87式偵察警戒車 87式偵察警戒車の概要

87式偵察警戒車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 01:48 UTC 版)

87式偵察警戒車
基礎データ
全長 5.99m
(車体長5.525m)
全幅 2.48m
全高 2.80m
重量 15.0t
乗員数 5名
装甲・武装
主武装 25mm機関砲KBA-B02(400発)
副武装 74式車載7.62mm機関銃(4,000発)
機動力
速度 100km/h
エンジン いすゞ10PB1
4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル
前進6速後進1速MT
305ps/2,700rpm
懸架・駆動 装輪式(3軸6輪駆動)
行動距離 500km
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防衛省は略称を「87RCV」、愛称を「ブラックアイ」として広報活動に使用しているが、配備部隊内では「RCV」の通称が用いられる。

概要

陸上自衛隊では創成期にアメリカ軍から装輪式のM8装甲車M20装甲車の供与を受けたが、未舗装路面の多かった当時(1950年代)の日本の道路における機動力に不安があったこと、60式装甲車などの装軌式車両や主要装備の調達が優先されたことで配備は少数に留まり、就役期間も短かった。

その後、経済発展に伴って道路網が整備されると装輪式車両の機動力への不安要素が取り除かれ、1982年には装輪式である82式指揮通信車が制式化された。87式は82式に次いで制式化された装輪式戦闘車両であり[1]、それまで偵察機材として使われていた73式小型トラック偵察用オートバイには無かった火力装甲防御力を持つ。

開発・調達

開発は自衛隊初の装輪式戦闘車両である82式指揮通信車を開発した小松製作所が担当した。防衛庁からの依頼を受け、1983年から約3億円を投じて試作車が2両製作された。1985年から技術試験、1986年からは実用試験を開始し、翌年の1987年に「87式偵察警戒車」として制式化された。

調達価格は一両約3億円とされており、平成25年度予算計上分も含めて111両が調達されている。

87式偵察警戒車の調達数[2][3]
予算計上年度 調達数
昭和62年度(1987年) 16両
昭和63年度(1988年) 15両
平成元年度(1989年) 16両
平成2年度(1990年) 16両
平成3年度(1991年) 8両
平成4年度(1992年) 4両
平成5年度(1993年) 4両
平成6年度(1994年) 4両
平成7年度(1995年) 4両
平成8年度(1996年) 1両
平成9年度(1997年) 1両
平成10年度(1998年) 1両
平成11年度(1999年) 1両
平成12年度(2000年) 2両
平成13年度(2001年) 1両
平成14年度(2002年) 1両
平成15年度(2003年) 1両
平成16年度(2004年) 1両
平成17年度(2005年) 1両
平成18年度(2006年) 3両
平成19年度(2007年) 1両
平成20年度(2008年) 2両
平成21年度(2009年) 1両
平成22年度(2010年) 3両
平成23年度(2011年) 1両
平成24年度(2012年) 1両
平成25年度(2013年) 1両

特徴

兵装には、日本製鋼所ライセンス生産したスイスエリコン社製25mm機関砲KBA-B02(俯仰角-10~+45度、対地・対空両用 80口径)を回転式砲塔に搭載しており、機関砲同軸には74式車載7.62mm機関銃を装備している。KBA機関砲は二重給弾方式であり、徹甲弾榴弾の撃ち分け可能。APDS-T(装弾筒付曳光徹甲弾、砲口初速1,335m/s)は、射距離2,000mの傾斜角30度の25mm装甲板を貫通可能。砲塔両側面には発煙弾発射機(旧型は3連装、新型は4連装)を装備している。

82式指揮通信車と車体下部設計の大半を共有している。ディーゼルエンジンの配置は82式が車体中央部左側に有るのに対し、87式では砲塔配置との関係から車体後部右側に変更された[1]消音器も車体右側面後部にある。3軸6輪駆動(通常時は後4輪駆動)で前4輪でステアリングを行う。6輪の車輪にはある程度被弾しても走行を継続できるコンバットタイヤ(サイドウォール強化型ランフラットタイヤ)を採用した。スノータイヤは無いので積雪時や路面凍結時にはタイヤチェーンを巻く必要がある。車体と砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、NBC防護装備や浮航能力は有していない。

車長砲手操縦手、前方斥候員、後方斥候員の5名が乗車する[1]。車体前部右側に操縦手が、左側に前方斥候員が、車体中央部の砲塔右側に車長が、左側に砲手が配置される。砲塔直後の車体後部左側に後ろ向きに後方斥候員が乗車する。後方斥候員はペリスコープや車体後面左側に備わるTVカメラにて後方監視を行う。また、操縦用及び照準用(砲手)微光暗視装置を搭載している[1]。車長、砲手、操縦手、前方斥候員の席の上面に、また後方斥候員の右側に各々専用のハッチがある。砲塔上に地上レーダー装置2号及び、近距離暗視装置を設置可能である[1]

エンジン左側には後方斥候員席と車体後面乗降扉を繋ぐ狭い通路があり、84mm無反動砲及びその砲弾等が格納できる。車体右側面の第1輪と第2輪の間に、車長、砲手、操縦手、前方斥候員用の乗降扉がある。車体左側面の第2輪と第3輪の間と、車体後面左側に、後方斥候員用の乗降扉がある。


注釈

  1. ^ 464頁など
  2. ^ 77頁など
  3. ^ 169頁など全般

出典

  1. ^ a b c d e PANZER 臨時増刊 陸上自衛隊の車輌と装備2012-2013 2013年1月号,アルゴノート社,P54
  2. ^ 防衛白書の検索
  3. ^ 防衛省・自衛隊:予算等の概要


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