皇后 日本・中国以外の皇后

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皇后

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/18 05:28 UTC 版)

日本・中国以外の皇后

「皇后」の称号はもともと、中国の歴代王朝が掲げた政治的世界観の下での世界全体の支配者天子(皇帝)の正妃の呼称であった。従って、漢字文化圏の国家においては、最高位の君主の称号が皇帝あるいはそれと同等なものである場合、皇后も存在することになる。「」(国王・郡王など)は、皇帝の下で一地域・一民族の君主であるにとどまる存在であった。

漢字文化圏以外の国家であっても、一地域・一民族の君主であるにとどまるの上位に位置し、複数の地域・民族を支配する君主が存在する場合、このような君主を、日本語で「皇帝」と訳す慣習がある。これにともなって「皇帝」と訳される称号を持つ君主の妻の称号も「皇后」と訳される。

皇帝と皇后の訳語

ローマ帝国の君主の称号の一つである Imperator は、通常「皇帝」と訳され、また Caesar という家名も君主の称号となって、東西ローマ帝国の歴史を継承する社会(神聖ローマ帝国ドイツ帝国オーストリア帝国のカイザー、ロシア帝国ツァーリなど)の統治者・君主の称号として使われ、これも「皇帝」と訳される。サーサーン朝ペルシアパフラヴィー朝イランの「諸王の王(シャーハンシャー)」、オスマン帝国の「スルタン」あるいは「パーディシャー」、北アフリカエチオピアの「諸王の王(ネグサ・ナガスト)」、インドムガル帝国の「パーディシャー」、南アメリカインカ帝国の「サパ・インカ」なども「皇帝」と訳される。これらの君主が一夫一婦制の婚姻形態を採っていれば、妻の称号は「皇后」となるはずであるが、実際には、世間に通用している通称や研究者による慣用などが優先し、一様ではない。

西欧キリスト教社会などの一夫一婦制度を採る世界では、皇帝の妻は正式には一人しか存在せず「皇后」または「皇妃」と訳されることが一般的である。一例として東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌス1世の妻テオドラがある。彼女の地位は「皇后」または「皇妃」と訳される。

皇后と女帝

ヨーロッパ諸国の言語では、日本語の「皇后」に当たる称号は「皇帝」と訳される称号の女性形なのが一般的である(というより、ほとんどの君主称号・爵位がそうである)。この場合、称号だけでは、単に皇帝の妻であるのか、自らが帝位にある女性の皇帝であるのかは、区別できない。日本語に訳す場合は、前者は「皇后」、後者は「女帝」と訳し分ける必要がある。上記のテオドラはあくまでも「皇后」である。

ロシア帝国のエカチェリーナ2世は、もとは皇帝ピョートル3世の妻であり、その後クーデターにより自ら帝位についたものであるから、同一人物であり、ロシア語での称号は同じ単語でありながら、即位以前と以後とで「皇后」と「女帝」の使い分けが行われている。また神聖ローマ皇帝フランツ1世の妃マリア・テレジアは本来「皇后」であるが、これは女性に神聖ローマ皇帝位継承者資格が無いための措置であり、ハプスブルク家の支配下の領域においては、彼女がオーストリア大公ハンガリー王・ボヘミア王を兼ねる君主であり、フランツ1世は君主の配偶者に過ぎない。そのため日本語でも「女帝」と表されることが多い。

英語圏でも、特に上記を区別する語がある。統治権を持つ 英語: empress (女性の皇帝) を英語: empress regnant(君臨する女性の皇帝=女帝)と呼び、統治権のある男性の皇帝の配偶者を英語: empress consort(妃である女性の皇帝=皇后)と呼ぶ。一例として、英語圏では推古天皇は empress regnant である。


注釈

  1. ^ 昭憲皇太后については事情により「皇太后」と追号されている。詳細は「昭憲皇太后#追号について」を参照。

出典

  1. ^ 新村 2008, p. 936.
  2. ^ 松村ほか 2006, p. 844.
  3. ^ 鶴間和幸『ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国』講談社〈中国の歴史〉、2004年11月、275頁。ISBN 4-06-274053-2 
  4. ^ 宮内庁公式サイト 英語版
  5. ^ この段落の出典。「蚕-皇室のご養蚕と古代裂,日仏絹の交流」展の開催について 2014年(平成26年)、宮内庁 - 2016年1月6日閲覧。
    『皇后陛下のご養蚕』 - 政府インターネットテレビ」公開日:平成26年(2014年)2月14日 - 2019年5月28日閲覧。
    2019年(平成31年)4月29日放送「NHKドキュメンタリー『皇后四代~思いは時を超えて~』」(NHK BSプレミアム)
  6. ^ a b c d 久保 2009, p. 5.
  7. ^ 久保 2009, p. 6.
  8. ^ Snorql for Japan Search 持統天皇
  9. ^ Snorql for Japan Search 藤原定子
  10. ^ Snorql for Japan Search 藤原彰子
  11. ^ Snorql for Japan Search 藤原妍子
  12. ^ Snorql for Japan Search 永福門院
  13. ^ Snorql for Japan Search 後京極院


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