社会福祉士
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/08 15:17 UTC 版)
社会福祉士 | |
---|---|
英名 | Certified Social Worker |
略称 | CSW |
実施国 | 日本 |
資格種類 | 国家資格 |
分野 |
医療・福祉・教育 保険・司法・行政 |
試験形式 | マークシート |
認定団体 | 厚生労働省 |
認定開始年月日 | 1987年5月21日 |
等級・称号 | 社会福祉士 |
根拠法令 | 社会福祉士及び介護福祉士法 |
公式サイト | https://www.jacsw.or.jp/ |
特記事項 | 日本社会福祉士会 |
ウィキプロジェクト 資格 ウィキポータル 資格 |
概要
社会福祉士はジェネリックな力量を活用し、保健・医療(MSW)、児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉、行政、司法、その他の社会福祉業務全般を行う『ジェネラリスト・ソーシャルワーカー』的な位置づけである[4]。他方、精神保健福祉士は精神障害者の保健及び福祉分野を行う『スペシフィック・ソーシャルワーカー』的な位置づけである。また社会福祉士は英語で「Certified Social Worker」と呼称されているが、「ソーシャルワーカー」の呼称を独占するものではない。社会福祉士と精神保健福祉士又は介護福祉士の国家資格を同時に取得することも可能である(精神保健福祉士の追加・同時取得の場合、国家試験の一部科目免除がある)。 試験科目は学際的であり、受験者のほとんどは一般大学卒業者もしくは福祉系の大学卒業者である。
医師、歯科医師、薬剤師など資格を保有しないと職務を行えない業務独占資格と違い、社会福祉士は、理学療法士や管理栄養士などと同様に、名称独占資格であるが、近年では医療保険点数の改訂において退院支援加算やがん連携パス、介護連携指導料等が新設され保険加算のための人員配置基準となり、医療ソーシャルワーカーの必置資格としてほとんどの病院で社会福祉士を保持することが実質的な採用条件とされている。2006年介護保険法改正により、各市区町村の地域包括支援センターでは社会福祉士の資格を保有する者のみがクライエントからの相談業務、サービス事業者及び行政との連携業務を行う人員設置基準(必置資格)となった。また、障害者福祉施設において社会福祉士の配置による加算、児童福祉施設の最低基準の改正に伴い職員配置基準の一つとして社会福祉士が加えられたため、名称独占資格でありながら業務独占的な要素を持ち合わせている。2015年には文部科学省の一部改正により、スクールソーシャルワーカーは社会福祉士の資格を有する者のうちから行うことと改正された[5]。条文上、成年後見制度に於いて弁護士、司法書士に並び職能職業後見人と認められる3士業のうちの一つである。
職能団体としては、日本社会福祉士会がある。ただし、法務系の資格のように強制加入制を採っていないため組織率は20パーセントほど[6]。なお、類義資格の社会福祉主事任用資格は公的資格であり、国家資格ではない。
歴史
1945年〜1952年、高度経済成長による社会変動により社会福祉の需要が増大し、社会福祉主事の資格が立案される[7]。1960年〜1966年、ソーシャルワークの専門性が問われ、1971年11月に社会福祉士国家資格の試案が公表されるも反対により廃止となる[7]。1986年5月26日、高齢化社会に伴い、福祉を民間に頼らざるをえなくなり[8]、福祉従事者の量的・質的確保が急務となったことから、社会福祉士・介護福祉士国家資格が制定される[8]。社会福祉士の需要に関しては検討なしに進められ[9]、他の学問領域や学問分野から無差別に概念を借用し、その背景にある理論や理念を無視し、誤訳を犯し、重要な結節点では美辞麗句の抽象概念で補われて構築された[10]。それまで社会福祉士の専門性を客観的・実証的に証明できず、法案すらままならぬ状況で[11]、医療ソーシャルワーカーも社会福祉士国家資格の対象ではなかったが、身分法を定めることにより、労働条件や待遇の向上を図る運動において一致し、国家資格化の動きが強まった[12]。社会福祉士国家資格化後、官僚の天下り先確保と学校の志願者数確保が利害一致し、各大学が社会福祉学部・学科を設立、意味も分からずに資格を有り難がる学生を惹き付けた[10]。
注釈
- ^ うち2科目はそれぞれ3科目からなる選択制であり、1つは人体の構造と機能及び疾病、心理学理論と心理的支援、社会理論と社会システムのうち1科目、1つは就労支援サービス、権利擁護と成年後見制度、更生保護制度のうち一科目となっている、国家試験では選択科目とは関係なく出題される。これらのことからすべての科目を単位修得するようなカリキュラムが組まれている。
- ^ 社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則[20]附則(平成二三年一〇月二一日厚生労働省令第一三二号)抄
- ^ a b このケースにおいて、2科目に分割されているのは、教職課程(高校・福祉)にも対応させるため。「高齢者福祉論」は、教科に関する科目の区分上「高齢者福祉、児童福祉及び障害者福祉」の欄へ、「介護概論」は、同じく「介護理論及び介護技術」へそれぞれ、「一般的包括的内容を含む」ための一部として充当することを理由に、区分する必要があるため。
