ヨーロッパS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/27 10:03 UTC 版)
「ロータス・ヨーロッパ」の記事における「ヨーロッパS」の解説
2006年9月に発売された、エリーゼ、エキシージ、オペルスピードスター(VX220)に次ぐ、4台目のロータス製アルミバスタブフレーム採用車種である。コードナンバーはType121。開発にあたってコーリン・チャップマンと共にヨーロッパTCの開発に関わった、当時のCEOであるマイク・キンバリーが指揮を取り、同じくチャップマンの元でヨーロッパの開発を行ったロジャー・ベッカーのチームが開発を担当した。 当時ロータスの親会社であったプロトンから、「プロトンのディーラーに陳列出来るスーパーカーを開発しろ」という指示に従い、既に生産していたエリーゼ、エキシージとも違う「より上位のクラスのスポーツモデル」として設計したのがそもそもの始まりである。その後、プロトンからコンセプトモデルとして発表されたのが「プロトン・スポーツコンセプト」である。その後DODGEから発表されたEVモデルのコンセプトモデルである「en:Dodge_EV DODGE EV」の車両ベースとしても使われ、実にロータス、プロトン、DODGEの自動車メーカー3社を巻き込んだ一大プロジェクトとしてスタートした。ちなみに当時発表されたばかりの同じくEVスポーツカーである「テスラ・ロードスター」はエリーゼをベースに開発されたが、実はハブはスピードスター(VX220)、ヨーロッパSと同じPCD110の5穴であった。尚、プロトン及びDODGEの計画はその後突如打ち切りとなり、宙ぶらりんとなった本計画をマイク・キンバリーが経営的判断から続行を決断し、ロジャー・ベッカーの開発チームに完成を任せた。既に新規のボディの設計、インテリアの殆どを占める本革内装、独自のECU開発と相当なコストを投資しており、原資回収の為として最低限度の「ロータスブランド」として発売出来るように仕上げたのが本車両の顛末である。発売までに5台のプロトタイプが製作され、イベント用にパトカーの装飾を施された車両も存在した。 オペルから発売されていた「スピードスター」のシャシー、エンジン、ミッション、ハブ等の部品が使われており、エリーゼ・エキシージよりもスピードスターとの共通部品が多い。ロータスは「ビジネスクラスGT」と称しており、上述の成り立ちから先代のロータス・ヨーロッパからは名称のみ受け継いだ形であるものの、開発スタッフは初代ヨーロッパの開発に携わったメンバーであり、後述するエンジンの歴史も含めれっきとした「ロータス・ヨーロッパ」である。 初代ヨーロッパと同様2シーターのミッドシップ。エリーゼ、エキシージと共通のアルミバスタブフレームを使用しているものの、サイドシルはS2・3エリーゼ・エキシージよりも深く抉られ、開口部はより広く設計されている。サブフレームはエリーゼ、エキシージよりも延長されており、ホイールベースが30mmほど延長。これによりエリーゼ・エキシージよりも遥かに余裕のあるラゲッジスペースを確保出来ており、また直進安定性の向上にも寄与している。ボディも先代と同様のFRP製ではあるが、先述のシャシーの延長により長さだけでなく幅についてもワイド化がされている。 搭載されるエンジンはGM・オペル製ECOTECエンジン。排気量1998cc、最高出力200馬力、最大トルク27.7kgf·mのインタークーラーターボ搭載モデルである。これはオペル・スピードスターのターボモデルに搭載されていたエンジン「Z20LET」をウォーターポンプの変更等を行ったアップグレード版の「Z20LER」というモデルであり、ロータスは更にスピードスターとも違うヨーロッパS向けに専用にチューニングしたECUを搭載した。その後225馬力にチューンアップしたECUを搭載した「ヨーロッパ225」。タービンとECUを交換し240馬力にパワーアップした「ヨーロッパSE」がリリースされる。 尚Z20LERエンジンは、GMが1994年に計画し当時GMの子会社であったロータスの技術開発部門「LotusEngineering」が設計・開発した「L850」という汎用エンジン開発計画によって生産された「ECOTECエンジン」の派生の1つである。「ECOTEC」は2022年現在まで改良・発展・生産が続く実に20年以上にも渡るロータス製エンジンのベストセラーである。 その為ヨーロッパSはボディ、シャシー、エンジンの基本的コンポーネントの全てをロータスが開発した、エスプリ以来のピュアロータスである。それと同時に、最後のロータス製内燃機関を搭載したロータスでもある。 足回りに関して、前輪については横幅は175とエリーゼと同サイズなのに対し、ホイールが前後17インチと前輪がインチアップされている。サスペンションは形式は兄弟機と同じくダブルウィッシュボーン。組み合わされるアブソーバーはこれもエリーゼと同じく高圧ガス式のビルシュタイン製であるが、バネレートは低く設定されており乗り心地を重視した味付けとなっている。前輪のキャスター角がエリーゼよりも立たたせてあり、ハンドルの回し心地は軽くなっている。シャシーは同じでありながら、エリーゼよりもより普段使いがし易い様にセッティングが施されているのが特徴。 2007年6月には上級グレードのLXが追加された。黒一色のベースモデルと比較して、タンカラーもしくはホワイトカラーのフルレザーのインテリアが特徴。4点式対応したインテリア同色のレザースポーツシートも標準装備。ルーフ内張りにも同色のレザーを施す等インテリアだけならば後継機のエヴォーラと同等以上である。運転席後ろ側にトランクを開けるためのレバーが付いており、これもまた兄弟機には無い物である。 革張りのインテリアは居住スペースのみならずトランクルームにも使用されており、また革製の小物入れが随所に追加されている等非常に凝った造り。タン色については専用の染色方法でイギリスの職人の手によって染められており、同じ物は以後ロータスでは使用されていない。 2008年3月にはECUを変更し、最高出力が225PSに向上した『ヨーロッパ225』が追加された。最高出力の向上に伴いブレーキローターがスリット入の物に換装されたりと、随所で強化が図られている。 また、既に販売されたヨーロッパS用にバージョンアップ用の「225キット」も少数ながらリリースされていた。 英国では『ヨーロッパSE』が上記225よりも更に上位のモデルとして僅か48台をリリース。こちらは更にタービンがK04にアップグレード、サスペンション・スタビライザー・ブレーキキャリパーがエキシージと同等の物に変更、ホイールが前17インチ、後18インチの専用の物になっている等よりグランツーリスモとしての強化が図られたモデル。 サイドシルが深く削られていることから、シャシーが捻れる可能性も加味し、メーカーからは「サーキット走行不可能」という案内が当初出されていた。完全に接着されたルーフが剛性に寄与している為、500馬力前後に強化した上でスリックタイヤを用いる様なレースでも無ければ影響は無い。 2010年に生産終了、総生産台数は456台。ヨーロッパSEは48台。
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