのと、共役塩基であるエノラートアニオンにより陰電荷が非局在化するためと考えられている。

ホルムアルデヒドを除くアルデヒドにはケト-エノール互変異性があり、または塩基によって触媒される。通常、平衡はケト型へ傾いている。

命名法

アルデヒドのIUPAC命名法の例

IUPACではアルデヒドの命名法を以下のように定めている[4][5][6]

  1. 非環式の脂肪族アルデヒドはホルミル基を含む最も長い炭素鎖から誘導して命名する。従って、メタンから誘導され、ブタンから誘導される。名称はアルカンの語尾の -e (-ン)を -al (-アール)にする。つまり、HCHOはメタナール(methanal)、ブタナール(butanal)となる。
  2. ホルミル基が環についているときは語尾に -carbaldehyde (-カルバルデヒド)を使う。従って、 はシクロヘキサンカルバルデヒド(cyclohexanecarbaldehyde)となる。もし、他の官能基が存在した場合は接頭辞の formyl- (ホルミル-)を使う。接頭辞は methanoyl- (メタノイル-)が推奨される。
  3. 化合物が天然に生成するカルボン酸のときは、ホルミル基が結合した炭素原子を指示して接頭辞 oxo- (オキソ-)を使う。例えば、は、3-オキソプロパン酸(3-oxopropanoic acid)と命名される。
  4. ホルミル基がカルボン酸のカルボキシル基から合成された場合はそのカルボン酸の慣用名から誘導される。語尾の -ic acid または -oic acid-aldehyde に変える。例えば、HCHOはホルムアルデヒドアセトアルデヒドベンズアルデヒドとなる。

性質

水素結合を作らないために、アルコールに比べて極性溶媒に溶けにくいが、極性があるためによく溶ける(水和されやすい)。また、炭化水素基をもつため有機溶媒にも溶ける。還元性を持ち、酸化されるとカルボン酸になる。銀鏡反応フェーリング反応に陽性。アルデヒドのIUPAC名は炭化水素の語尾 -e を -al に置き換えることで命名できる。アルデヒドの語源は脱水素アルコールを意味するラテン語 alcohol dehydrogenatum の al + dehyd + eである。ユストゥス・フォン・リービッヒが使い始めたとされる。

低級アルデヒドは強い刺激臭をもつ。また、アルデヒドは全体的に辛味を有し、特に芳香族アルデヒドは一部のスパイスの辛味成分ともなっている。

沸点を同じ炭素数について比べると、エーテルアルデヒド<アルコール の順である。


  1. ^ IUPAC Gold Book aldehydes
  2. ^ 化学用語検討小委員会: “公益社団法人日本化学会 | 活動 | 高等学校化学で用いる用語に関する提案(2)”. www.chemistry.or.jp. 日本化学会 (2016年2月26日). 2023年6月28日閲覧。
  3. ^ Chemistry of Enols and Enolates - Acidity of alpha-hydrogens
  4. ^ Short Summary of IUPAC Nomenclature of Organic Compounds, web page, University of Wisconsin Colleges, accessed on line August 4, 2007.
  5. ^ §R-5.6.1, Aldehydes, thioaldehydes, and their analogues, A Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds: recommendations 1993, IUPAC, Commission on Nomenclature of Organic Chemistry, Blackwell Scientific, 1993.
  6. ^ §R-5.7.1, Carboxylic acids, A Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds: recommendations 1993, IUPAC, Commission on Nomenclature of Organic Chemistry, Blackwell Scientific, 1993.


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