『岳物語』とは? わかりやすく解説

『岳物語』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 08:42 UTC 版)

岳物語」の記事における「『岳物語』」の解説

1985年5月集英社刊行。「きんもくせい」「アゲハチョウ」「インドラッパ」「タンポポ」「ムロアジ大作戦」「と豚」「三十年」「ハゼ釣り」「二日間プレゼント」の9編を収録文庫版集英社文庫から1989年9月刊行文庫版解説斎藤茂太挿絵単行本・文庫版ともに沢野ひとし。また英語版刊行されており、『Gaku Stories』(1991年講談社英語文庫)『My boy』(1992年講談社インターナショナル)の2タイトル存在する。 各短編集英社青春と読書1983年11月号~1985年4月号に掲載最初から『岳物語』としての連載だったわけではなく椎名が同誌に毎号30短編小説を書くという企画に対して初回息子の岳を主人公にした初の私小説きんもくせい」を発表したところ、編集者好評得て、岳と家族テーマとした私小説としてシリーズ化されたものである。『岳物語』のタイトル9つ短編纏めて単行本化する際に付されたものであり、表題作存在しない本作主人公である椎名長男・岳は1973年7月生まれ椎名29歳時の子である。当時椎名流通小売系の出版社デパートニューズ社(後のストアーズ社)に編集者として勤務していた。同社在籍中には処女出版となる『クレジットとキャッシュレス社会』(1979年教育社)ほか、複数流通小売系の専門書上梓している。サラリーマン生活の一方1976年には目黒考二らと『本の雑誌』の刊行開始しキャンピング集団東ケト会」の企画など、後の作家生活下地となる活動展開しつつあった。1979年、『本の雑誌誌上掲載したさらば国分寺書店のオババ』(情報センター出版局)が初のエッセイ集として単行本化1980年3月には東ケト会活動描いた第2集エッセイ『わしらは怪しい探検隊』(北宋社)を発表し、後にシリーズ化される。同年12月には椎名ストアーズ社退職しフリー作家生活入った。 岳が生まれ育った時期このように椎名が「サラリーマンから転がるようにモノカキ転身」し、「三十代新米親父作家デビュー時代重なって」いたと語る、家族生活においても仕事上で大きな転換期であったそうした折に連載小説題材困りいたずら盛り息子行動そのまま文章にしていれば作品出来上がる考えて家族風景書き始めたのが作品誕生契機であった。 なお、岳の姉で椎名長女である渡辺葉は、本作中には全く登場しない。これに関して椎名は、「きんもくせい」「アゲハチョウ」と1・2作目に姉を登場させる機会がなかったうちに家族テーマ連載運びとなり、突然姉を登場させづらくなってしまったという理由と、父が家族題材小説を書くと知った早くから「自分のこと書いたらだめだからね」と言っていたという理由挙げている。

※この「『岳物語』」の解説は、「岳物語」の解説の一部です。
「『岳物語』」を含む「岳物語」の記事については、「岳物語」の概要を参照ください。


『岳物語』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 08:42 UTC 版)

岳物語」の記事における「『岳物語』」の解説

東京都小平市に家を構えるよろず雑文書き「私」と、保育園勤める妻との間に生まれた息子は、両親登山好きから「岳」と名付けられた。岳は保育園児の頃から、好奇心から友達近所サツマイモ畑を根こそぎ掘ってしまうなど、何かと事件巻き起こす読み書き英会話就学前から教育かまびすしい地域の中で、私たち夫婦はあえて習い事の類を一切させずに岳を小学校入学させた。岳は自由闊達育ち小学4年生にしてバレンタインデーに3人の同級生からチョコレートをもらう程の人気者となった一方学校勉強からきしで、上級生にもケンカ挑みかかり、乱暴者問題児教師たちから煙たがられて私や妻が学校呼び出されることもしばしばであった4年生の時、私の友人である野田さんの家がある亀山湖初め連れていかれた岳は、そこで釣り教わって以来それまで見せたともない集中力釣りのめり込んでいく。私が冗談で「多摩川ナマズ釣ってきてくれよ」と声をかけた時には自分仕掛け調べ本当にナマズ釣ってきて私を驚かせた。5年生夏休み、岳は両親から離れ野田さん釧路川カヌー下り出発した。岳の不在の間、私は朧げ自身少年時代記憶思い出していた。世田谷の家を引き払って各地転々とし、異母兄弟何人もいた子供心にも訳あり分かる家庭。私が鉄棒から落ちて頭を縫うケガ負って駆けつけず、そして小学6年時に死んだ父。釧路川から帰って来た岳の伸びた髪を風呂場散髪しながら、私は父が死んで30年になること、その30年とはそのまま私と岳との歳の隔たりでもあることを考えていた。 岳が5年生の冬。昨年引き続き取材旅行のため正月家を空けてしまうことになった私は、スケジュール合間を縫って、岳に東伊豆稲取への一泊二日釣り旅行プレゼントする旅先の岳は、釣具店の店主と私にはまるで分からない専門的な語で仕掛けや餌の話をし、見たともない道具使って見事にカサゴ釣り上げ、彼が私の知らない世界へ突き進んでいることを感じさせた。それから1か月。私は酷寒イルクーツクから、久しぶりに家に電話をかけた。雑音混じり途切れがち回線の中で、岳から鴨川釣りに出かけて海に転落した話を聞き、私は激しく動揺して問いただすものの、私の慌てぶりとは裏腹に岳の声はのんびりとしたものだった。やがて回線不調無情に電話切れてしまい、諦めて受話器をおいた私はため息をひとつつき、一人くつくつと笑うのだった

※この「『岳物語』」の解説は、「岳物語」の解説の一部です。
「『岳物語』」を含む「岳物語」の記事については、「岳物語」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「『岳物語』」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「『岳物語』」の関連用語

『岳物語』のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



『岳物語』のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの岳物語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS