セミクロスシート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 17:37 UTC 版)
ロングシートとクロスシートを組み合わせた配置で、通常は乗降が円滑になるようドア付近をロングシート、ドア間にクロスシートを配置する。クロスシートは固定式がほとんどだが、JR西日本のように転換クロスシートを採用した例もある。 日本では1920年代の第二次都市間高速電気鉄道(インターアーバン)建設ブームの頃から、長距離輸送とラッシュ時対策の両立や、電動車の主電動機点検蓋(トラップドア)とクロスシートの干渉を防ぐ目的などで採用され始め、第二次世界大戦後も都市間輸送用を中心に採用が続いている。 国鉄時代の車両では近郊形車両である113系や415系等の3ドア車や、80系、711系やキハ40系等の2ドア車が存在している。また、交直流急行電車やキハ58系などの急行形車両には「近郊形改造」として、ドア付近の座席を一部ロングシートに改造した2ドアのセミクロスシート車が存在する。ロングシートで落成した車両でも、輸送需要の変化に即してセミクロスシートに改造された車両もある(JR東日本209系(房総地区向け)、阪神8000系など)。私鉄の例では、東武6050系や西武4000系、名鉄6000系、西鉄3000形などが挙げられる。 いわゆる国鉄型車両の場合、新規製造した時点では、3ドアの電車では通常ドア間に左右各2ボックス16名分の固定クロスシートを配していた。また、2ドア車両の場合ではデッキ付きのものはドア間すべてに固定クロスシートを配しており、デッキがないものについては客用扉付近をロングシートにし、扉間中央部にクロスシートを配する例が多かった。 1990年代以降は4ドアの車両でもクロスシートを導入する車両が増えている。日本で初めて登場した4ドアのクロスシート車は1970年に製造された近鉄2600系電車および量産型の2610系・2680系であるが、ロングシート部分はなく全座席が固定クロスシート設置として製造されたため、セミクロスシート車ではない。首都圏の場合、相鉄新7000系電車(7755F)が比較的混まない一部車両のドア間に左右1組ずつ固定クロスシートを試験的に設置した。これを筆頭に同等の設備を同社の8000系、9000系、JR東日本のE217系、E231系(近郊タイプ)、E531系や首都圏新都市鉄道TX-2000系電車で採用されている。また、名鉄300系電車や名古屋市営地下鉄7000形電車のようにロングシートと転換式クロスシートを扉を境に交互に配置した例、近畿日本鉄道のL/Cカーや関東私鉄の一部の通勤形車両に見られるデュアルシートなどがある。 なお、東急9000系電車、東京都交通局6300形(1、2次車のみ)、東京メトロ南北線9000系(1次車のみ)、京急新1000形、京急2000形(格下げ改造後)、南海1000系、南海2000系(後期車のみ)、香港鉄路(MTR)のメトロキャメル電車 (交流)(通勤化改造後)などの通勤形車両で、車端部に少数のボックスシートを配した例がある。 また、JR西日本125系・223系5500番台・521系、阪急6300系のように、クロスシート主体で運転席後部や妻面側車端部などに少数のロングシートを配する例もある。 また、トイレを有する車両で、便所使用者の直視を避けるため、当該便所前の座席のみをクロスシートとしている車両も存在する。採用例ではキハ35系、211系、JR東日本107系、JR東日本E233系3000番台の一部編成の6号車等がある。 その他、通路の左右でロングシートとクロスシートを組み合わせて設置する方式もある。第二次世界大戦前の日本では主に琵琶湖鉄道汽船100形電車や山陽電鉄100形電車など、通路の両側を2人掛けのクロスシートとするのに十分な車体幅を確保できない形式に採用された。戦後も草軽電気鉄道や仙北鉄道(キハ2406)、下津井電鉄(モハ1001・2000系“メリーベル”)など、762mm軌間で車体幅が狭い軽便鉄道の車両においてクロスシートを配置する方式として利用された。近年ではJR四国7000系、JR東日本701系5000番台、JR九州キハ220系200番台など、主にラッシュ対策と長距離輸送の両立を求められる3扉構成の車両において、クロスシートとロングシートの組み合わせを車体中央を中心に点対称に配置した千鳥配置のレイアウトで採用されている。通常のセミクロスシートに対して通路のスペースが広く取れるほか、ロングシートとクロスシートとの壁が無いために開放的であるなどの利点がある。ただし、クロスシートに座る客にとっては、ロングシートに座る客から横顔を見られる恰好となるので、居心地がよくないという欠点もある。 JR東日本719系電車のクロスシート座席部分は集団見合い型、名鉄6000系電車の一部では集団離反型の配置である。
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