各国語における茶を意味する語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 16:17 UTC 版)
世界で茶を意味する語の起源は、「チャ」系統のものと「テー」系統のものがある。 中国語の北京語や広東語では、茶は「チャ (cha)」と呼ばれている。モンゴル語、ウイグル語、ヒンディー語、トルコ語、ペルシャ語、ロシア語などでは「チャイ」系統の音で呼ばれ、これらは中国から伝播したものと考えられるが、「イ」がどのようにして加わったのかは不明。ペルシア語辞典やヒンディ語辞典にはチャー (chā) とチャーイ (chāi) の両項目が挙げられている。「チャ」に由来する呼び名を持つ言語としては以下のような例がある。 中国語: 茶 (chá)、チベット語: ཇ (cha)、日本語: 茶、朝鮮語: 차 [茶] (cha)、ベトナム語: trà、タイ語: ชา (chaa)、タガログ語: tsa モンゴル語: цай (tsai)、ヒンディー語: चाय (cāe)、ペルシア語: چای (chāy)、トルコ語: çay、アラビア語: شاي (shāy)、スワヒリ語: chai ギリシア語: τσάι (tsai)、ルーマニア語: ceai、ブルガリア語: чай (chai)、セルビア語: чај (čaj)、チェコ語: čaj、ロシア語: чай (chai) これに対して西欧の多くの国では「テー」系統の発音が用いられている。これは、福建省で用いられている廈門語のテー (tê) に由来するとみられる。17世紀に茶を中国からヨーロッパに持ち込んだオランダ人経由でヨーロッパに広まった。陳舜臣は、清代中期から貿易を認められていた広州の特許貿易商である広東十三行は、福建省廈門(アモイ)出身者が多く、彼らが自らの母語でテーと呼んだことによるとするが、通常は福建語からマレー語にはいり、オランダ語はマレー語から借用したと考えられている。この系統の言語としては次のようなものがある。 オランダ語: thee、英語: tea、ドイツ語: Tee、ハンガリー語: tea、ヘブライ語: תה [te]、フランス語: thé、スペイン語: té、イタリア語: tè、スカンジナビアでは te、フィンランド語: tee、アルメニア語: թեյ (t'ey) インドネシア語とマレー語ではteh(インドネシアがオランダの貿易拠点であった経緯から) セイロン茶の産地スリランカの言語であるシンハラ語 තේ [tē]、タミル語 தேநீர் [tēnīr] (イギリス人が茶の栽培を持ち込んだ経緯から) 他方、ポルトガルは広東省のマカオから直接茶を輸入していたことから、広東省での呼び名に従い、西欧では例外的にcháと呼んでいる(現在のポルトガル語では「シャ」と発音されるが、かつての発音は「チャ」であった)。 日本語の茶の字音は呉音「ダ」、漢音「タ」、唐音「サ」である。「チャ」という音は院政時代の『色葉字類抄』に見られ、漢音と唐音の間の時期に流入したと考えられる。なお、「チ・ツ」は古くは破擦音ではなく、「チャ」と書いて「テャ」のように発音していた。朝鮮語の「茶」に対する漢字音も「タ」(다 / da)と「チャ」(차 / cha)があるが、植物・飲料の茶だけを指す場合、「チャ」を用いる。ベトナム語でも trà と chè の2形がある。 「チャ」系統と「テー」系統以外で呼ばれる言語もごくわずかあり、ほとんどは中国雲南省からミャンマーにかける地域に住んでいる東南アジア諸民族の言語である。例えば、ビルマ語ではလက်ဖက် (lakphak、ラペ)と、パラウン語では「miang」(ミアン)と呼ばれる。ただし、これらの民族の習俗上において茶葉はもともと飲用ではなく、ラペソーなどの漬物の原料である。なお、「ミアン」は中国語における茶の別名「茗 (ming)」の語源であるという説もある。
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