- ^ a b ケースワーク、グループワーク、コミュニティーワーク及び社会福祉調査法を含む。
- ^ 「新版○○福祉士養成講座」シリーズを指す。
出典
- ^ “三福祉士 社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士”. ケアマネ全書. 2015年1月26日閲覧。
- ^ “介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の福祉系三大国家資格を取得しよう” (PDF). 専門学校高崎福祉医療カレッジ. 2015年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月21日閲覧。
- ^ 資格登録者数(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士)公益社団法人社会福祉・振興センター公式HP(PDF)
- ^ ユーキャン社会福祉士試験研究会(編)『UーCANの社会福祉士速習レッスン(共通科目)』(2014年版)ユーキャン学び出版、2013年5月24日、8頁。ISBN 978-4-426-60491-2。
- ^ 鎌倉克英「新入会の皆さんへ〜実践力を磨く社会福祉士として〜」(PDF)『日本社会福祉会NEWS』第176号、日本社会福祉会、2015年4月、1頁、2016年6月6日閲覧。
- ^ 日本社会福祉士会の加入率からみる社会福祉業界の”福祉政策を決定する政策過程に介入する力”の脆弱さについてSocial Change Agency, all rights reserved 2014年11月16日
- ^ a b 秋山智久『社会福祉実践論[方法原理・専門職・価値観]』(改訂版)ミネルヴァ書房、2005年、256-260頁。ISBN 4-623-04435-1。
- ^ a b 上原正希「医療ソーシャルワーカーの業務における制約について」『新潟青陵大学紀要』第7巻第7号、新潟青陵大学、2007年、9頁、doi:10.32147/00001176。
- ^ 野村哲也「社会福祉の専門性とその教育体系(II)-職業の資格制化とその養成についての教育社会学的分析を通して」『社會問題研究』第37巻第2号、大阪府立大学社会福祉学部、1988年、2頁、doi:10.24729/00003565。
- ^ a b 星野信也「社会福祉学の失われた半世紀-国際標準化を求めて」『社会福祉研究』第83号、鉄道弘済会、2002年、70-75頁、NAID 40005487072。
星野信也 著「社会福祉学の失われた半世紀」、岩田正美・岩崎晋也 編『社会福祉とはなにか 理論と展開 1』日本図書センター、2011年、109-117頁。ISBN 978-4-284-30344-6。 NCID BB04604464。 - ^ 瀬田公和、仲村優一、杉本照子、村田正子、板山賢治「「社会福祉士及び介護福祉士法」の成立と今後の展望」『社会福祉研究』第83号、鉄道弘済会、1987年8月、12-41頁、NAID 40001035037。
秋山智久 編『社会福祉士及び介護福祉士法成立過程資料集 第3巻 成立後資料2・前史資料』近現代資料刊行会、2008年5月、130-159頁。ISBN 978-4-87742-907-2。 - ^ 京須希実子「福祉系国家資格制定過程の研究 : 「専門職」形成のメカニズム」『産業教育学研究』第36巻第1号、日本産業教育学会、2006年、57-64頁、doi:10.24485/jssvte.36.1_57、NAID 110009781222。
京須希実子「福祉系専門職団体の組織変容過程-ソーシャルワーカー団体に着目して」『東北大学大学院教育学研究科研究年報』第54巻第2号、東北大学大学院教育学研究科、2006年、229頁、ISSN 13465740、NAID 120000781920。 - ^ “区分A/社会福祉士・精神保健福祉士有資格者入試”. 専門職大学院入学試験要項. 日本社会事業大学. 2013年11月2日閲覧。
- ^ “社会福祉士について” (PDF). 第6回福祉人材確保対策検討会 資料1. 厚生労働省 (2014年10月3日). 2017年1月10日閲覧。
- ^ 法第7条第1号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目,昭和62年12月厚生省告示第200号
- ^ 法第7条第2号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する基礎科目,昭和62年12月厚生省告示第201号
- ^ 指定科目と基礎科目 - 財団法人社会福祉振興・試験センター
- ^ “一般社団法人 日本ソーシャルワーク教育学校連盟”. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “公益財団法人 社会福祉振興・試験センター 受験資格(資格取得ルート図)”. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2012年11月28日閲覧。
- ^ 藤田孝典『脱・下流老人 年金、生きがい、つながりを立て直す』NHK出版〈NHK出版新書685〉、2022年12月12日、奥付
社会福祉士と同じ種類の言葉
- 社会福祉士のページへのリンク