第4章「王は汝に何を求めたるや?」とは? わかりやすく解説

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第4章「王は汝に何を求めたるや?」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 05:48 UTC 版)

フロム・ヘル」の記事における「第4章「王は汝に何を求めたるや?」」の解説

翻訳者柳下毅一郎は「ウィリアム・ガル博士魔術行為示される二章、第四章第十四章」が本書白眉だと述べた第4章において、ガル馬車ロンドン一周しながら、無学な御者ネトリーに歴史的な建造物由来語って聞かせる過去時代視点が移ることもなく石造り建築背景にした会話シーン30ページ上続単調な構成ストーリー漫画として異色であり、作者たちも成否危ぶむほどだった。しかし、実在ランドマーク饒舌引喩によってオカルト歴史観展開されるこの章は、作品重要な一部、「最も効果的な章の一つ」、「(物語の)最初頂点」と評されている。ミステリ評論家千街晶之は「偏執狂的なまでの史実へのリサーチからオカルティック幻視騙し絵的に浮かび上がらせる技巧」が本作の「真骨頂」だと呼んだガル読み解く歴史根幹には、男性太陽理性女性=月=狂気に取って代わる原初陰謀」がある。先史時代800万年わたって女性占めてきた支配的地位は、6000年前男性象徴という武器を手にしたことで覆ったのだという。「象徴によって男性女性引きずりおろし、象徴によって押さえこんだ。何と強力な魔法だろうか!」象徴的な戦い一例として、月の女神ディアーナへの信仰キリスト教や、イギリス民間伝承見られる狩人ハーン置き換えられたことが挙げられるガル売春婦殺害も、出産神秘に支えられ女性権威失墜させて男性の力を再確認するという、古代から続く生贄儀式一種である。ガルロンドン各地に眠る歴史掘り起こすことで、国家安定の名のもとに犠牲にされてきた異教の力にアクセスするのと同時に暴力による支配維持しよう試みる。作者ムーアはこれらの発想イアン・シンクレア英語版)の著作ルッドの熱』(1975年)や『ホワイトチャペル、緋の痕跡』(1987年)、およびロバート・グレーヴスから示唆されたという。 作中訪問される太陽と月戦い象徴する数々ランドマーク地図上で禍々しい五芒星描き出す。その中央にあるセント・ポール大聖堂ガルによると男性原理核心的な象徴であり、建築構造埋め込まれ鉄鎖レンの鎖)が「無意識、月、女性性」をその内縛り付けている(ムーア執筆当時ウェールズ公妃ダイアナセント・ポール大聖堂皇太子結婚式挙げたことを意識していた)。ロンドン市街の「力と意味の線」を引き直し封印再生させることが、切り裂きジャック事件を起こさなければならない必然的な理由とされる。 この章ではニコラス・ホークスムア(英語版)の建築作品中心的に扱われている。ホークスムアはフリーメイソン一員であり、教会建築異教意匠取り入れたことからオカルティストの間で関心高く本作以前にもシンクレアやピーター・アクロイド(英語版)の小説取り上げられている。 ムーアはこの章の単調なプロット作品として成立させた作画家エディ・キャンベルを称賛している。キャンベル描写に少しでも緩急をつけるため、ガルらが立ち止まっているときは背景写実的に描き馬車移動している間はスケッチ風のタッチ変えて細部に目が留まらないようにした。また余計な部分読者混乱しないように、馬車が東に向かうシーンでは人物は右を向き、西に向かうシーンでは左を向いている。この章は丸1日出来事であり、太陽動き計算入れて絵の光源設定されている。 バトル・ブリッジ・ロード。何の変哲もない裏通りだが、ケルト女王ボアディケアローマ軍敗れた場所とされる。「これこそが女ども最後の希望と夢が潰えた場所なのだ」 バンヒル・フィールズ(英語版)。幻視ウィリアム・ブレイクは、男性原理理性象徴する太陽神オベリスク」の根元葬られている。 セント・ルーク教会英語版)。オベリスクのような尖塔建築家ニコラス・ホークスムアの特徴である。「ありゃあバンヒル・フィールズの奴と同じもんだ! でもあんなかたちの尖塔があるわけない」 ホークスムアのセント・ジョージ教会英語版)。尖塔マウソロス霊廟影響受けている。「巨大暗く精巧な聖堂精神糞に染まった石積み今世紀を定義した……」 太陽神アトゥム称えるオベリスククレオパトラの針」。「すべてに共通するものが何か、わかるか? 太陽と月との戦いだ半神狩人ハーンと縁のあるハーン・ヒル(英語版)。ガルハーン月の女神ディアーナ王座簒奪したという。 ロンドン代表する名所ロンドン塔ガル暴力怪奇満ちたその歴史暴き出してみせる。 ディアーナ神殿跡地建てられセント・ポール大聖堂。「ディアーナ縛められ/その住み家は、パウロの名によって神に捧げられた」

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