9つの小前奏曲とは? わかりやすく解説

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バッハ:9つの小前奏曲

英語表記/番号出版情報
バッハ:9つの小前奏曲9 kleine Praeludien BWV 924-932作曲年: 1720-26年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 ハ長調 C Dur BWV924No Data No Image
2 ニ長調 D Dur BWV925No Data No Image
3 ニ短調 d Moll BWV926No Data No Image
4 長調 F Dur BWV927No Data No Image
5 長調 F Dur BWV928No Data No Image
6 ト短調 g Moll BWV929No Data No Image
7 ト短調 g Moll BWV930No Data No Image
8 イ短調  a Moll BWV931No Data No Image
9 ホ短調 e Moll BWV932No Data No Image

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 バッハは《平均律クラヴィーア曲集》、《インヴェンション》、《シンフォニア》など、内容も曲数もひじょうに豊かな学習教材制作している。それらは当初から明確かつ綿密な計画持って進められていたが、その際はいくつかの候補の中からそれぞれの主旨合わせて選択したり、移調改訂加えたりすることがあった。一方では、曲集に取り込まれずに残され作品異なる調の原曲おぼしきもの、簡略な初期稿なども多数存在する9つ6つ、および5つの小前奏曲は、おそらくそうした小品後生がまとめたもので、やはり学習教材として弟子から弟子へと伝承された。19世紀半ばペータース社鍵盤作品集(チェルニー/グリーペンケルル編)によって、曲集のまとめ方が定着普及したとみられる
 この《9つの小前奏曲》はすべて《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖》に由来するが、かつてはBWV925-930までの6曲と《5つの小前奏曲》に《前奏曲ハ短調》BWV999を加えた12小前奏曲」として出版され親しまれてきた。現在では、体系的な曲集に選ばれなかった「前奏曲(PraeludiumあるいはPraeambulum)」8曲と、シュテルツェルのパルティータバッハ追加したメヌエット合わせて9曲のまとまりとするのが慣習である。なお、《音楽帖》には924, 926, 927, 930, 928, 924a, 925, 932, 931, 929 の順で収められており、BWV番号並びと――また作曲年代とも――一致しないが、本項では便宜上BWV番号の順に解説する

1. ハ長調 BWV 924
 前半両手による分散和音後半はオルガン・ポイントとパッセージワークによる。こうした構成は、《平均律 第1巻第1番プレリュード思わせる和音遙かに単純である一方左手和音には装飾音施され目先の変化演出している。両手音域は交わることはおろか近づくことさえなく、左手深みのある響き中に右手和声音が浮かび上がる

2. ニ長調 BWV 925
 主題両手パート交互に現れる筆跡から、W. F. バッハの作ではないかと言われている。またその律儀なまでの模倣いささかぎこちない主題労作が、その説を裏付けるように思われるが、いずれにしてもJ. S. バッハ監督下で書かれたことは間違いない

3. ニ短調 BWV 926
 冒頭は4分の3であるのか8分の6であるのかをはっきりさせずに開始するその後4分音符刻みが入るが、8分音符動機は相変わらず曖昧なまま進む。両手鍵盤の幅いっぱいに渡るパッセージワークが現れたのちのヘミオラは、この曲全体渡って待ち望まれたような終止である。

4. ヘ長調 BWV 927
 ほとんど一貫して同じ音型が繰り返されるが、中間の8-9小節テクスチュア若干変化がある。また、最後の3小節も単旋律和音休符など音の厚みを多彩に変化させて終止準備している。

5. ヘ長調 BWV 928
 全体は、冒頭主題と対主題、および主題動機素材組み合わせ多彩に用いて組み立てられている。その展開はインヴェンション呼んで差し支えないほどに巧みなのだが、声部書法厳格でないためにプレリュード範疇に留まっている。
 主題の完全提示と展開、これを締めくくる完全終止カデンツ、というまとまり最初(第1-5小節)と最後(第20-24小節)に配し全体シンメトリックである。摸続進行によって様々の調を通る中間部がこの曲の音楽的な頂点となる。大まかに分析すれば、第10小節でa-Mollに転じ、第17小節でa-Mollの完全カデンツ提示されるため、この間はa-Mollの領域動いていない。しかし、第11小節からなだれを打ったように低声部へ摸続進行し、第12小節後半から一転急速に浮上して安定取り戻す流れドラマティックである。

6. ト短調 BWV 929
 この作品プレリュードではなく、「J. S. バッハによるメヌエット・トリオ」としてシュテルツェルの《パルティータ》に挿入されたものである。従って、単体よりもむしろ組曲全体、せめてシュテルツェルのメヌエット本体と共に演奏されるきだろう
 メヌエット本体は、左手2分音符が多いこと、両手4分音符カデンツ奏することから、テクスチュア時にあまりに薄くなっている感がある。バッハトリオはこれと対照的に、つねに8分音符動機流れるように動いており、一貫して3声で豊かに響く。また、メヌエット本体が主に分散和音回音をを動機として用いるのに対しバッハ倚音による階段状の動機要所においている。そのため、非和声音スパイスのような効果発揮し単調さ免れている。
 なお、このトリオは《フランス組曲第3番ロ短調初期稿(BWV814a)に移調して用いられた。バッハ最終的にこのトリオ採用しなかった理由は、今までのところでは判っていない。

7. ト短調 BWV 930
 ほぼすべての音に運指指示付けられている珍しい作品現代ピアノには適さない、あるいは奏者の手都合合わない感じ運指時に含まれているが、この指示忠実に守ってみると、フレーズ切れ目アクセントの位置などがはっきりと感じられるバッハ想定した響き技術的に伝えてくれる貴重な資料である。
 楽曲2部分に分かれ後半前半冒頭の反行で開始する各部締めくくるカデンツ同種のもので、保続音タイ用いて徐々に音が増えていくように作られている。こうした対称性は、組曲楽章にしばしば用いられる形式である。

8. イ短調 BWV 931
 8小節ほどの短い曲で、W. F. バッハによって書かれているさまざまな装飾記号付けられているが、《音楽帖》の最初に示されバッハによる装飾音表にはないような、フランス式記号多く含んでいる。また、その中には誤りと見られるようなものもある。フリーデマンが父以外の何らかの作品ないし教則参照して装飾練習をした可能性がある。いずれにせよ8小節すべてがバッハの作とは考えにくく、バス枠組みのみを父が提示し、フリーデマンが仕上げたかも知れない

9. ホ短調 BWV 932
 未完。フリーデマンがJ. S. バッハ作品書き写し始めたが、何らかの理由筆写中断されたようだ冒頭3声のフーガ始まり完成していれば、かなり大規模な作品であった思われる




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