越中八尾曳山祭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/06 18:17 UTC 版)
概要
八尾町市街地の内6町が曳山、1町が獅子(獅子舞)をそれぞれ保有し祭礼を執り行っている。巡行路は東上がりと西上がりがあり毎年交代で曳かれる。各曳山の巡行順は毎年変更(前年の2番山が翌年1番山になる)となり、獅子舞、神輿、曳山の順に巡行する。
上新町(かみしんまち)が1741年(寛保元年)花山車を製作し在原業平の人形と役者を乗せ練り回したのが起源とされ、その後他の町も順次曳山を制作し祭礼に加わり、明治時代中期には6基となり現在に至っている。なお祭礼行事は上新町の過去帳により、寛保元年以前から行われていたことがわかっている。
坂の街の家の軒下には松飾りが挿され、朝方より獅子舞、神輿、そして6基の曳山が曳山囃子を演奏しながら若者達が各町揃いの法被を羽織って厳かに渡御する。日中は曳山から出された綱に子供達も繋がり曳山を引っ張る。夜には提灯山となって夜空をほのかに染めながら夜半まで曳き廻される。曳山囃子には三味線、横笛、太鼓が用いられる。曲は町内毎に十数種類あり、それぞれの場面によって弾き分けられる。
当時の名工が手掛け、改良されていった彫刻、漆工、彫金、金箔などを纏った絢爛豪華な曳山と、曳山内で演奏するお囃子は、良質な蚕種の販売が全国の4分の1のシェアがあったとされる養蚕業(蚕種・絹糸)と、配置薬の包紙などに使用された八尾和紙で豊かな財力を誇り、江戸時代には富山藩の財政の多くを支える「富山藩の御納所(おなんどころ)」と呼ばれ、曳山は裕福な豪商の旦那衆によって造りあげられていったもので、おわら風の盆とともに八尾町民文化の繁栄の証であり誇りとなっている。
日本の道100選に選ばれた諏訪町本通り、東新町の石畳の情緒ある道を曳き廻すほか、辻々の角回しでは、それぞれの街角を曳き手が警護の指図のもと太鼓が打ち鳴らされる中、呼吸を合わせ一気に力ずくで車輪を軋ませ、日中は屋根の四隅に提げられた瓔珞(ようらく)を大きく揺らしながら、夜は提灯を大きく揺らしながら回すが、日中の曳き回しでは東新町(ひがししんまち)の石畳の狭い坂の辻、提灯山となってからは八尾八幡社奉納時の出入りの角回しが一番の見所である。また、曳山の動き出しに合わせ「ほりきの みっつの よーかんぼー」と掛け声を掛けるが、これは仏法の力である「法力」、密教の極意である「密意」、平安末期に実在した僧侶である「永観(ようかん)坊」から来ているのではないかとも言われているが、いわれは諸説あって現在ではよく判っていない。
なお、1872年(明治5年)までは3月16日、1962年(昭和37年)までは4月20日に執り行われていた。
6基の曳山は、1965年(昭和40年)1月1日「八尾町祭礼曳山」として富山県有形民俗文化財に指定されている。また2006年(平成18年)に、「とやまの文化財百選(とやまの祭り百選部門)」に選定され、2011年(平成23年)11月には八尾町曳山保存会が「地域文化功労者文部科学大臣表彰」を受けた。
2020年(令和2年)4月5日、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、関係諸団体はこの年の曳山の巡行などの中止を決定した。社殿での神事等は行われる[1]。
獅子舞
獅子頭は井波彫刻の名工が制作した、角が1本ある雄と雌二頭の夫婦獅子で二人獅子である。神輿、曳山を先導し巡行路を清める露払いの役目をしている。2005年(平成17年)には、「とやまの文化財百選(とやまの獅子舞百選部門)」に選定されている。
鏡町(かがみまち)
- 起源 1770年(明和7年)
- 明治時代に入り、それまで獅子舞を受け持っていた諏訪町(すわまち)が新たに曳山を新造し、曳き回しに参加したため、獅子を1880年(明治13年)に同町より譲り受け、獅子舞を引き継ぎ祭礼に参加することとなった。
- ^ 『八尾・石動 曳山祭中止 「3密」避け リスク考慮』北日本新聞 2020年4月6日33面
- ^ 『花山車に欄亭曲水図 伏木・上町 専門家が確認 山車彫刻で最古か』北日本新聞 2013年5月14日26面
- ^ 『八尾曳山祭に向け東町 29日 神迎えに御所車』北日本新聞 2019年4月25日28面
- ^ 『八尾 東町保存会の御所車 曳山祭向け初の改修』北日本新聞 2021年3月28日20面
- ^ 『富山市史 編年史<下巻>』(2015年3月20日、富山市発行)524頁。
- ^ 『富山大百科事典 下巻』(1994年8月1日、北日本新聞社発行)986頁。
- ^ 『富山大百科事典 下巻』(1994年8月1日、北日本新聞社発行)488頁。
- ^ 『富山市史 編年史<下巻>』(2015年3月20日、富山市発行)431頁。
- ^ 『富山市史 編年史<下巻>』(2015年3月20日、富山市発行)536頁。
- ^ 『曳山祭の安全祈る 八尾八幡社で200人』北日本新聞 2019年4月28日21面
- ^ 『あす越中八尾曳山祭「調曳き」児童ら歓声』北日本新聞 2017年5月2日17面
- 1 越中八尾曳山祭とは
- 2 越中八尾曳山祭の概要
- 3 神輿
- 4 主な日程
- 5 参考文献
固有名詞の分類
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