アルデヒド ホルミル基

アルデヒド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 00:46 UTC 版)

ホルミル基

ホルミル基

ホルミル基 (formyl group) は -CHO と構造が表される1価の官能基で、「ホルミル-」は IUPAC命名法の接頭辞として用いられる。アルデヒド基とも呼ばれる。第一級アルコールの -CH2OH の部位を酸化することで得られる。また、ホルミル基を酸化するとカルボキシ基を得ることができる。水素結合がごく弱いため、自己会合は弱く、水との親和性も弱い。

ジカルボン酸の片方のカルボキシ基還元されてホルミル基になったものは通俗的にセミアルデヒドと呼ぶことがある。(例:コハク酸セミアルデヒドグルタミン酸-1-セミアルデヒド2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒド

単糖

単糖類はホルミル基とカルボニル基(ケトン基)を持つものに大別されるが、前者のアルデヒドの性質を持つ糖をアルドース、後者のケトンの性質を持つ糖をケトースと呼ぶ。

毒性

多くの生物にとって有害で、ホルミル基がタンパク質の側鎖のアミノ基と反応を起こし、さらには架橋反応に進むため、これを凝固させる作用を持つ。それを利用したものに生物学研究におけるホルマリン固定やグルタールアルデヒド固定があり、ブドウ糖のようなアルドース糖尿病において、次第に血管コラーゲンエラスチン水晶体クリスタリンなどといった高寿命タンパク質を蝕み、こうしたタンパク質を多く含む器官に損傷を与えるのも、同じ原理による。また、アルデヒドの一種であるアセトアルデヒドはエタノールアルコールデヒドロゲナーゼの触媒作用によって生成し、アルデヒドデヒドロゲナーゼの働きで酢酸となる。弱い型のアルデヒドデヒドロゲナーゼを持つ人はアセトアルデヒドの中毒(=二日酔い)になりやすい。

合成法

アルデヒドは実験室的には第一級アルコールを弱い酸化剤(例えばクロロクロム酸ピリジニウム (PCC))で酸化すると生成する。

PCC酸化の他にも多くの酸化法が知られる。PDC酸化スワーン酸化TPAP酸化デス・マーチン酸化 、TEMPO酸化、向山酸化 などを参照されたい。工業的な酸化方法では、などの触媒を用いてアルコールを空気または酸素で酸化する方法がよく用いられる。

ワッカー酸化は、末端アルケンに水を付加してアルデヒドを得る手法として工業的に利用される(エチレンからアセトアルデヒドの工業的生成)。

DIBAL は、カルボン酸エステルを還元してアルデヒドを得るための試薬として用いられる。ニトリルは酸と塩化スズ(II)の作用でアルデヒドに変わる(スチーブン合成)。

上記の酸化・還元反応のほか、芳香族化合物やアルケンに直接ホルミル基を導入する反応がビルスマイヤー・ハック反応などいくつか知られる。それらはホルミル化、ホルミル化反応と総称される。

工業的なアルデヒド合成法としては、ワッカー酸化とともに、アルケンの二重結合に対して水素と一酸化炭素を触媒を用いて付加させるヒドロホルミル化(オキソ法)が多用される。

これらの酸化反応を第二級アルコールで行うとケトンが生成し、第三級アルコールは反応しない。したがって、「第二級アルデヒド」、「第三級アルデヒド」という物質は存在しない。


  1. ^ IUPAC Gold Book aldehydes
  2. ^ 化学用語検討小委員会: “公益社団法人日本化学会 | 活動 | 高等学校化学で用いる用語に関する提案(2)”. www.chemistry.or.jp. 日本化学会 (2016年2月26日). 2023年6月28日閲覧。
  3. ^ Chemistry of Enols and Enolates - Acidity of alpha-hydrogens
  4. ^ Short Summary of IUPAC Nomenclature of Organic Compounds, web page, University of Wisconsin Colleges, accessed on line August 4, 2007.
  5. ^ §R-5.6.1, Aldehydes, thioaldehydes, and their analogues, A Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds: recommendations 1993, IUPAC, Commission on Nomenclature of Organic Chemistry, Blackwell Scientific, 1993.
  6. ^ §R-5.7.1, Carboxylic acids, A Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds: recommendations 1993, IUPAC, Commission on Nomenclature of Organic Chemistry, Blackwell Scientific, 1993.






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